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これからのクルマは全国地図を書くための走るペンになる

クルマが全国地図を書くためのペンになる。クルマの「走る」、「曲がる」、「止まる」という三つの基本機能に、もう一つ「つながる」という機能が基本機能として追加されるとセンターが全てのクルマを管理できる。これからのクルマが電気自動車にせよ、プラグインハイブリッドにせよ、社会の交通インフラと常時接続されるようになる、と第2回国際カーエレクトロニクス技術展の基調講演において日産自動車、トヨタ自動車が共に述べた。

電気自動車をアグレッシブに推進する日産、対して90年代後半に電気と内燃機関のハイブリッドカー「プリウス」を最初に市場へ投入したトヨタはプラグインハイブリッドカーを強力に進める。どちらもこれからのクルマは、社会交通インフラとつながることが不可欠になるとみている。センターは全国の道路を走るクルマをトレースでき、道路地図が自動的に描けるという訳だ。


日産の電気自動車「リーフ」(左)と、トヨタのプラグインハイブリッド試作車(右)
日産の電気自動車「リーフ」(左)と、トヨタのプラグインハイブリッド試作車(右)


基調講演において、日産の常務執行役員の篠原稔氏は、これからのクルマは無線通信モジュールを使ってクルマと、交通管理センターとを24時間つなげることが重要になると述べた。乗用車とつなげれば、道路の交通量や流れがわかるが、現在のような10分以上前の情報を表示するのではなく、リアルタイムで交通量を表示したり、渋滞個所をビデオでリアルタイムに流したりすることもできるようになる。

また、全てのクルマの走行状況をリアルタイムで把握しておけば、「前のクルマが100メートル先でスリップしました」という路面状況についてもアナウンスされ、注意を促すことができる。クルマは文字通り市街を走るセンサーとなり、道路地図を描くことができる。さらに、クルマに搭載されるカメラの数は増加していく。いまでも高級車種にはバックモニターや死角解消のためのモニターなど4台のカメラが搭載されているという。

トヨタの常務役員である宮田博司氏は、2002年からG-Bookという情報提供やメールなどをやり取りするサービスを展開してきたが、G-Bookと契約しているクルマを時間積分することでやはり地図が書けるとしている。加えて、クルマとセンターを結ぶことで緊急通報サービスやリモートセキュリティといったサービスを提供できるとする。

宮田氏は、つながることでCO2削減効果があることも指摘する。ETCの利用率が60%だと年間13万トンのCO2を削減できたという。ETCはこれからも、使い方次第で渋滞を解消するために、例えば毎日の時間帯や曜日によって料金を即座に変えることができる。現実にシンガポールでは10年くらい前から朝は混雑を避けるため都心に入るETCの料金を高く設定し、日中は安くしている。

さらに今後のスマートグリッドや環境を配慮した社会に向け、CO2排出量を削減するための仕組みが導入されることになると篠原氏は指摘する。現在、世帯当たりのCO2排出の割合は、電力が32.2%、クルマが28.7%と大きく、その他給湯13.8%、キッチン4.2%などとなっている。電気自動車そのものはCO2を出さないが、充電するための電力エネルギーはCO2を排出する火力発電所からの電力に頼っている以上、CO2はゼロにはならない。充電するためのエネルギーを太陽電池や風力発電など再生可能なエネルギーで賄ってはじめてゼロになる。しかも電気自動車が夜間の電力を一斉に充電に回すと電力の不平衡が生じる。これを例えばソーラーで賄えば電力の平準化にもなり、スマートグリッドと連携することができる。

トヨタの宮田氏もCO2削減に関しては、ハイブリッドカーにシフトすることで寄与できるとする。2009年8月までにハイブリッドカーを200万台投入したが、同じクラスの新車と比べるとCO2は1100万トン削減できるという。実際、レクサスには130個のモーターが使われており、例えばパワーステアリングを従来の油圧からモーター(EPS:電動パワステ)へ切り替えることで省エネになるという。

電気自動車になればもちろん、半導体の使用量が極めて高くなる。現在日産の高級車にはエレクトロニクスが30%搭載されているが、電気自動車になると70%に増えるという。大衆車では現在10〜15%であることを考えると、機械が半導体に変わるビジネスは大きく成長する。クルマはこれまでと違って、単体で走るというよりも、「道路・充電ネットワーク、電力ネットワーク、通信ネットワークという3つのネットワーク上で走ることになる」と日産の篠原氏は結んだ。

(2010/01/26)
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