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スマートグリッドは創・省・蓄のエネが基本要素、ネットワーク構築が重要

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スマートグリッドの目指すところは電力の平準化であり、それによる大きなCO2削減効果も狙えるところにある。電力の平準化は整流回路のπ型フィルタ部分に相当すると考えやすい。2つのコンデンサと1個のコイルからなる平滑回路では、波のような電力の谷の部分をコンデンサからの電荷(電流)で埋め、平らでまっすぐな直流に変換するという発想だ。シリコンシーベルトサミット福岡2010では、この基本に立った議論が交わされた。

パナソニックが提案するエコプラットフォーム戦略

パナソニックが提案するエコプラットフォーム戦略


この整流平滑回路は、コイルによって発生した起電力をコンデンサに貯め、使用する電力が足りなくなるとコンデンサからの電荷を使って谷の部分を埋める、という役割を果たす。コンデンサが電池に相当し、コイルは太陽光や風力で発電した電力に相当する。この平滑回路で、創エネと畜エネが行われ電力を平滑にしている。

パナソニックは、私たちの生活を快適でしかも環境にやさしいもう一つの軸として省エネの3つを企業のミッションとしていることを講演した。省エネは低消費電力の家電製品や半導体製品を生み出すというこれまでの方針そのもの。パナソニックが社内のさまざまな部門からのLSIをUniphierというプラットフォーム上に展開したように、低消費電力のための家電設計にエコプラットフォームというコンセプトを発表している。これは家電の設計にもデバイスレイヤからミドルウェア、アプリケーションそれぞれの消費電力を下げることで全体を下げようとするもの。もちろん、システムLSIにおいてもUniphierをベースに、アーキテクチャも回路設計もプロセスも全て低消費電力に設計することを基本としている。

高耐圧・高速のパワーデバイスとしては、GaNトランジスタの開発を進めており、ノーマリオフ型のGaNトランジスタを6個1チップに集積して3相モーター駆動可能なパワーデバイスを開発中だ。太陽電池の創エネやリチウムイオン電池の畜エネに関しては三洋電機とのシナジー効果を狙い進めていくとしている。

基調講演ではこのほか、IBMのクリストファー・クーパー氏が電力ネットワークの安定化にコンピュータ、ITの力を借りることがいかに重要か、そしてITを発電所から配電系ネットワーク、さらには家庭や工場など末端までコンピュータで制御することで電力が安定になることを説いた。

また、インドの太陽光企業であるモーザーベア社のグループCTOであるゴバラン・レジスヴァラン氏は、シリコン結晶系の80MWラインとアモーファスシリコン系の40MWラインを紹介した。同氏は、元々米国DoE傘下のブルックス国立研究所にいてアモーファス太陽電池の研究をしていた。その後コダックに移り、コダックと三洋電機が有機EL技術で提携したことをきっかけに三洋の元社長だった桑野幸徳氏とも知り合いになり、太陽電池以外でも最近、有機EL照明にも乗り出し始めている。

電力中央研究所の芹澤善積氏は、次世代の電力網は温暖化対策だけではなく送電網の寿命劣化や電気エネルギーへの強いシフト、ICTの活用、という要求に答える形になってきているとし、従来のような電力需要に追い付くという考え方から脱却しているとした。今後のスマートグリッドは、発電系、配電系、家庭・工場系などの各電力ネットワーク・アーキテクチャ別に進める必要があるとする。家庭・工場系などで必要なものは、太陽電池だけではなく蓄電池とコントローラも含まれる。加えてICTネットワークではコンピュータや通信だけではなく設備をチェックするための保全用センサーネットワークも重要であると述べた。送電網や需給地域のデザインはできるだけ新しいデバイスでモジュール方式にすべきと提案した。これは電力インフラを作り上げるのに10年程度かかり、最初に設置した設備は古くなってしまうため、モジュール交換で済ませるためである。

東芝の横田岳志氏は、スマートグリッドはネットワークを作るフィロソフィーがこれまでの一方通行ラインとは全く異なり、太陽光発電も電気自動車も蓄電池施設もすべてプラグインでいつでもどこでも接続できる双方向ネットワークだと定義した。このネットワークにつながる全ての負荷の変動、供給サイドの変動、などを制御する。そのようなネットワークに接続される太陽光発電、エネルギーを溜める蓄電池、発電所からの電力などがばらついた時に全体の電力がどの程度ばらつくのか、を定量的に実験で得ている。スマートグリッドはスマートメータだけではないことを強調した。

パワーコントローラは、地上に置くような従来のような重い装置ではなく、電柱に上げられるような軽量化を図りたいと電力中研の芹澤氏は述べたが、オフ時に少数キャリヤの蓄積時間を伴うIGBTではなく、SiCのMOSFETなら高速スイッチングが可能になり、使うトランスを小型軽量にすることができる。

新日本製鉄の藤本辰雄氏は、パワー半導体にこれから使われるSiC材料の作り方について説明した。高温で液体にならない性質や、ダイヤモンドの次に堅いなど加工しにくいSiCを欠陥少なく、大口径にいかにして持っていくかについて話された。4インチ(直径100mm)のウェーハは完成しており、マイクロパイプと呼ばれる結晶欠陥はもはやほとんどは入らないレベルにまで到達したとしている。

(2010/02/26)

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