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グローバルケーススタディ:AT&T、米国内だけでは成長できないから海外へ

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ドメスティックな企業が海外進出し、海外の顧客を獲得、サポートするケーススタディとして、米AT&Tを紹介しよう。AT&Tはかつてアメリカ電話電信株式会社と呼ばれており、極めてドメスティックな企業だった。トランジスタを発明したベル研究所もAT&Tの傘下にいた。今は分割されたが、日本のNTT、旧日本電信電話公社にも似ていた。

そのAT&Tが海外進出を強化するようになった。理由は、「アメリカ国内市場でのみビジネスをしていてはもはや成長できない」、と認識するようになったからである。AT&Tは元々、電話料やネットワーク接続料を主な収入源としていた。電話通信ビジネスから、インターネット利用、世界各地の通信オペレータと組みVPNやWANの構築、サービス、データセンター用のホスティングサービス、IPテレフォニー、光ファイバの海外での敷設サービスなどへと事業のポートフォリオを広げてきた。事業のポートフォリオ拡大は国内だけではなく海外でも通用する製品やサービスにつながる。この結果、海外でのビジネスは米国内とは違い、VPNやネットワーク、ホスティングサービスなどネットワークを中心とするものに力を注いだ。

AT&Tは神経網のようにすみずみまで行き届いたネットワークを資産として持つ企業であり、それを利用してユーザーのビジネス上の問題を解決するとしている。「グローバルにつながっているこのネットワークを利用してカスタマの生産性や信頼性を上げるためのソリューションを提供する」と同社CMO(チーフマーケティングオフィサー)のBill Archer氏は言う。今はビジネスモデルの転換期にありワクワクする、という時代認識を同氏はもつ。「このためユーザーへのサービスそのものを全面的に見直し、ネットワークを利用して全く新しいサービスを提供できる能力をつけよう。この能力に磨きをかけ、もっと素早く顧客とのコラボを進めて顧客の抱えている問題を解決する」(同氏)。これがAT&Tでなければできないサービスとなる。

AT&Tが注力する多国籍企業のあるグローバルな地域は、欧州、中東、アフリカ、日本、アジア太平洋であり、世界経済に影響を与える企業の97%をAT&Tのネットワークでつないでいる。IPベースのネットワークを張り巡らせることで、世界共通のネットワークで多国籍企業に貢献できるとしている。世界中にインターネットデータセンターを38カ所も置いている。アジア太平洋地域には9カ所あり、そのうちの2つが東京と大阪にある。

AT&Tがグローバルに提供するシステムの例として、TelePresenceがある。これは巨大なスクリーンと実物大の映像を利用したテレビ会議システムであるが、従来とは違いあたかも同じ会議室にいるかのような臨場感のあるシステムである。2009年はじめにAT&Tの香港に設置し、今年の終わりごろには東京のある企業にも設置することになっているという。


AT&Tが提供する、臨場感あふれるテレビ会議システムTelePresence

AT&Tが提供する、臨場感あふれるテレビ会議システムTelePresence


日本での顧客を勝ち取った例として住友化学がある。住友化学は北米、欧州、アジアを含む世界28ヵ所の拠点を持つが、それらはこれまで部分的に接続されていたが、2009年6月にAT&Tの国際IP-VPN(仮想プライベートネットワーク)に統合したと発表した。このネットワークを使えば世界中の拠点で共通の業務アプリケーションやコミュニケーションツールを使うことができ、経営の迅速化、生産性向上などが図れる。AT&Tのネットワークを利用してセキュリティサービスも受けることができる。

加えて、ブランドとして名高いルイヴィトン・モエヘネシー(LVMH)グループの日本全国にある小売店を結ぶネットワークも設置することが決まった。これはIPベースのAT&Tネットワークで全国数百店舗と日本のデータセンターおよび欧州の本社とを結ぶもの。日本を重要な市場と見るLVMHグループにとって欧州とのやり取りが迅速になりしかもデータの一致性と品質が高まる。

AT&Tはグローバルの顧客のセキュリティを確保するため、米国ニュージャージー州ベッドミンスターにGNOC(Global Network Operations Center:ジーノックと発音)を2000年に設立しており、世界中のAT&Tネットワーク上を行き来するトラフィック量を監視・管理する巨大なモニターシステムを設置している。


AT&TのGNOCでは世界中のAT&Tネットワークを顧客のために監視・管理する

AT&TのGNOCでは世界中のAT&Tネットワークを顧客のために監視・管理する


通常18〜20名のスタッフが監視・管理するこの巨大ディスプレイは、1枚77インチのフラットパネルディスプレイを横に47枚、縦に3列並べた141枚のスクリーンからなる。ここではトラフィックの量を監視するだけではなくデータストリームから予測トラフィック量を抽出し、顧客にその状況を伝え、顧客は自分のシステムでそれを確認する。顧客はトラフィックが爆発しそうになったら予め、「話し中」信号を外部へ送ることでシステムダウンを防ぐことができる。

ハリケーン「カトリーナ」が来襲した時はルイジアナ州ニューオルリンズを中心にトラフィックが殺到し、2001年9月11日の同時多発テロの時は全米全体のトラフィックが集中したという。最近の例では、歌手のマイケル・ジャクソンが死んだ時はテキストメッセージがスパイク状に急増・急減したという。システムの信頼度はファイブナイン99.999%だとしている。

(2009/08/19)

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