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NANDフラッシュの大容量化と高速化が進む背景にデジカメの動画化がある

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米フラッシュカード大手のサンディスク社は書き込み・読み取り速度が最大45MB/秒で、SD ver3.0仕様に準拠したUHS-Iインターフェースを持つ8GB、16GB、32GBのSDカードを一般向けに発売した。UHS(Ultra High Speed)-Iインターフェースは最大104MB/秒の転送速度まで対応する規格。

図1 この1年でHD動画対応デジカメは53%から83%へ急上昇 出典:サンディスク

図1 この1年でHD動画対応デジカメは53%から83%へ急上昇 出典:サンディスク


サンディスクのSDカードは、2010年9月に発表した東芝のSD3.0準拠のSDHC UHS-Iカード(参考資料1)(8GB、16GB、32GB)に次ぐ製品だが、コンシューマ市場に向けた発売という点で、量産に入っているという意味がある。今回、128GBのコンパクトフラッシュType-Iも発売した。CFカードの最大書き込み速度は100MB/秒とSDカードのそれよりも高速。性能的にはCFカードの方が高いが、対応機器はSDカードの方がより広まっている。このためSDカードは一般向け、CFカードはプロカメラ/ビデオ向け、といった使い分けが出来つつある。

SDカードの狙うべき市場は1眼レフのデジタルカメラ。この市場では、動画、それもHD動画(1080i)の動画機能が強く求められている(図1)。サンディスクの調査では、HD動画対応カメラを持っている消費者1000名を対象に2010年9月にアンケート調査をしたところ、27%の人が動画と静止画をほぼ同じように使うと答えた。ただし、動画に費やす時間は5分以内と答えた人が74%と多い。このことから、動画は撮るが短い時間のみというカメラ好きの消費者像が浮かぶ。YouTubeなどに使うと見られる。


図2 サンディスクのカードは2GBから4GBへ移りさらに8GBへの傾向が見える

図2 サンディスクのカードは2GBから4GBへ移りさらに8GBへの傾向が見える


HD動画はさらに1920×1080というフルHDへの動きも急で、2011年のメモリーカードはフルHD化と3次元化が進むと同社は見ている。この動きを受けて、同社のSDカードは単なる大容量化だけではなく、高速化も不可欠と見て今回の高速カードの発売にこぎつけた。HDやフルHD、3次元HDとなると画素数およびフレームレートが上がるため、高速に処理する必要がある。

今回、高速にするため、クワッドダイプロセッシングと呼ぶ並列処理技術を使い速度を2倍に上げた。これは、4個のメモリーブロックを同時に並列処理するアクセス方法だとしている。会見では4段階層プロセッシングという日本語のテキストがスライドに書かれていたためチップを積層する技術かと思われた。もちろん、積層していることは言うまでもないが、この意味ではないと同社リテール製品マーケティングディレクターのSusan Park氏は述べている。4つのメモリーブロックを同時にアドレッシングすることで、クワッドコアプロセッシングとも呼んでいるが、マルチコアCPU技術とも間違えそうで、やや混乱する用語を使っている。

メモリーコントローラチップに、ダイナミックバイナリキャッシュという機能も設けた。これにより、写真のデータが入ってデータを検知すると、どのメモリー領域に書き込み・保存するのが最も速いのかを判断する。しかもデータ予測管理機能も設けており、静止画か動画かも予測する。このダイナミックキャッシュ機能は信頼性を高めるためのウエアレベリング(Wear leveling:書き換えを一つのメモリーブロックだけに偏らないようにするためメモリー領域を平準化すること)とも関連するため、どの領域に書き込みのが高速で、しかも平準化すべきセクターであるかを素早く求めることが不可欠となる。

信頼性の向上にも努めている。従来のSDカードは5年保証だったが、今回は無期限保証とした。これはウエアレベリング機能に加え、データセーフ管理機能とアドバンストECC(誤り訂正)機能も設けることで実現した。データセーフ機能は、電源電圧故障などの不測の事態が生じてもすでに格納してあるデータにも影響が出ないように保護する機能だという。一つのデータが故障しても他のデータを守るという訳だ。ECCについては、独自のアルゴリズムを使い、データのインテグリティを捕まえ、避けられないような不良ブロックを使わないように指示するオンザフライ訂正技術だとしている。

携帯電話では高性能動画への要求はまだ強くないためマイクロSDカードにはこの性能を対応させていない。ただし、スマートフォンには将来必ず要求されると見ている。今の段階ではUHS規格対応のスマートフォンはまだ登場していないという。

参考資料
1. 世界最速の転送速度を実現したSDHCメモリカードの発売について、東芝ニュースリリース 2010年9月

(2011/02/07)

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