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日本のベンチャーをグローバル化戦略の指導を含めて支援する強力なVC

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日本の新規企業に向けた出資を行うベンチャーキャピタル(VC)のサンブリッジ社がベンチャーはグローバル化を考えてほしい、として新たな資金提供の仕組みを作った。日本のベンチャーがビジネスをグローバルに展開するための支援体制や環境を提供する事業を強化する。これから起業したいと思う企業は最初からグローバル化を狙いやすくなる。

図1 サンブリッジ会長のアレン・マイナー氏

図1 サンブリッジ会長のアレン・マイナー氏


大企業にしてもベンチャーにしてもビジネスを成功させるためにグローバル化はマストになってきた。サンブリッジ代表取締役会長のアレン・マイナー(Allen Miner)氏は、ベンチャーを立ち上げるエコシステムが大事だ、と指摘する。「シリコンバレーはベンチャーに適した世界一のエコシステムが出来ているが、日本にはこのエコシステムができていないだけ。もしこれが出来れば日本はシリコンバレーのようになる」と同氏は言う。

「日本人は、ソフトウエアが弱いとか、ソフト力がないということを言う人がいるが、自虐的になっているだけで、産業用のITソリューションはすごい。日本人はもっと胸を張るべきだ」、と日本に根を張る同氏は主張する。同氏は1987年、日本オラクルの初代代表になって以来、日本に住み続けており、流暢な日本語を話す。日本にも可能性の高いベンチャー企業は多い、と見ている。

ただし、成長するための戦略がうまくいっていないと分析する。特に売り上げが10〜20億円まで上がって来た時の成長戦略だ。出資していた、あるベンチャー企業がかつて、この10億円を超える売り上げを達成できるようになった時、彼らはすぐにIPOを目指した。しかし、IPOの前にグローバル化によってさらに成長を促すことを優先すべきとマイナー氏は主張したが、このベンチャーの経営陣はIPOから頭が離れず、グローバル化のタイミングを逸した。NTTドコモの携帯電話に載せるJavaのゲームソフトを作っていたこのベンチャーには米国通信業者大手のベライゾンとスプリントからもこのソフトを載せようという提案があった。にもかかわらず、IPOへの準備に追われこのビジネスチャンスをつぶした。ベライゾンやスプリントに採用されれば、業績は一気に伸び、米国からさらに欧州へとビジネスが広がった可能性はあった。しかし、短期的に資金調達できるIPOにしか目が行かなかったため、飛躍のチャンスを逃したのである。

IPOは基本的には株式上場してキャピタルゲインを狙う訳だから1回勝負である。上場のタイミングはむしろいつでもよかった。この苦い経験を生かすため、マイナー氏は支援事業となるグローバルベンチャーハビタット事業では、起業とグローバル化を同時にやるべきだと考えた。「日本の方がむしろシードマネーは集まりやすい。米国と大きく違うのは世界からの注目があるかないかだ。シリコンバレーのメディアにリーチしないとダメだろう」とマイナー氏は語る。

「日本のベンチャーの存在を海外メディアは知らない。TechCrunch(編集室注:世界のITニュースを掲載するブログ的メディア;参考資料1)などを見ているだけなので、本当の存在を知らない。それも彼らには、面白いテクノロジーや製品はシリコンバレーから生まれるという先入観も強い」として、マイナー氏は日本のハイテクの面白さをどう伝えるかを問題にしている。

同氏は、シリコンバレーのサニーベールにあるインキュベーションセンターである、プラグ&プレイテックセンター(Plug & Play Tech Center: PnP)の中にジャパンパビリオンを2008年にすでに設立している。日本のベンチャーを入居させ、米国のVCへのプレゼンテーションの仕方を指導する。

今年の6月20日にはグローバルな思考を持ったベンチャーに対してシードマネーを供給したり育成したりする、サンブリッジ・スタートアップスLLPを設立した。特に、クラウドビジネスやスマートフォン、ソーシャルネットワークビジネスなどのベンチャーに注目しているが、「初めての技術・製品・サービスなどの面白さがあれば分野は気にしない」という。シードマネーを提供する出資先のベンチャーを近いうちに発表する予定だとしている。

さらに8月1日〜5日の間、米国のシリコンバレーでjannovation weekを企画する。これは日本のベンチャー企業がシリコンバレーのVCやメディアに対してプレゼンを行い、存在を知ってもらおうというイベントである。あわよくばVCに出資してもえらえる。jannovationとはJapanと Innovationを合成した造語である。マイナー氏は米国人に受けるプレゼンの仕方を伝授してくれるため、プレゼンが苦手でも参加しやすい。

ベンチャー企業で大切なことは、ビジネスを通して社会に貢献するという理念である。社会的に意義のあるビジネスでなければならない。お金儲けだけで動く人は社会的に叩かれるだろう、とマイナー氏は見ている。


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1. TechCrunch

(2011/07/28)

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