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450mm計画はコラボレーションが最も重要

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International SEMATECH Manufacturing Initiative Scott Kramer氏

米半導体コンソーシアムSEMATECHの子会社で生産性にフォーカスするISMI(International SEMATECH Manufacturing Initiative)社が450mmウェーハの実用化に向けて動き出した。この7月のSEMICON Westでその旨を発表したが、このほど来日したISMIトップのScott Kramerディレクタにその詳細を聞いた。

ISMI Scott Kramerディレクタ

Q(セミコンポータル編集):  SEMICON Westで450mmウェーハプロジェクトおよび300mmPrime(300ミリプライム)の研究成果を発表しました。300mmPrimeは450mmへスムーズに以降できるようにするため300mmの段階から、枚葉式のラインを構成したりセットアップ時間の削減などを考えたり、これまでの300mmで使っているインフラストラクチャとは別の構成を仮定しています。まず300mmPrimeの研究でやったこととその結果の詳細を聞かせてください。
A(Kramer氏): 300mmPrimeの研究調査は2006年10月から始めました。このときから9カ月かけて調査しました。調査の手段はコンピュータシミュレーションです。ISMIには300mmウェーハのプロセス工場があり、月産3万枚能力という典型的な規模のラインです。このラインを基本として、生産性を阻害するマイナス因子を導き出します。これらのマイナス因子を評価するわけですが、目的はマイナス因子が小さければ300mmPrimeは使えることになります。ターゲットとする、コスト削減30%とサイクル時間50%を実現できるかどうか、を評価します。

Q: どのようなマイナス因子を想定しましたか?
A: まずは装置の可用性(アベイラビリティ)です。装置が故障して使えなくなる時間があり、その何%が計画しないで故障停止したものなのか、という見積もりをします。また、装置の待ち時間も無駄な時間です。たとえば炉に投入する前の待ち時間です。3つ目は最初のウェーハの遅れ時間とセットアップに要する時間です。4つ目が枚葉式あるいはミニバッチ(最大6枚)を前提とする炉のプロセスツールを仮定することです。

Q: 計算時間や手法はどのようなものですか?
A: もし生産性が1%改善したらどうなるか、をコンピュータでシミュレーションします。このシミュレーション時間は8〜24時間かかります。通常勤務では、調査員は帰宅前にコンピュータを動かし計算をさせておきます。翌朝オフィスに出てきてから計算結果をレビューします。考察を加えてから次のシミュレーションのシナリオを決めます。このようにして1年間に生産するウェーハの生産性をシミュレーションで計算します。全部で150回シミュレーション計算を9カ月に渡り行いました。

Q: セミコンで発表された資料の結果の図を見ますと、最初に設定した300mmPrimeで開発期間(サイクル時間)を50%、コストを30%削減するという目標はクリヤーできないという結論です。コストダウンだけなら10%削減は可能ですが、サイクル時間は変わりません。サイクル時間を下げようとするとコストが増大してくる、という結果です。
A: だから450mmウェーハにしなければサイクル時間50%、かつコスト30%削減という目標をクリヤーできないという結論が出たのです。ただ、300mmPrimeの調査は規模を縮小して1〜2年先まで継続します。どのような問題が浮上してくるかもしれないからです。300mmPrimeとはいわゆるフォワード・コンパチビリティのことなのです。450mm使用を前提とした300mmウェーハのシステムのことですから。

300mm Prime - Cycle Time vs. Wafer Cost View

Q: 450mm計画(プログラム)についてお聞かせください。いつから始まりどのようなことを研究するのですか。
A: 450mm計画は2008年1月1日から始めます。テーマは、まずシリコンウェーハでは、厚さや均一性、形状などを調べ仕様を決めます。半導体メーカーはできるだけ薄くしてほしいと要求していますが、装置メーカーは取扱いやすさを考慮して厚くしたいと考えています。この話し合いが必要です。またオリエンテーションのノッチをどこにつけるか、あるいはノッチをつけないウェーハではオリエンテーションをどのように決めるか、などのテーマがあります。
次にウェーハのハンドリングです。300mmで使われてきたFOUPという容器に代わるものを決めなければなりません。たとえば450mmウェーハを25枚収容すると何と20kgにもなります。こうなると全自動しか搬送手段はありません。また容器を導入する部分はフロント開閉かボトム開閉か、という決めごともあります。
さらに次世代工場のガイドラインと、450mmのファクトリインテグレーションのテストベッドを実際に作ります。

Q: 次世代工場のガイドラインについて説明してください。
A: ガイドラインは19項目あり、大きく分けて、キャリヤとEHS問題、装置デザイン、装置制御の三つのテーマから出来ています。これらを詳細に議論し、その詳細を本にして表します。初期段階でのFOUPのようなキャリヤに入れるウェーハ枚数と仕様をはじめ、フロント開閉の450mmキャリヤの仕様、などにわたります。詳細な分厚い本を出すまでに2〜4年かかるでしょう。

Q: 450mmのファクトリインテグレーションのテストベッドとは何ですか。
A: スラング的な英語で申し訳ありません。これは、デモンストレーションのための実験室です。クリーンルームを作り、サプライヤの方がいろいろな装置やキャリヤを評価します。ロードポートがどの企業の装置にも入るように相互運用性(インターオペラビリティ)を、物理的にもソフトウエア的にも確認します。

Q: こういった問題を解決できた暁には450mmウェーハの準備が完了するといわれていますが、いつを考えていますか。
A: ここでの準備とは、450mmウェーハを使った最初の工場という意味です。まだ暫定的ですが2014年を目標にしています。それまでにいろいろなことが起きますから、変わるかもしれません。

Q: それまでに行うべき重要なことは何ですか?
A: コラボレーションです。半導体メーカー同士のコラボレーションだけではなく、半導体メーカーと装置メーカー、あるいは材料メーカーとのコラボレーションは欠かせません。

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