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家庭内の直流電源、新エネと3Dディスプレイが注目を浴びた今年のCEATEC

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CEATEC 2009が開幕した。今年は出展者数590社・団体、そのうち海外からは22カ国、263社・団体。2123小間。昨年は出展社が804社・団体、3121小間であったので、昨年の2/3近い規模に縮小している。今年はNECやパイオニアも出展しておらず、また一旦出展を決めても、直前で取り消しをした企業もあり、いまだ多くの日本企業は構造改革途上でコスト削減の圧力にあえいでいる。

このような逆風の中で、今年のCEATECは「Challenge! 豊かな暮らしと低炭素社会への挑戦」を主催者メッセージとして打ち出した。鳩山首相の25%CO2削減公約を背景に今年のCEATECは省エネ、創エネ、CO2削減といった環境関連の展示とディスプレイに新たな機能を求めた3Dディスプレイが大きな目玉となった。

これまでのCEATECであれば、Blu-rayだ、大型ディスプレイだ、と製品面から語られることが多かった。今年は、ここ数年大型化、高画質化を追求してきたディスプレイメーカーが一斉に3Dディスプレイを展示、ディスプレイが新たなフェーズに入ることをアピールした。ソニー、パナソニックが2010年に商品化をうたうなか、ディスプレイに新たな機能を付け加えることで差別化を図るのはディスプレイメーカーとしては必須の戦略となった。

一方、すでにその兆しは最近のCEATECにも見られたが、今年のCEATECでは新しい「家電」メーカーの方向性を明確に打ち出した展示が目立った。キーノートで公演したパナソニックの大坪文雄社長が語るように、それは「家・ビルまるごと」ソリューションを提案するような方向だ。またシャープのソーラーファミリンクも、これまで家電の範囲に入らなかった車も含めて、人の生活に必要なものをトータルでエネルギーを作り、それを効率よく提供するという方向性を示した。


キーノート「新しい時代の「くらし価値創造」を目指して」を講演するパナソニック代表取締役社長大坪文雄氏

キーノート「新しい時代の「くらし価値創造」を目指して」を講演するパナソニック代表取締役社長大坪文雄氏


この方向には、創エネの技術を持つメーカーが優位な位置を占める。パナソニックは今年は燃料電池の展示であったが、三洋と統合するとこれに太陽電池が加わり、さらに、蓄エネでは自社の2次電池に世界トップの三洋の2次電池が加わり、まさに家・ビル丸ごとソリューション提供の土台が整う。

シャープもソーラーパネルの研究開発50年、世界累積設置シェア20%とソーラーパネルによる創エネの強みを主張、2015年には創エネとの相殺で一般家庭でのCO2排出ゼロを提案する。

この2社ともに、創エネと直結する家庭内電源の直流化を提案している。現在の遠隔地からの送電では交流とせざる得ないが、今後、各家庭で創エネをするようになると、直流で発電されたものを電池に蓄積、それをそのままDCで配線したほうが、効率的という主張だ。DCを一旦ACに変えて、またさらにDCに変えるという2重の変換ロスを無くすことができるという。

シャープは2015年までに一般家庭内の配線をすべてDC化を想定するプレゼンを行ったが、パナソニックは現在、ACアダプタを使用するような、パソコンや、小電流の機器からDC化が始まり、大電流を必要とするエアコンなどは最後までAC電源を必要とすると見る。パナソニックはAC/DC対応のコンセントを参考展示したが、規格化はまだ緒についていないという。


DC/AC対応コンセント(パナソニック参考出品)
DC/AC対応コンセント(パナソニック参考出品)


「Sony brings 3D home in 2010」とうたうソニーのブース
「Sony brings 3D home in 2010」とうたうソニーのブース


一方、どのブースでも行列ができたのは3Dディスプレイの展示である。毎年20-30%の価格下落で急速にコモディティ化する薄型テレビに新しい価値を加えて、そのスパイラルから脱したい、販売に弾みをつけたいというメーカーの願いの現れだ。3Dコンテンツの規格についても、Blu-ray Disc Association(BDA)では年内に3D技術をBDの規格に取り込む作業を完了する予定という。

すでにハワード・ストリンガー会長兼社長が9月ドイツ・ベルリンでに開催されたコンシューマー・エレクトロニクスショー「IFA2009」で来年3Dテレビ導入を明らかにしたソニーは映画、ゲームなど、自社の持つコンテンツを最大限に活用してブースの前面を3Dデモで埋め尽くした。

パナソニックも50インチの3Dプラズマディスプレイ・テレビを来年発売する予定。今回もそのディスプレイで3Dをデモ。シャープは先日発表したUV2Aパネルを使用した3Dをデモした。東芝も発表したばかりのCell Regzaテレビをベースに3Dの試作機を展示した。

これらのメーカーはハリウッドの3D映画を劇場上映する際に使用されているフレーム・シーケンシャル方式を採用。右眼/左眼用のフルHD(1920x1080画素)映像をフレームごとに時分割で表示し、対応する液晶シャッター眼鏡で視る方式。眼鏡の開閉はディスプレイからの赤外線信号で同期をとっている。

ただし、現在のコンテンツの製作技術の限界なのか、一応奥行きはあっても、一つ一つのオブジェクトが平面的に見える画像が気になった。サッカーの映像でも、選手、スタジアムは奥行きがあっても個々の選手は一枚の紙に書かれたような平面的な見え方をするものがある。一方、非常に自然に立体化ができているコンテンツもあった。この辺は今後の課題であろう。

その中でソニーが技術発表した単眼レンズ3Dカメラの映像はデモ画像を見るかぎり、非常に自然な見え方であった。これは一つのレンズから毎秒240フレームで取り込んだ映像を3D化するもの。単眼であるため、これまでの2台のカメラを使用する場合と比べて、大幅にカメラの操作性が向上するとしている。

商品化にはまだつながらない3Dの試みとしては、情報通信研究機構(NiCT)が昨年に引き続き、日本ビクターと共同開発の眼鏡無しの70インチ3Dディスプレイをデモした。背面からプロジェクタ・アレイで投射する方式で、将来的には裸眼で見られる200-300インチの3Dディスプレイの実現を目指している。

NHKとJEITAの共同ブースでは、今年6月まで月面の情報を送ってきた月周回衛星かぐや(Selene)が撮影した月面の映像をHDで3D化して見せた。これは偏光眼鏡方式。かぐやの進行方向の映像2枚を一組として3D化したため、本来月の地平線から地球が昇るのが、垂直の崖状になった月面から地球が横に出てくるのはやや違和感がある。とはいえ、月面の実写が3D化できることはそれなりのインパクトがある。

日立はフルパララックス方式の立体ディスプレイを参考技術展示した。どの方向からも立体に見えるディスプレイだが、実用化はかなり先の見通し。

今年のCEATECは来るべき来年の3Dテレビ登場の予告編の役割を果たしたといえよう。

(2009/10/08)

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