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これからの携帯電話はゲーム感覚のGUIがカギ

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イマジネーション・テクノロジーズ CEO Hossein Yassaie氏

英国のIPベンダーであるイマジネーション・テクノロジーズ社は、米マイクロソフト社のWindows Vistaや米アップル社のiPhoneに見られるような3次元グラフィックインターフェースがこれからのユーザーインターフェースの主流になると期待する。携帯電話などの通信機器や放送機器の基本回路をはじめとして、グラフィックス回路や演算プロセッシング処理、ディスプレイの画像処理までを含む一連の回路の流れまでをカバーするIP戦略を鮮明に打ち出した。このほど来日したCEOのHossein Yassaie氏にその詳細を聞いた。

イマジネーション・テクノロジーズ CEO Hossein Yassaie氏

Q(セミコンポータル編集室):現在のビジネス状況についてまず教えてください。
A(Yassaie氏):2007年度(2007年3月期)の売り上げは5000万ポンド(1億米ドル)に近い。410名の従業員が働いておりその8割がエンジニアです。顧客には、ルネサス、インテル、テキサス・インスツルメンツ(TI)、NECエレクトロニクス、サムスン電子、シャープ、フリースケール、NXP、台湾のサンプラス、英国のフロンティアシリコン、セントラリティなどがいます。これ以外にも大手の顧客はいますが、契約上、名前を公開できません。全世界で22種類のアプリケーションプロセッサに搭載され、50種類のSoCチップに載っています。
 最近力を入れているのは携帯電話への応用です。というのは当社のIPは高性能ながら消費電力が他社よりも低いからです。GPSやグラフィックス、ビデオなど携帯電話に搭載されるようになって来ました。日本はもちろん大きな市場ですが、こういった機能はほかの地域でも見られます。例えばアップル社のiPhoneはよい例です。携帯電話では、ゲーム感覚のユーザーインターフェースが重要になるでしょう。

Q:テレビ受信機やグラフィックス、デジタルラジオ向けのチップなどを手がけておられますが、どのようなコンセプトでこれらのIPを設計されているのですか。
A:すべてのIPに共通する設計目標は、小さなチップ面積でかつ消費電力の小さなIPを作ることです。例えば65nmプロセスで作る場合3mm角程度の大きさで数十mWの消費電力で実現します。
 テレビ受信機や、携帯電話などの無線機器は、アンテナからRF部、ベースバンド部、復調回路および符号化/復号化、誤り訂正、さらにグラフィックスやビデオコーデック、ディスプレイ処理などからなります。このうちRF部分を除き、すべてをカバーします。かつて、並列処理コンピュータの走りであった英インモス社のトランスピュータを開発していた経験があるため、コンピュータ技術は得意です。私はその後STマイクロエレクトロニクスに移り、圧縮・伸張技術を手がけてきました。このため演算処理が必要な復調から圧縮・伸張、グラフィックス演算などが当社の強みです。チップで言えば、各種の放送標準をソフトウエアでプログラムできるENSIGMA、マルチスレッド並列処理で計算するプロセッサ/DSPを備えたMETA、2D/3Dのベクトルグラフィックス処理・ビデオコーデック・ディスプレイ処理を行うPowerVRシリーズ、があります。それぞれ最新版と今後のロードマップを持っています。

Q:ではENSIGMAから説明してください。
A:ENSIGMA は通信部分の製品シリーズ名です。主な機能は、NTSCやPALなどのアナログテレビ放送や、DVB-TやDMB-T、ISDB-T(ワンセグ)などのデジタルテレビ放送の復調回路や、デジタルラジオの復調回路、2.5G/3.Gの携帯電話通信復調回路、Wi-Fi(802.11x)復調回路です。基本回路構成は、信号コンディショニング(SCP)、変復調および符号化・復号化プロセッサ(MCP)、誤り訂正プロセッサ(ECP)から成ります。
 SCPは周波数変換のダウンコンバータの役割を果たし、ECPはビット欠けなど伝送後のエラーを訂正します。共にコンフィギュラブルなハードウエアで設計しています。MCPの復調機能はソフトウエアで処理します。プログラム可能なSIMDアーキテクチャの複素数ベクトルプロセッサです。ただし、ビデオの復号化はプログラマブルにはせず、標準規格のH.264やMPEG-2、MPEG-4などに準拠します。
 ENSIGMA製品ラインを作っていたベンダーは、TIのDSPアセンブラを提供していた企業であり、2000年にイマジネーションが買収しました。ENSIGMAの名前は、文字通りシグマすなわち累計の足し算という意味から来ています。DSPが積和演算機能を持っていることとも関係します。今後、モバイルテレビ向けや米クワルコム社のMediaFloアーキテクチャ向けにも設計する予定です。

