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理系離れを食い止めるための方策をIBMフェローが提案−Siシーベルト会議にて

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福岡県および福岡先端システムLSI開発拠点推進会議、九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会が主催するシリコンシーベルトサミット福岡2011において、IBMフェローでありIBMシステム&テクノロジーグループのJohn Cohn博士は、その特別講演の中で、理系離れを食い止めるためのソリューションを提案した。

図1 心理学や社会学が人気  2005年まで20年間にわたる学生の専攻課程の増減 出典:シリコンシーベルトサミットでのJohn Cohn 博士の特別講演

図1 心理学や社会学が人気 2005年まで20年間にわたる学生の専攻課程の増減
出典:シリコンシーベルトサミットでのJohn Cohn 博士の特別講演


映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場する博士(通称ドク)とよく似た風貌のCohn博士はヘアバンドにカラーLEDを巻き付け演台に上がった。博士は、自身を「Mad Scientist」という肩書の名刺を作り名刺交換している。いかにして理系の子供を増やすか、理系を強化するか、というテーマを追い続ける博士は、そのためにわかりやすい理科教材、楽しくさせる教材を開発している。講演でもいくつかのデモを紹介しながら、理系(Engineering 工学部とScience理学部)のトレンドを、数字を上げて紹介した。

80年代と現在を比べると、米国では工学部の卒業生が15%減り、日本では10%減少している。理工学部全体ではドイツと米国は80年代から今までほぼフラットだが、インドと中国は特に2000年から急速に増えている。しかも日本では女性の理系も少ない。世界(140ヵ国)のエンジニアの内、22%が女性なのに対して日本では10%しかいない。

一方で、エンジニアは経済やリーダーシップといった問題には強い関心を示すが、社会や地域、環境、生活の豊かさ(Quality of Life)等には無関心である。

さらに一般的に子供の80%が理系に進むとは考えていない。Cohn博士が300人の子供たちを調査したところ、工学部はむずかしそう、数学と理科の両方を勉強しないとだめ、エンジニアへの道しかない、などといった不満が飛び出した。子供たちの85%は、社会的に意味のある仕事で、しかも重要な仕事に従事したいと考えている。専攻する学生の人気を1980年代から2005年までの20年間で調べてみると、図1のように理系の人気は落ちている。

こういった理科離れに対して最近、オバマ米大統領が今はスプートニクにやられた時代と同じと捉えているが、このことを引き合いに出し、理系を増やすためにどうすべきか、を提案した。具体的に米国の学生に関心のあるテーマを聞いたところ、環境とエネルギー問題に関心あると応えた学生が2006年には79%もいた。これが2010年になると81%に増えた。日本の学生も同様に、2010年には87%にも達した。

このデータを元にIBMがスマートプラネット(Smart Planet)の概念を最近打ち出した。環境とエネルギー問題を地球規模で解決するためにITを使ってCO2を削減する方針だ。スマートプラネットを実現するために最も重要なカギとなるのが、半導体、である。だからこそ、環境とエネルギー問題を解決するため、CO2排出量をできるだけ減らして制御するためのカギとなる半導体の重要性を訴えるべきであるとした。環境とエネルギーの問題を解決するのが半導体であることを世の中に訴えるべきではないか、というセミコンポータルの質問に対して次のように答えた。「日本が得意な自動車エレクトロニクス、エネルギー変換制御技術、エネルギー自身などと半導体との関連性を学校で教えていくことが今後、重要になる」と示唆した。

(2011/02/24)

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