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3種の電池が低炭素社会へのキーテクノロジー、石田長官語る

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「日本のエネルギー自給率は4.1%(2007年)(IEA)と主要先進国の中でもっとも低く、脆弱なエネルギー供給構造を補う上で再生可能エネルギーは重要である」と、石田徹資源エネルギー庁長官は今月はじめに開催された、FE EXPO, PV EXPO and Battery Japan展示会合同の特別講演で警鐘を鳴らし、再生可能エネルギーや蓄電池のさらなる技術開発への期待を述べた。

石田徹資源エネルギー庁長官

石田徹資源エネルギー庁長官


World Energy Outlook 2009によると、2030年の世界全体のエネルギー需要は、2007年に比較して1.4倍に伸び、特に中国、インドの需要が急増、この2カ国の需要が全世界の需要の1/4を占めると予測される。

洞爺湖サミットでは2050年に温暖化ガス排出量を半減しようという目標が合意されたが、半減する量を100%とするとクリーンエネルギーに45%、省エネに36%を負う見通しになる。「ポイントは技術。世界を挙げて技術開発に取り組むべきであるが、その中で3種の電池[蓄電池、太陽電池、燃料電池]がキーテクノロジーとなる」と石田長官。

日本では1973年の石油ショック以来2007年までの間に、GDPが2.4倍に成長したが、産業部門のエネルギー消費は73年以来、絶対量で増加していない。産業界はエネルギーの使用効率を上げてきたといえよう。一方、民生部門は2.5倍、運輸部門も2倍に増えている。今後、これら2部門については、エネルギーの削減を促す社会システムの構築、新しいエネルギーの導入などが大きな課題になる。

太陽電池、20年までに24円/kWへ
日本は2003年頃までPV導入量では世界でトップを走っていた。しかし2004年を境にドイツ、2007年にはスペインがフィードインタリフ制度の導入によって急増、2008年には3位に落ちている。

しかし、日本も2009年11月にPVの買取制度を復活させた。買取価格は従来の電気料金の約2倍。買取期間は10年。補助金との相乗効果により、導入件数は前年比2倍以上に拡大して推移している。

政府はさらに再生可能エネルギーの全量買取制度の検討を昨年11月よりスタートさせ、3月には制度の方向を示す予定。

日本は2005年にはPVの生産量で世界シェア50%を占めていたが、2008年にはその割合は18%にまで低下した。この間、日本の生産量は1.5倍に増えたが、全世界の生産量は4.4倍に増加した。

経済産業省所轄のNEDOでは火力発電のコスト並みの7円/kWを2030年に達成するというPV開発ロードマップを策定している。当初2004年に第1版を発表、2009年6月には更にその計画を5年前倒ししたロードマップをPV2030+として発表している。

「現在48円/kWと、火力発電の7円と比較して大変高い。まず2020年までに、国も支援して半分に下げることを目標にしている」と石田長官。

スマートグリッドに蓄電池は不可欠

リチウムイオン電池の市場は、2000年には日本企業の独占状態であった。2005年には60%近く、2008年には50%強とシェアを落としているが、まだ強い位置を保っている。部材については電極、電解液、セパレータと75%以上のシェアを握っている。しかし、長官は激烈な技術開発競争が始まっている、と日本企業の一層の奮起を促した。

2009年にはリチウムイオン電池を搭載した車が日本市場に登場、エコ対策で政府も補助金を支援している。

将来的に、再生可能エネルギーを電力供給サイドが大量に受け入れるには、送配電の各所に蓄電池の設置が必須であり、これを最適にコントロールして、エネルギー安定供給を低コストで確保することが重要であり、蓄電池の役割が大きなものになる。

燃料電池の普及は2020年前か

日本では09年5月に家庭用燃料電池の導入が世界に先駆けて始まった。現在340-350万円と100万円以上の導入補助金があっても高いが、価格が100万円台になれば、これは2020年以前と予測されるが、本格普及期に入るとみる。この分野では日本が先行している。

「足元はEV(電気自動車)の投入が想定より早かったが、FC(燃料電池)車をキーテクノロジーとして捕らえる位置づけは大きく変わっていない。」と石田長官。燃料電池車は2009年11月にトヨタ、ホンダ、日産の車両を使用して日本の半分を縦断する1100kmの長距離走行実験を途中2ヵ所で水素を充填して無事完了した。

日本型スマートグリッドとは、家庭やビル内の消費機器と発電システムをうまく組み合わせて最適制御し、それを地域につなげ、地域全体のエネルギー需給の最適化、それを全国に広げるのが日本型スマートグリッドと考える。

これには、電力、通信家電、蓄電池などいろいろな要素があり、関連企業も巻き込んで、次世代エネルギー・社会システムの実証プロジェクトを進める必要がある。民間レベルでも協議会を立上げ、省庁も連絡協議会を作って取り組む。実証プロジェクトに予算を確保して取り組もうとしている。

省エネ、新エネ関連機器は国際競争力の上で日本が強みを持つ分野。「日本とニューメキシコ、沖縄とハワイなどの連携実験も進めており最終的に世界のマーケットにつなげてゆけるようにしたい。全体として統合システムに作りあげてゆくのが官民の課題か」、と石田長官は語った。

(2010/03/16)

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