Q:METAプロセッサの特徴は何でしょうか。コンピュータ技術はマルチコアを使いますか。
A:METAは、単独では制御系にも使えますが、パワフルなのでENSIGMAや後で説明するPowerVRと一緒に使い、他のチップの演算部分を受け持たせることができます。おもちゃのレゴのようにこれらを組み合わせて最適なシステムを作ります。マルチスレッドプロセッシングの並列処理技術を使います。マルチコアだと、ソフトウエアが複雑になり、目標とするスペックを満足しません。マルチスレッドはリアルタイム処理ができ、しかも消費電力が低いのです。ただし、マルチスレッド技術で注意しなければならない点はスケジューラです。
 このためにパイプライン方式のマルチスレッド構成にしました。理由は、デッドロック(すべてのスレッドが別のそれぞれのスレッドの完了を待っているうちに結果的にすべてのスレッドがとまってしまう状態)を防ぐためであり、それまでの処理のヒストリを見ながらパイプラインを長くするか短くするかを決めるからです。4スレッド方式で共有メモリーを使います。レイテンシがないというメリットがあります。META1は入手可能ですが、2007年後半にはMETA2を発表します。

Q:PowerVRグラフィックス・チップの特徴は何ですか。
A:MBXファミリはTIのOMAP2やインテルの2700Gをはじめ、NXP、フリースケール、ルネサス、サムスンなど22種類のチップに搭載されています。これだけ使われているのは、メモリーのバンド幅が1/3程度と小さくてすむからです。さらにスケーラブルというメリットもあります。これはマルチスレッドでピクセル処理やテクスチャー処理を並列に行うといった上位拡張が可能です。
 これまでのMBX製品シリーズに加え、性能を高めたSGXシリーズの新製品をまもなくリリースします。携帯向けとハイエンド機種です。消費電力は上げずに性能を2〜5倍に上げたシリーズです。MBXシリーズがレンダリング処理の方法などで機能が固定しているのに対して、SGXシリーズはひとつのエンジンでピクセルシェーディングとバーテックスシェーディングの割合をプログラムで変えることができます。
 緑の球体の前に黄色の円柱があるという図形の場合、写像変換した後、まずどちらが前にあるのかを判定します。この場合は黄色の円柱が前にありますので、その円柱を先にレンダリングします。すると陰になっていて前からは見えない球の部分はレンダリングしません。このため処理は軽くなります。
 ピクセルシェーダは最大32個まで備えていますが、製品ラインによってその数を変えます。モバイル用では4個、ミッドレンジでは4〜8個、ハイエンドは32個という具合にシリーズによって変えられるユニバーサルシェーダを使います。
 さらにレンダリングはスクリーン全面を一度に塗るのではなく、スクリーンを多数のタイルに分割し、タイルごとに塗り分けます。つまりピクセル数の少ないタイル部分のメモリーにデータをストアしますので、バンド幅が1/3と少なくてすむわけです。
 この結果、90nmプロセスが主体だったMBXシリーズと比べ、SGXではプログラムの自由度を加え並列演算のシェーダを4個備えても65nmプロセスで1mm角〜4mm角くらいに収まります。
 PowerVRシリーズの残りは、ビデオコーダとディスプレイ処理です。ビデオデコーダはMPEG-2やMPEG-4、H.264などの標準規格に準じています。これをプログラム可能にするとあまりにも膨大な回路になってしまいますので、固定の標準規格に準じることにしています。ディスプレイ処理は、インターレース画像などで現れるギザギザ模様をスムースにする処理です。この処理には、勾配補正と呼ぶ技術を使い、画素補完はしません。画素補完は計算時間が膨大になるからです。

Q:今後の目標を教えてください。
A:製品は各シリーズを広げていきます。携帯機器からハイビジョンなどハイエンド応用までカバーして、イマジネーション社のIPを使ったチップを現在生産している2600万個から3年後には2億個を目指します。これによってロイヤルティ収入の売り上げを期待できます。
 また、IP製品をライセンス売りするだけではなく、各種のIPを組み合わせてSoCを設計するお手伝いビジネスであるIMGworksサービスも強化します。顧客の要望によって、METAプロセッサとPowerVRやENSIGMAとの組み合わせを変えることで最適な製品を作り出すことができます。

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