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省エネの見える化を推進するソフトウエア&ハードウエアの米ベンチャー

「日本製品は消費電力の低さで群を抜いており、日本の消費者は省エネにとても注意を払っているから日本市場に売り込みに来た。パナソニックのテレビとサムスンのテレビの消費電力を比べたらパナの方が圧倒的に低いことに驚いた」。こう語るのは「エネルギーの見える化ソフト」を開発した米ピープルパワー(People Power)社CEOのGene Wang氏。

図1 ピープルパワー社のGene Wang CEO

図1 ピープルパワー社のGene Wang CEO


同氏は、米国ではメーカー・消費者とも消費電力の削減には気を使わない、消費電力の削減、省エネに神経を使っている日本だからこそ、我々のビジネスが生きる、という。ピープルパワー社が開発するのは、ソフトウエアとハードウエアの両方であり、これらを使って、冷蔵庫やエアコン、テレビ、その他の家電や情報機器、コンピュータなどの電力を「見える化」するソリューションである。

同社が提供するソフトウエアは、クラウドを利用するESP(Energy Services Platform)次世代エネルギー管理ソフトウエアと呼ぶ。このソフトウエアを使えば、4つの機能を実現できる。まず、どの電気製品や電子機器がどの程度エネルギーを使っているのかをリアルタイムで監視できる。次に、制御機能もあり、ウェッブを通してスマートフォンでもPCでもタブレットでもどのようなデバイスでも家庭内やビル内の電力を入れたり切ったり制御することができる。さらに、比較機能もあり、リビングルームのテレビとベッドルームのテレビの使用電力を比べたり、分析したりできる。そして4番目として省エネコンテスト機能がある。これは自分が使っている電気製品の省エネ効果がどのくらいあったか無駄を節約できるかをグラフ表示で見て、省エネの度合いを競う合うというような機能である。


図2 ピープルパワーが提供するクラウドベースのエネルギー監視ソリューション

図2 ピープルパワーが提供するクラウドベースのエネルギー監視ソリューション


このためには各電気製品が使っている電力量を測定しその情報をネットワークに上げる必要がある。その機能を果たすのが、SuRF通信モジュールである。SuRFにはIPv6で割り当てられるIPアドレスを持ち、オープンソースのエンド-エンドのソリューションを提供するハードウエアとなっている。通信の仕様は、OSIAN(Open Source IPv6 Automation Network)と呼ぶ規格に対応しており、Wi-FiやZigBeeネットワーク規格のデバイスもサポートしている。ZigBeeをサポートするのは、モノを無線インターネットでつながり管理する応用にも使えるようにするためだ。

この通信モジュールを電子機器内に設置し、その電子機器が消費する電力量をESPソフトウエアを使ってモニターし、制御するという訳である。例えば、寒い冬に外出先から家のエアコンのスイッチを入れておくことができる上に、家から出て外出先から家庭内の電気製品の消費電力を監視し、時には電気ポットのスイッチを切れ忘れた時に外出先からスマートフォンや携帯電話などに表示させて切ることもできる。


図3 OSIAN仕様のSuRF通信モジュール

図3 OSIAN仕様のSuRF通信モジュール


このハードとソフトの製品は個別の家庭に売るのではなく、パートナー企業に提供する。クラウド利用のソフトウエアに対して年間ベースでのSaaS利用の契約と、パートナー企業が独自のブランドで構築するエネルギー管理システムのセットアップ費用でまかなうというビジネスモデルを利用する。ソフトウエア、ハードウエアとも2011年初めに出荷する予定である。このパートナー企業が家庭やオフィスビルなどに独自の仕組みを使ってエネルギーを見えるようにする訳だ。

People Powerという名前を聞くと、「ジョン・レノン作曲のPower to the Peopleを思い出す。なぜこの名前を付けたのか」とWang氏に尋ねると、消費電力を減らすのは人々の力によるところが大きいからだ、と答えた。人々は顧客でもあり、パートナーでもあり、当社の社員でもある、と付け加えた。日本語の「企業は人なり」をまさに実践している。

(2010/11/17)
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