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社会インフラという包括的な産業用SoCを強化しグローバルで稼ぐルネサス

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民生市場で価格競争に走るよりは産業用分野でしっかり稼ぐ方がいい。米国のリニアテクノロジーやアナログデバイセズなど利益率の高い半導体メーカーが最近産業用分野を強化しているが、新生ルネサスエレクトロニクスがSoC事業を、いわゆる社会インフラという包括的な産業用分野を強化している。

社会インフラを手掛ける新生ルネサスSoC第一事業本部

図1 社会インフラを手掛ける新生ルネサスSoC第一事業本部


ルネサスエレクトロニクスのSoCビジネスは、社会インフラやネットワークを中心とする第一事業本部と、ネットワークにつながる個々の装置を中心の応用に据える第二事業本部がある。第一事業本部が社会インフラを通信ネットワークインフラと、スマートグリッドを含む産業インフラ、さらにマルチメディアインフラと3分野から構成されると定義し、それぞれに力を入れ、2010年度から2012年度にかけて年平均成長率CAGRが6~7%で伸ばしていくことを目標として掲げた。第一と第二のSoCを合わせて2010年度3500億円を2012年度には4000億円へと上昇させていこうという目標だ。

通信インフラ事業ではスイッチやルーターなどのネットワーク機器や、ストレージ、サーバー、通信基地局などに向けて、ネットワークメモリーとUSB向けSoC、SSDやHDDなどのストレージ向けSoC、といったデバイスが世界的に強い。例えばネットワークメモリーは、旧NEC系のLL(low latency)DRAM、旧ルネサステクノロジ(RT)系のTCAM(3値の連想メモリー)、そして両社が持っていたQDR(クワドデータレート)SRAMという3つのカテゴリを持っているが、製品のダブりがなく、補完関係にあったため、シナジー効果が生かせると、同社執行役員兼SoC第一事業本部長の山田和美氏は述べる。

今回の合弁でSoCビジネスに関してはダブりが少なく、例えば光ディスクドライブ用のチップを両社とも手掛けていたが、ユーザーが違っていたため、製品のポートフォリオはむしろ拡がったと説明する。USBビジネスでも、旧NEC側はホストコントローラが強かったが、旧RT側はプリンタとかデバイス側のUSBチップに強かったため、ここでも補完関係になっているとする。

SoC第一事業本部はFA(ファクトリオートメーション)をはじめとする産業向けでもNCマシンなど産業用装置同士をつなぐEthernet PHYチップで現在25%の市場シェアを持つ。2012年度には30%に上げたいという。リアルタイム性の強い産業用ネットワークならではの強みを生かしたチップを伸ばしていく。この分野の将来にはスマートグリッド市場に向けた通信用DSPのプラットフォームを展開していく。例えばスマートメーターでは、まずは電力線通信の需要が高いことから、無線よりも有線通信から立ち上げていく。


スマートメーターは海外の電力線通信から伸ばしていく

図2 スマートメーターは海外の電力線通信から伸ばしていく


電力線通信は日本、米国、中国、欧州、さらに米国内でも州によって規格が違うため、かえってビジネスチャンスがあると見る。規格が統一されてしまえば、1社に独占されてしまうが、規格に合った地域に向ければ、ビジネスをつかめるからだと山田事業本部長は考えている。

マルチメディアインフラ系では、企業向けプリンタやパチンコなど産業用ゲームなどのイメージング(画像処理)系の半導体を伸ばしていく。

通信インフラや産業インフラを中心にインターネットを利用するクラウドコンピューティングを狙うSoCソリューションも想定しており、クラウドを利用した動画配信システムに使うためのSoCも市場があるとする。ただし、クラウドといったアプリケーションがはっきりするとインフラ系だけではなく、インフラネットワークにぶら下がった各装置向けのSoCやマイコン、アナログ、パワー系もチップソリューションとして顧客に提供すればビジネスとしては効果的だ。

しかし、日本の企業はただでさえ、タコつぼ的な縦割り社会を好むため、横串のソリューションはなじみが薄い。これに対して、山田氏は「社内取引ルールを確立したため、SoC第二事業本部の製品を第一事業本部で扱う場合もあるし、その逆の場合もすでにある」と、事業本部間の交流をうまく使うことでビジネスを伸ばしていけると見ている。SoC第一事業本部は今でも海外売上比率が59%と全社の中でも高く、2012年度までに66%へと上げていきたいという。

(2010/10/01)

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