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中国国内の電動バイク市場はパワー半導体の一大市場になりうる

Richard Chang氏、Semiconductor Manufacturing International Corp, President & CEO

中国で初めての先端微細化技術を使ったファウンドリサービスメーカーとしてスタートしたSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corp)。昨年までエルピーダのDRAMウェーハを請負生産していたが、今はDRAMからロジックへと製品を転換し収益確保へと急ぐ。この結果、2008年第3四半期の業績では赤字幅を減らすことができた。さらなる成長へ向けどのようにしていくのか、来日した社長兼CEOのRichard Chang氏にその戦略を聞いた。

Richard Chang氏、Semiconductor Manufacturing International Corp, President & CEO


Q(セミコンポータル編集長):製造工程をDRAMからロジックに転換するといってもDRAMはスタックセル、ロジックは多層配線とプロセスが全く違います。どのようにしてこれまでのDRAMプロセスをロジックへと転換してきたのですか。
A(SMIC社CEO、Richard Chang氏):当社は今年の第1四半期にDRAMのファウンドリサービスを止めるという発表をしました。第2四半期から次第にDRAMを止め、DRAM用の製造装置をロジック用の装置に換え、ロジック向けの装置をアップグレードしていきました。同時にプロセスのクオリフィケーションも始めました。ロジックプロセスの品質認定には6~9か月かかります。最終的に顧客の品質認定を終えるのは2009年第1四半期になるでしょう。今はまだロジックへの切り替えの途中です。

ただし、当社は今後の成長をロジックだと考えておりロジックへの転換を進めていますが、ロジックがうまくいくかどうかは市場状況次第です。2009年からは汎用DRAMは全く作りません。専用DRAMは受注次第で作りますが、これは多くのファブレス企業が設計している特殊なDRAMです。顧客の中には長期にわたって特殊なDRAMの製造を求めるところもありますので、特殊DRAMは続けます。ただし、フラッシュはほとんど作っていません。

Q:そもそもSMICの特長、すなわち優位点は何ですか。他のファンドリと比べたメリットは何でしょうか。
A:まず、工場が中国という急成長市場に立地しているということです。さらにすべての中国市場の中でもっとも高品質ながら低コストであるということも大きな特長です。

Q:TSMCも上海にファンドリ工場を作りました。それとの差別化要因は何ですか。
A:他社のことについてはコメントできませんが、われわれの立ち位置については述べることはできます。われわれにとって台湾との友好関係が出来つつあるという点が最近の特長です。かつては台湾とのビジネスはあまり活発ではありませんでしたが、今は多くの台湾ファブレス企業とのビジネスチャンスが増えており、台湾のカスタマサポートの機会も増えてきました。これからもますます増えてくると思います。

Q:今は日本とのビジネスは売上の何%くらいでしょうか。
A:日本との取引はまだ少ないです。今は2%しかありません。エルピーダメモリの請負をしていた当時は20%くらいありました。今の2%はロジックです。これからのロジックは市場開発が必要となります。

問題は、90nm以下のプロセスでは製造装置の輸出許可が日本政府からまだ下りないことです。日本の顧客から90nmのロジックデバイスへの要求はあるのですが、日本政府はまだ許可をくれません。拡散炉などのファーネスや塗布・現像装置はすでに入手可能ですが、マスク製作用の電子ビーム装置の許可がまだ下りなくて待っている状態です。

Q:これまで中国へはWassenaar(ワッセナー)条約の制約から最先端の製造装置の輸出はできませんでしたが、最近、米国政府が32nm技術を中国へ輸出する許可を出しましたね。となると日本政府は米国に追従していますので、日本政府の許可も間もなくだと思います。
A:2009年第1四半期には米国から32nm向けの装置とR&D技術の輸出ライセンスが下りると見ています。R&Dレベルでは32nm技術ですが、これが45nm、65nm、90nmへとつながればわれわれのビジネスチャンスは広がってきます。

Q:第3四半期のレポートによると中国向け半導体チップは売り上げの31%ということですが、今後もこの数字をキープする方向ですか、それとも増やしていく方向ですか。目標はどのくらいですか。
A:この数字は香港や台湾も含む全中国の数字です。この数字をもっと増やしていきたいと思っています。何年後かはいえませんが、目標としては50%くらいにはしたいです。

Q:中国市場ではどのような応用に強いのですか。
A:まず電気通信(テレコム)分野が最も強いです。次が民生分野です。デジタルテレビや、携帯テレビ、デジタルカメラ、DVD、液晶テレビなどに当社で製造した半導体が使われています。

Q:SMIC Technology Symposium 2008でパワーとアナログというかミクストシグナルLSIについて今後力を入れていくと話していましたが、なぜどのような市場をみてパワーとアナログに力を入れるのでしょうか。
A:パワー分野は市場が非常に大きいと見ています。省エネルギーにはパワー半導体は欠かせません。

さらに、中国市場では面白い応用があります。電動バイクです。中国政府は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを利用するこれまでのバイクを徐々になくし、電動バイクに転換していく方針を打ち出しています。グリーンエア、グリーンパワーへのシフトです。また、従来のガソリンバイクだと免許がいりますが、この電動バイクを運転するのに免許は要りません。中国にはバイクは3000万台〜4000万台の市場が見込まれます。1台のバイクに6個のパワーチップが使われます。この市場に参入できれば1~2億個のパワー半導体が消費されます。大市場です。


(2008/11/19 セミコンポータル編集室)

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