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昨日の敵は今日の友、28nmプロセスをTSMCと共同開発する富士通マイクロエレ

富士通マイクロエレクトロニクスは、ファブライト戦略を一層進めることをこのほど明らかにした。8月27日のLSI事業戦略説明会において富士通マイクロの岡田晴基社長は、コストカットをさらに進めると同時に、28nmプロセスは台湾TSMCと共同で開発すると述べた。

このファブライト方式をFML(Fujitsu Microelectronics Ltd.)型Fab-liteと名付け、45nmまでの製品は自社のファブを徹底的に使い切り、40nm以降の製品はTSMCを利用する。今回は、さらに28nmプロセスをTSMCと共同開発することになった。TSMCとはこれらのプロセス開発に加え、WLP(ウェーハレベルパッケージング)やTSV(スルーシリコンビア)、ウェーハバンピングなど高性能パッケージング技術の共同開発も行うとしている。


28nmプロセスをTSMCと共同開発


ファブライトを推し進めることで、投資の重点を「微細化プロセスと製造」から「商品とIP」へシフトする。三重工場に2ラインあった300mmラインのうちの一部をすでに減損処理しており、自社のラインをさらに集約するため岩手工場と会津工場の3本の6インチラインを1本に、同3本の8インチラインを2本に集約する。これにより2008年度末で8万5000万枚/月の6/8インチラインの生産能力を7万枚に絞る。売り上げからみた最適な生産能力だ、と岡田社長は言う。


主要20商品のうちの14商品に集中、エンジニア400名を再配置


商品ポートフォリオの強化に関しては、品種によって成長性軸と競争力軸の座標に分けて分析し、WiMAX基地局用LSIやDTV用エンジン、1セグ復調IC、16ビット汎用マイコン、携帯向けFCRAMなどの製品領域をいずれの軸も低い位置にあることがわかった。このため、主要20商品のうちの14商品に集中することを決めた。ただし、成長性も競争力もない商品に携わっていたエンジニア400名を再配置させる。

成長性と競争力のある商品群に関しては、映像機器部門は2008年の550億円から2013年に1000億円へ、自動車部門は2008年の350億円から2013年500億円、2015年700億円、モバイル/エコロジー部門は2008年の200億円から2013年600億円へ、ハイパフォーマンス部門は2008年250億円から2013年300億円へと伸ばしていく計画だ。また新規事業として富士通研究所が開発してきたGaN結晶技術を使い、パワーデバイスの売り上げは2013年に100億円、2015年に300億円を目指している。

事業モデルの改革は、TSMCとの協業に加え、グローバルなM&Aや提携も進める。欧州ではドイツにGCC(グラフィックスコンピタンスセンター)を設立し、自動車用グラフィック技術を開発したり、FEAT(Fujitsu Microelectronics Europe Embedded Solution Austria)を設立、AUTOSARに準拠した自動車用のソフトウエアなどを開発する。富士通はAUTOSARに準拠したマイコン開発を強力に進めている。さらに米国のFreescaleからはRF技術のライセンスと開発要員を取得した。台湾ではTSMC以外でもIII(情報産業施策会)との合弁によるFMPI(Fujitsu Global Mobile Platform Inc)を設立、WiMAXのアプリケーション開発を進めている。中国ではWest Star Chips社を買収、家電向けマイコンを設計する。

コスト削減に関しては、2008年度に売り上げ3900億円に対して600億円の営業損失を計上し、2009年度の売り上げは2900億円しか見込めないため、2009年度は650億円の固定費を削減する。前工程ラインの集約はその一環となる。これにより2009年度の営業損失は150億円に圧縮される。2010年度も固定費150億円を削減し、100億円の営業利益を目指す。このときの売り上げは3100億円を見込み、それ以降も3100〜3400億円で推移することを目指している。

富士通はこれまでファウンドリビジネスも手掛けておりTSMCはかつてコンペティタだった。海外売り上げをさらに伸ばしたい富士通にとって、外国の顧客を多数抱えるTSMCの支援を富士通は期待する。昨日の敵は今日の友というわけだ。

(2009/08/28)
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