アドバンテスト、3期ぶりに黒字化達成、買収・コア拡大で積極的な攻めを展開
アドバンテストは、2008年度、2009年度の赤字決算を乗り越え、2010年度は3期ぶりに黒字化を達成すると同時に、今後の成長戦略を発表した。同社は今後、半導体を搭載する機器や搭載数量などが増加の一途をたどり、半導体が成長産業であるという認識に立ち、半導体の成長分野と共に同社も成長するという戦略を同社代表取締役兼執行役員社長の松野晴夫氏が示した。
図1 アドバンテスト代表取締役の松野晴夫社長 出典:アドバンテスト
アドバンテストといえばDRAMテスターのメーカーという印象が強いほど、DRAMテスターにシフトしていた。2007年からのマイクロソフトの”VISTA不況”とそれに続くリーマンショックを代表とする世界金融恐慌の荒波にもまれ、2年連続赤字を経験した。しかし、その不況の最中にも積極的な攻めを展開、特に成長分野への投資を欠かさなかった。2008年8月にミクストシグナル系のテスターメーカー米クリーデンスシステムズ(Credense Systems)のドイツ法人のCredense Systems GmbHを買収、車載用半導体とパワーマネジメントIC(PMIC)用のテスター技術を手に入れた。その成果として2010年にPMIC用のテストモジュールを市場に投入できた、と松野社長は語る。
半導体デバイスが成長産業であり、特に携帯情報端末や自動車エレクトロニクスの分野、そしてパワーマネジメントを代表とする電力効率の向上につながるニーズ、といった分野を重点的に攻めていく。だからといって脱DRAMという訳ではない。DRAMはようやく長いトンネルを抜け、今後は伸びが期待できるようになり、特に携帯端末向けのモバイルDRAMは年平均成長率47%で伸びていくと見る(図2)。携帯用途では、単なる組込コンピュータのRAMというだけではなくビデオ応用が進んでいるためDDR2からDDR3へと高速化が進んでいく。加えて、コンピュータ用のDRAMとしても32ビットの壁を取り払い64ビットシステムへの移行が顕著になってきた現在、DRAMの大容量化も再び加速するという見方も業界では出てきている。
図2 DRAMはこれからが楽しみ 出典:アドバンテスト
DRAM以外のメモリー分野でも当然大きな伸びが期待できる。特に、松野社長は、通信用半導体とCMOSイメージセンサー、車載用半導体、PMICを成長する半導体分野と定めた(図3)。このうち、GPU(グラフィクスプロセッサ)やアプリケーションプロセッサ、通信用ベースバンド、RFなどに強い米ベリジー(Verigy)社の買収を決め、携帯情報端末や自動車エレクトロニクス分野への地盤を固めた。加えて、CMOSイメージセンサーやPMICなどにもテストモジュールを2010年に市場へ投入し、今後の足がかりとした。
図3 力を入れる成長分野のIC 出典:アドバンテスト
携帯情報端末で重要なストレージとなるNANDフラッシュ用のテスターはこれまでほとんど手つかずの状態だった。顧客の中には、DRAM用のテスターを同じメモリーテスターとして使うところもあったという。アドバンテストは、満を持して2011年7月に米国サンフランシスコで開かれるセミコンウェストにおいてフラッシュメモリー用のテスターを発表する計画だと松野社長は語った。同氏は、NANDフラッシュメモリーでも高速化の動きが出てきているため、同社にとっての追い風となると自信に充ち溢れている。DRAMテスターで築いてきた高速化の要求、すなわちDDRからDDR2、DDR3へと発展してきた技術をNANDフラッシュにも生かすことができるからだ。
アドバンテストの戦略は極めて明快だ。不得意だったロジックやRFはベリジーを買収、アナログやパワーマネジメントはクリーデンスを買収、そしてNANDフラッシュに対してはこれまで蓄積してきたDRAM技術を活用する、といった積極策をとる。もはや世界レベルのグローバルカンパニーといえるのではないだろうか。