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LED照明技術も付加価値を高めるソリューションビジネスの時代に

LED照明ビジネスにもソリューションや新しいビジネスモデルなどのサービス事業が出てきた。LEDは技術的に新しさを売り物にすることが難しくなってきた。GaNのLEDチップメーカーは日亜化学や豊田合成など限られているものの、アセンブリメーカーは台湾や韓国、中国など極めて増えたためだ。これが第3回次世代照明展でのトレンドである。

八州電業がLEDランプを製造、プロハウスがシステムを作った遠隔操作のLED照明器具

八州電業がLEDランプを製造、プロハウスがシステムを作った遠隔操作のLED照明器具


「LEDはもはや台湾、中国で作れるようになってくると、後は価格競争しかなくなる。となると、新しい価値を創造することで差別化を図らなければならない」とネットワーク型LED照明制御システムを開発しているプロハウス代表取締役の徳永隆也氏はいう。実際、第3回次世代照明展では台湾・韓国の出展がきわめて多かった。東京の目黒に本社を置くプロハウスはLEDランプを製造している八洲電業と共同で、ワイヤレスによるLED照明の制御システムを開発している。

このシステムは、蛍光灯と同じ大きさの細長いLEDランプに無線機(今回はZigBee送信機)を取り付け、LEDランプとデータをやり取りするパソコンや端末を取り付けておき、そこからインターネットを通じて外部の端末からも明かりを調光できるというもの。工場内あるいは倉庫内、病院、職場、店舗、街灯などさまざまな施設で照明の明るさを遠隔地から、パソコンやケータイ電話、スマートフォンなどの端末を使って自由に変えることができる。

街灯ランプへの応用では、調光だけではなく、ランプに不具合がある場合でも検知できる。きめ細かい調光によって消費電力を大幅に下げることもできる。LEDは半導体なので蛍光灯とは違い、瞬時に点けたり消したりできるため、消費電力を下げるための細かいタイミング調整は簡単だ。ある行政地域の役所で行った実証実験(下の図)では、2010年3月の電力量は蛍光灯からLEDランプに替える前の前半と、替えた後の後半とでは明らかな差が見られた。LED照明に替えた最初の1週間は職場の人たちから暗い、という声があったため電流を増やし明るさを元に戻した。同じ明るさを戻した期間(23日~26日)でさえ、電力量は平均1/6程度に削減された。


3月後半にLED照明に替え、調光操作もすることで消費電力を大幅に削減

3月後半にLED照明に替え、調光操作もすることで消費電力を大幅に削減


LED調光が消費電力を下げるためのカギとなったが、遠隔操縦できる、赤外線センサーも追加できる、などの特徴もある。赤外線センサーを付けると、人を感知して照明を点けるといった応用も簡単にできる。すなわち、快適な環境を確保した上で消費電力を下げることができる。作業中や昼休みの照明を必要以上に暗くする必要は全くない。照明の消し忘れに素早く対応したり、明るさを遠隔地から自在に調整したりすることで消費電力を下げられるという訳だ。

プロハウスはこのビジネスモデルをまだ固定してはいない。ユーザーの要求によって、システム全体を売ることも、あるいはレンタルにすることも可能なビジネスモデルを考えている。先ほどの実証実験では、例えば電力代を比較してそれまでの電力代との差の一部を毎月ユーザーが支払うというビジネスモデルなら、ユーザーは初期投資せずに電力代を減らすことができ、お互いにウィン-ウィンの関係を構築できる。

現在のビルディングでも人が廊下や部屋に入った時に蛍光灯が点くというシステムはあるが、人を感知できる範囲が狭かったり、部屋に入ってもしばらく灯らなかったりする。LED照明なら人を検知すると即座に点灯するため、LED照明でなければできなかった、あるいは広がらなかった新しい応用ともいえる。

例えば、大阪に本社を置く東神電気は、従来の蛍光灯をそっくり置き換えられるだけではなく、グローランプのプラグの部分に赤外線センサーを挿入して人感センサー一体型のLED照明器具を出展した。

台湾メーカーもLEDの単なるアセンブリにとどまらず、実用的な提案をしている。例えば、国格金属科技は、街灯ランプの置き換えを狙い、直下型のLED照明器具を開発、水槽に入れても点灯を保つほどの耐湿性を示した。さらに自然界の雷や静電気にも強いことを証明するため、50kVの放電のアース側にLED照明器具を接続し、点灯させたまま連続的にESD(静電破壊)試験を行って見せた。このESD実験では、放電の火花が見えるほど連続的にバチバチと言わせて、LED照明器を一方の電極として使うという実験である。

LEDが光る裏側面には放熱フィンを並べ、発熱を抑えている。2700ルーメンで30W、3700ルーメンで45W、4800ルーメンで60Wという消費電力の製品シリーズを開発した。街灯の電柱にそのまま差し込めるタイプの照明モジュールであり、信頼性の高さを誇る。LEDチップそのものは日亜化学のハイパワーLEDを搭載している。

(2010/04/19)
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