三洋のエネルギーソリューション事業はリチウムイオン電池システムがカギに
パナソニックのTOBが成立して子会社化が本決まりとなった三洋電機がエネルギー関連事業で合併後を見据えて、三洋としての立ち位置を明確にした。三洋が唱えるスマートエナジーシステム(SES)は創エネ、省エネ、蓄エネとこれを統括する活エネからなるが、この中心的な役割を担うのが11月に発表した電池システムである。
「エコハウスのアイディアは数年前から提唱されているが、実現したとはいいがたい。なぜか。良い蓄電池がなかった。我々はできる。リチウム電池を安全に制御する技術をベースにそれを実現できる」とエナジーソリューション事業統括部長の花房寛氏は語った。
三洋が来春市場投入を予定するDCB-101リチウムイオン電池システムはパソコンで広く使われている18650と呼ばれる直径18mm、長さ65mmの円筒形のリチウムイオン電池を312本、13直列、24並列でシステムに組んだもので、容量33.6Ah、平均出力電圧48V。業務用のラックにそのまま設置できる438mm巾で、1ユニット19kgである。自己診断機能を備え、状態をレポートする機能を持つ。過充電防止をはじめとする充電制御用などの半導体は外部から購入しているデバイスが多い。
三洋はエナジーソリューション事業を家庭やガソリンスタンドなどを対象とした小規模SES、店舗などを対象とした中規模SES、工場やビル全体を対象とした大規模SESと分類している。小規模のソーラー駐輪場や中規模SESとしてコンビニでの実証実験などを行っている。
学校の体育館に設置した20kWの太陽光発電システムと上記のリチウムイオン電池システム14台(22kWh)を組み合わせて、発電量の1/3を蓄電すれば、緊急避難所として使用されたときにテレビ、PC、携帯電話50台の充電、夜間照明、監視カメラ、トイレ、扇風機などの空調も含めて8時間駆動が可能と試算している。
2010年7月に三洋発祥の地、加西に完成予定のHEV(ハイブリッド電気自動車)用2次電池工場は大規模SESの実証実験場となる。50億円を投資して年間2,480トンのCO2削減可能とする設備を導入する。1MWのソーラーパネル、1.5MWhの蓄電を可能とする1000台のリチウムイオン電池システム、直流配電、LED照明の導入などで、既存技術を用いた同等工場と比較して25-28%のCO2削減が可能となるという。「さらに、日本の持っている自然と共生する知恵を集めて、これを30%にも高めたい。システムのみでなく、知恵を加えてこれを海外にも出したい」と花房氏は言う。
パナソニックも18650をシステムにした電池を今年のCEATECで発表しており、2年後を目処に商品化を目指している。「三洋のシステムはロングライフに重点。パナソニックのものはハイパワー。いろいろ出てくればより多くの顧客に提案できる」と花房氏は期待する。TOB終了まではパナソニックと一切のコンタクトができなかったが、これからできるだけ早く一緒に、CO2削減につながる事業で協力したいという。
蓄電池を組み込んだシステムのもう一つのメリットは、エネルギーの自給自足を可能とし、発電量が一定しない太陽光発電の系統配電網へ与える不安定性の解決にもつながることだ、と花房氏は語る。大口需要家から一般家庭までが「ローカル・グリッド」になれば送配電網への負荷を最小限にすることができる。
三洋は11月1日からエナジーソリューション事業統括部を70名規模で立上げ、2015年には日米欧に事業を展開し、ソーラーパネルや関連機器を含まない、エネルギーコントローラーやSESサービス事業のみで1000億円の売上を目指す計画だ。