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半導体もEDAも成長著しく合併しにくい産業、とメンターのRhines氏が指摘

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「半導体産業は昔からずっと、脱コンソリデーションの精神でやってきた。それは今でも続いている」。このほど東京で開催されたEDA Tech Forum 2009において米国EDAツールベンダーMentor Graphics社の会長兼CEOであるWalden Rhines氏はこのように語った。変化の激しい半導体産業が成長し続けている証しでもある。

Do the Big Keep Getting Bigger?


半導体売り上げランキングに占めるトップ5企業でもトップ10企業で見ても、その他のマイナーな企業が続々増えている傾向がある。ガートナーデータクエストはこれまで1960年代から半導体企業ランキング情報を提供してきたが、あくまでもそのランキングデータに基づくと、1960年代以来、脱コンソリデーション(脱合併化)を進めてきたといえる、とRhines氏は述べた。同じ傾向はDRAMビジネスにも見られる。

むしろ、半導体産業のこれまでの歴史は栄枯盛衰であり、10年たつとプレイヤーが消えるということが頻繁に起きてきた。1955年のランキングで今でも生き残っている企業はテキサスインスツルメンツ(TI)のみ。このところずっと半導体トップに君臨するインテルでさえ、20年前は第8位にすぎなかった。現在2位のサムスンは1997年ではまだ第7位だった。1977年のトップはTIで、1987年はNECだが、1997年にはもうインテルがトップに輝いている。

2008年ランキングの大きな特徴はファブレスあるいはファブライト企業が台頭してきたことだ。トップ10のうち、ファブレスはまだQualcommだけだが、ファブライトはTI、STマイクロエレクトロニクス、ルネサステクノロジ、ソニーの4社が入っている。第4位のTSMCはファウンドリ企業であり、IDM(設計から製造まで行う半導体企業)はインテル、サムスン、ハイニックス、東芝の4社しかない。それまではトップ10ランキングを占める企業はすべてIDMであった。


Few Stay on Top More Than 3 Decades


半導体の歴史は製品技術の歴史でもあると、Rhines氏は述べ、1950年代はGeからSiへ、60年代はトランジスタからICへ、70年代はIC化が進みながらもMOSメモリーが実用化された時代、80年代はメモリーとマイクロプロセッサ、90年代はマイクロプロセッサとSoCの時代、2000年代はSoCとファブレスの時代だとしている。


EDA Market Churn Is Often Confused With Industry Consolidation


さらに同氏は、この状況はEDA業界でも同じだと指摘する。EDA業界はケイデンスデザインシステムズ(CDS)、メンター、シノプシスの3社がさまざまなベンチャーを買収しながら大きくなりビッグ3が寡占化してきたというイメージがある。しかし、同氏は、昔から今に至るまでEDA業界では常に新しいベンチャーが生まれてきているという。このため、ベンチャー以外の既存のEDA企業の数はさほど変わらないのだとしている。

EDAビジネスのもう一つの特長は、ASIC設計、検証、論理合成、レイアウト、論理シミュレーション、ミクストシグナルシミュレーション、タイミング設計、タイミング検証、パワー解析、コンパイラ、ESL、DFMなど設計分野があまりにも細かく分かれているために、1社が高性能なツールを作ることができないことだ。このためさまざまなベンチャーが生まれ、M&Aで企業統合が起きているものの、設計がさらに複雑になってくるため、さらに新たなベンチャーが次々と生まれてくる。


EDA Requires Specialization


結局、EDA業界でも半導体デバイス業界と同様にコンソリデーション(企業合併)が進んではいないといえそうだ。

Rhines氏は今後の半導体ビジネスについても触れ、エンジニア1人当たりが設計するトランジスタ数は1985年と比べて4ケタ(1万倍)も増えたのにもかかわらず、エレクトロニクスエンジニアはわずか2〜3倍しか増えていないと述べた。さらに設計コストはますます増加するが、特にソフトウェアの開発費が増えるとしている。これはハードウェアではなくむしろ、ソフトウェアで半導体チップを差別化するようになったからだ。

ただし、開発するソフトウェアを詳細にみると、開発するソフトの30%くらいは差別化できないソフトウェアだという。具体的にはOS(オペレーティングシステム)やドライバソフト、ミドルウェアなどである。OSなどはもはや差別化できないソフトであるため、共通で使い徹底的に再利用することで、ソフト開発コストを下げられると主張する。

(2009/09/04)

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