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4Gワイヤレスは曖昧模糊、死語になる可能性が出てきたワイヤレスジャパン

第4世代の携帯電話、すなわち4Gが100Mbps(100Mbits/s)を超えるデータレートを実現できる電話方式という漠然とした概念だったが、ここへきて混とんとし始めた。ワイヤレスジャパン2009のコンファレンス「3.9G/LTE&4Gネットワークインフラ構築フォーラム」では、これまでの4Gはもはや意味を持たなくなってきたことがはっきりしてきた。

これまでは、NTTドコモのFOMAから始まる3G(第3世代)携帯、HSDPA, HSUPA、LTE、4Gというようなぼんやりしたロードマップのようなものがあった。3GはドコモやソフトバンクのW-CDMA方式と、KDDIが採用したCDMA2000 EV-DO方式とがあった。基本の多重アクセス方式はCDMA(code division multiple access)であり、その基本特許を持つQualcommがわが世の春を謳歌するような傾向があった。

HSPA(high speed packet access)まではCDMA方式の延長であり、技術的な不連続はなく、データレートが上がっていくだけであった。第1世代のアナログ方式携帯電話1Gからデジタル方式2Gへと変わり、そしてCDMA方式の3Gへと変わることでデータレートも上がってきた。加入者の増加も後押ししてCDMAは有力な手段となったが、データレートや加入者の更なる増加を迫られることで次のアクセス方式はOFDM(直交周波数多重分割)に移らなければならなくなってきた。

そこで、3.9G(ドコモはスーパー3Gと呼んだ)あるいはLTE(long term evolution)からはOFDM方式を採用することになった。これは、お互いに直交する多数のサブキャリヤ(搬送波)を持つため密に隣接しても干渉しにくいという特長を持つ。さらに1本のサブキャリヤは64QAM(直交振幅変調:quadrature amplitude modulation)や16QAMというデジタル変調方式でデジタルデータが送られる。これは振幅と位相をそれぞれ分けてデジタルデータとして扱えるため、低いデータレートでも並列に同時にキャリヤに載せることで高速のデータレートに対応するというもの。

4GもこのOFDM方式を利用する。技術的には4GとLTEとの差はさほど大きくはなく、3GとLTEとの差の方が大きい。フランスなどはLTEから4Gと呼ぶ、とKDDI技術渉外室企画調査部の拮石康博氏はいう。こういった通信業者主体の通信方式とは別にインテルが熱心に推し進めているMobile WiMAXもOFDM方式を使う。Mobile WiMAXも4Gとして捉える見方もある(EDN Japan、2009年8月号)。WiMAXはIEEE802.16mとして標準規格にするための作業が進められていると、インテル研究開発本部の庄納崇氏はいう。

そこで、従来4Gと呼んでいた通信をLTE-Advancedと呼ぶようになった。さらにそのスペックも進化している。帯域幅5MHzのHSPA技術の次はDC(デュアルセル)-HSPAにMIMOアンテナ、64QAMを利用する方式、そしてLTEのピークデータレートは300Mbps程度(帯域幅は20MHz以内)。LTE-Advancedとなると、帯域は100MHz以内で合計1Gbpsのピークデータレートになるという。しかもLTEと同じネットワーク内で共存させるための下位互換性を定義することになる、と日本エリクソンCTOの藤岡雅宣氏は述べた。


(2009/07/30 セミコンポータル編集室)

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