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TIがナショセミを65億ドルで買収、アナログの製品ポートフォリオを拡大へ

米テキサス・インスツルメンツ(TI)社は、米国のアナログ半導体メーカーの老舗、ナショナルセミコンダクター社を総額65億ドルで買収することで正式契約した。TIによると、この買収は、両社の取締役会において全会一致で承認されたとニュースリリースでは述べている。


図1 ナショナルセミコンダクターのソーラーマジック

図1 ナショナルセミコンダクターのソーラーマジック


このニュースリリース(参考資料1)では、TIの社長兼会長兼CEOのリッチ・テンプルトン氏もナショセミCEOのドン・マクラウド氏も、共に両社の統合によって相互補完し、製品のポートフォリオをより広げていくと述べている。実際、TIはアナログの標準品を中核にして、高精度はバーブラウン社、低消費電力のRFはチップコン社を傘下に収め、製品のポートフォリオを広げてきた。

ナショセミは2003年前後の構造改革により、デジタル関連製品を捨てアナログ半導体チップに注力してきた。アナログ製品の中でもパワーマネジメント分野に強く、最近は自動車分野にも乗り出してきていた(参考資料2)。また、消費電力の多い半導体チップの電圧を下げるため温度センサをシリコン上に載せ制御ループに加えたり、回路の一部の電源電圧を下げたりするなどパワーマネジメント技術には定評があった。

一方、TIのパワーマネジメント関連では、DSPを使ったデジタルフィードバック制御の、いわゆるデジタル電源ICを揃えるなどのソリューションを提供してきた。またTIは自動車分野ではまだそれほど強くはない。

ともに再生可能エネルギーのソーラーシステムにも進出している。ソーラーセル自体はコストダウンだけの競争なので、半導体メーカーとしては参入していないが、ナショセミはソーラーマジックと呼ぶ、ソーラーパネル出力が最大パワーとなるように電流がとれない場合には電圧を大きくするといった製品(図1)を出荷し、TIはソーラーシステムに使うべきパワーコンディショナをデジタル制御で効率を上げるシステム(図2)を提案している。両社の技術を組み合わせれば、汎用ソーラーシステムをより精度よく制御できるソリューションをパネルメーカーに提案できる。


図2 TIの提案するデジタル制御のパワーコンディショナ

図2 TIの提案するデジタル制御のパワーコンディショナ


こういった両社の特長をそれぞれ生かし、買収によって共に大きく成長できるというビジネスモデルを描くことが可能である。2010年のアナログ製品の売り上げはTIが60億ドル、ナショセミが16億ドルであるが、両社の合併により売り上げがどのように伸びていくか注目したい。

参考資料:
1. TI to acquire National Semiconductor
2. それほど強くなかったカーエレ市場を強力に獲得する戦略を表したナショセミ (2010/10/25)

(2011/04/05)

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