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英ウォルフソンが横浜にデザインセンターを設置、日本の高機能製品に注目

英国スコットランドのエジンバラに本社を置く、ウォルフソン・マイクロエレクトロニクスは、日本デザインセンターを横浜に設立した。オーディオ用半導体チップに注力するウォルフソンは、日本で通用する半導体チップは世界でも通用するという考えを持つ。このため日本市場を強化する方針だ。中国にはデザインセンターは置かない。

wolfson 日本での成長


ウォルフソンは1984年、エジンバラ大学からスピンオフして設立された、いわば大学発ベンチャー企業で、2008年の売り上げは19億8200万ドルと前年よりも14%減という業績だったが、利益は1700万ドルとわずかながら確保している。同社は1995年により設計に注力することを決めファブレスに転向した。これが功を奏し、2007年までは順調に伸びてきた。2008年は不況の影響を受け、売り上げ減であったが、さらに伸ばすために日本市場に力を入れることを決めた。

同社は携帯電話やMP3プレーヤーなどに向け消費電力の低いオーディオコーデックなどの製品を手掛ける半導体メーカー。ミクストシグナル製品を主体とするが、同社は日本市場で成長してきたという。ただし、日本市場での売り上げは全社売り上げの20~25%だとしている。「新しいテクノロジーは日本で生まれるから、日本に本格的な設計センターを設けることにした。日本は新しい民生デバイスを試すのに最も適した場所だ。日本で生まれた製品は海外へ売っていく」、と昨年9月に同社CEOに就任したマイク・ヒッキー氏は日本市場に期待する。だからこそ、中国にはデザインセンターは作らない、と言い切る。


ウォルフソンCEOのマイク・ヒッキー氏

ウォルフソンCEOのマイク・ヒッキー氏


なぜ、ここまで日本に力を入れるのか。同社が力を入れるオーディオコーデックやDAC、DSPなどは携帯電話やデジタルカメラに搭載する。この分野は日本がやはり世界のトップを行くからである。日本のように高機能な携帯電話を作るメーカーは同社にとって格好の市場となる。だからこそ、ヒッキー氏は「イノベーションの国にイノベーションセンターを作る」とまで言う。

ミクストシグナルチップとはいえ、アナログよりもデジタルリッチなICだからこそ、アナログに弱い日本でも通用する。アナログレイアウト技術者やアナログフロントエンド(AFE)技術者はエジンバラやニューベリーに多数いて、実際のチップ開発には彼らと共同で設計することになる。

2009年7月ごろ横浜で10名のエンジニアを採用、エジンバラで研修を受けさせてきた。日本人エンジニアはそれ以来4カ月間IC設計に従事してきた。かなり優秀な人材が集まった、とヒッキー氏は言う。その自信を基に11月はじめにデザインセンターを開設したというわけである。

(2009/11/11)
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