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2009年の世界半導体市場、ITバブルより落ち込み少なく2267億ドル、12%減に

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2009年の半導体メーカーランキングがアイサプライから発表された。12月末までの実績ではなく暫定速報値としての発表であるが、数字のズレはそれほど大きくはないとみられる。第1位は例年通りインテル、第2位はサムスンだが、東芝は第3位をキープした。全体的な売り上げの数字は当初予想されたよりも落ち込みは小さく、12.4%減の2267億3500万ドルにとどまっている。

2009年半導体メーカーランキング


2009年の半導体市場全体の落ち込みはそれほどではなく、12.4%減にとどまったため、2000年のITバブルの時よりも傷はずっと浅かったことがはっきりした。ITバブルの時は、2000年の2043億9400万ドルが、2001年には1389億6300万ドル、32.0%減というとてつもない落ち込みを経験した。数字だけを見ると、2009年に凹んだ2267億3500万ドルという数字でさえ、2000年バブルの時よりも大きいのである。

セミコンポータルが年2回に発行している「エグゼクティブサマリーレポート」で半年後の半導体市場を予想してきた。その中で、必要以上に悪く未来を予想することは次の回復期に大きく出遅れるという警告を発してきた。残念ながら日本の半導体産業は不必要に未来を暗く見てきたため、その懸念が的中した。これは日本経済全体についてもいえることだが、日本の評論家や経済エコノミストは必要以上に暗く述べることで、自分がさも未来が見えるようなフリをしているが、現実離れした暗い世紀末のような予測ほど愚かなものはない。実態はそれほど暗くはない。

日本企業の中の優等生は東芝だが、それ以外の企業は軒並み大きなマイナスになる見込みだ。東芝はわずか、4%減の106億4000万ドルにとどまるが、ルネサステクノロジは19.3%減、ソニーは32.8%減、NECエレクトロニクスは24.4%減、パナソニックは25.6%減、シャープは20.0%減と、いずれも平均的な落ち込み12.4%減よりも深く落ち込む見通しだ。実態はもっとひどい。というのはアイサプライのランキング表のニュースリリースでは示されていないが、10%程度の急速な円高によって、ドルベースで表わせば10%くらいは日本企業の業績が上積みされているからだ。

業績の良否は平均的な減少率よりも上か下かによって表現できる。その意味で、トップ10内で最も業績の伸びが良かったのはサムスンの1.3%増である。次がクアルコムで0.0%といったところ。トップ20に広げると台湾MediaTekの21.7%増が突出している。中国市場が急成長していることに合わせた携帯電話のベースバンドチップが大きく貢献したと、アイサプライは見ている。

業績を落とした企業の中には、既存の部門の売り上げが落ちたのではなく、ある部門を売却したり、切り捨てたりしたことで売り上げが落ちているところもある。例えばドイツのインフィニオン・テクノロジーズは、有線通信部門を米投資会社に売却、米マイクロンテクノロジはイメージセンサ部門をスピンアウト、フリースケールは携帯電話向け半導体から撤退した。ただし、不採算部門を切り離したことは次の成長が期待されるということであるから、こういった企業は2010年の業績が期待される。

半導体の応用分野別では、メモリーの落ち込みが少なかった。すなわちメモリーメーカーの業績が相対的に良かった。サムスン、東芝だけではなく、エルピーダメモリは2.8%減の見込みで前年の19位から16位に躍進した。マイクロンも9.9%減で前年の16位から14位に上昇、ハイニックスは1.4%減で9位から7位に躍進した。いずれも平均的な落ち込み12.4%よりはましという見通し結果だ。

メモリー以外では、インテルの5.0%減、AMDの7.6%減が健闘している。AMDは特にファブレスになる前からATIを買収してグラフィックスチップを手に入れ、マイクロプロセッサとグラフィックスプロセッサの両輪がこれからのマルチメディアを推進するために欠かせないということで未来の成長に向けた絵が描けている。日本メーカーは成長の絵を描けるか。

(2009/11/27)

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