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スマートフォンによるデジタル授業開始、早くも効果ありの声

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クアルコムが私立の通信制高等学校にスマートフォンを提供し、スマホによる授業がこの7月から始まった。この高校は、学校法人ではないルネサンス・アカデミー株式会社が設立した学校である。小泉政権時代に認められた学校特区の制度でできたもの。2007年から携帯電話を使った授業を始めたが、このほどスマホの導入で一切の紙を使わないようにする。

図1 スマートフォンを提供したクアルコムの山田純会長(左)とルネサンス高等学校 桃井隆良社長(右)

図1 スマートフォンを提供したクアルコムの山田純会長(左)とルネサンス高等学校 桃井隆良社長(右)


この通信制高校は、働きながら学んでいる生徒が多く、中には通常の高校になじめなかった生徒や何らかの事情で高校を卒業できなかった生徒もいる。携帯電話による授業では、携帯による問題の出題と教科書を併用していたが、今回スマホでワンストップショッピングできるように教科書をデジタル版向けに新たに開発した。

クアルコムは、昨年ヘルスケア用にM2M通信モジュールを提供し、Wireless Reachと呼ぶ企業市民活動を開始した(参考資料1)。今年は、第2回の活動としてモバイルブロードバンドを教育現場にリーチさせるための試みとしてルネサンス・アカデミーと提携、同社のSnapdragonアプリケーションプロセッサ内蔵のスマートフォンを500台提供した。クアルコムジャパン会長兼社長の山田純氏によると、米国の学校でも理科系に進む生徒が減少しており、スマートフォンをノースカロライナ州の中学3年生に数学の教材コンテンツと共に提供したところ、数学の点数がこの活動に参加した生徒の成績は30%上がり、明らかな有意差があったという。

今回、スマホを持っていない生徒には無料で提供するが、通信料は個人持ちだとしている。まず英語の演習として2単位分の科目をデジタル化した。その例を図2に示す。この例は長文読解であり、英語を読んでどれだけ理解が進んだかを調べる。答えを間違うと、やり直しを求められる。これまでの携帯電話だけだと、長文読解問題は画面サイズが小さくてできなかった。しかも、スマホによる授業ではゲーム感覚で勉強できるため、生徒たちは自主的に勉強し、これまでと比べて勉強時間が5倍も伸びた、と同校の代表を務める、ルネサンス高等学校 代表取締役社長の桃井隆良氏は語る。


図2 英語の長文読解学習の例 出典:ルネサンス・アカデミー株式会社

図2 英語の長文読解学習の例 出典:ルネサンス・アカデミー株式会社


桃井氏が教職員の声を聞いたところ、「学習の効果はあった。さらに処理業務が減ったため生徒との1対1のコミュニケーションに使える時間が増えた」と答えたとしている。生徒の中には、両親が共働きで小さな妹の面倒を見ている女子生徒がいて、スマホは片手で操作できるため勉強しながらもう一つの手で妹をあやしているという。パソコンと違いスマホは自分の部屋でもどこでも勉強できる点が便利だとしている。

携帯やスマホは楽しく繰り返し勉強でき、漢字の書き取り練習は何度もできるため、学習効果は従来の教科書よりも高いという。ただし、ネット学習だけではなく、実際のスクーリングも必要だとして、同校ではやる気を出させるための体験学習として1年に4日間、ものづくりや理科の実験など、顔を合わせた授業をやっている。

参考資料
1. クアルコム、血圧測定データを医師に届ける通信機器の実用実験を開始 (2010/07/23)

(2011/07/28)

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