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新市場が次々現れるので、半導体の限界は見えない

Rick Shen氏、eMemory Technology Inc., President
メモリIPベンダーである台湾のeMemory社。これまでも日本の顧客とは付き合いが長い。東芝やルネサスエレクトロニクスをはじめとする多くの半導体メーカー取引してきた。最近、メモリIPを使ったセキュリティ分野にも進出(参考資料1)、来日した同社社長のRick Shen氏にセキュリティ市場、IoT、VR(仮想現実)など新トレンドを聞いた。

Rick Shen氏、eMemory Technology Inc., President

Rick Shen氏、eMemory Technology Inc., President


セミコンポータル:日本市場をどのように見ていますか?
Shen氏:日本の半導体産業は大きく変わりました。ルネサスはファブライト戦略に移行し、工場を手放しています。かつてあった沖電気工業はロームの傘下に入り、三菱電機はパワー半導体だけになりました。
IPベンダーとしては、ファウンドリともファブレスともIDMとも付き合ってきましたので、(日本がファブライトの道を進もうとも)これまで通りに力を入れていきます。日本の半導体メーカーはカーエレクトロニクスや工業用の市場にも力を入れています。そして、最近はIoTの世界にやってきました。IoTの世界はセンサとマイコン、そしてコネクティビティが欠かせません。全て低消費電力であることが基本です。

さらに最近ではセキュリティをこれまでのソフトウエアだけではなくハードウエアでも確保しようという動きが出ています。当社の得意なメモリIPをチップのID(identification)やコンフィギュレーションの設定などに使うことを顧客に提案してきました。例えば冗長構成にしてチップを守るためのコンフィギュレーションを設定することにも使えます。
当社のセキュリティは暗号キーを作る方法に特長があります。乱数発生器を設けると同時に、ここのチップが持つプロセスばらつきを利用したランダムなプログラム(1か0
かは誰にも分らない)電圧の両方を利用します(編集室注:詳細は参考資料1で紹介)。

セミコンポータル: 日本の顧客の反応はいかがですか?
Shen氏:当社はメモリIPプロバイダであり、ユニークなアプローチでIPをライセンスしています。世界的に見て、欧州や米国の顧客は常にポジティブで最初に採用してくれます。しかし、アジアの顧客はいつも保守的で、欧米に次ぐ2番目のユーザーになります。ですから、欧米企業が最初に使って数カ月たってからアジアの顧客を回ります。当社のコンセプトが思い通りに動くのかどうか確かめてから採用するのでしょう。

セミコンポータル:日本でも何社か回られましたか?
Shen氏:大きな企業を3〜4社回りました。スマートカードやコネクテッドカーのアプリケーションを手掛けるメーカーです。

セミコンポータル:クルマといえば、国内でもデンソーはティア1メーカーですが、半導体を製造しています。
Shen氏:もちろん、彼らとも話をしています。当社のIPは、パワーマネジメントIC(PMIC)の高電圧や大電流のチップに使われています。またデンソーに限った話ではありませんが、スマートフォンのPMICのすべてとLCDドライバにeMemoryのIPが組み込まれています。また、たくさんの顧客のモータドライブICやDC-DCコンバータなどにも使われています。

セミコンポータル:PMICのどこに使われるのですか?
Shen氏:トリミングです。最近はA-D変換し、デジタル値を調整してトリミングすることが多く、その値をコントローラへ送ります。今は0.13µmプロセスで8インチウェーハを使って生産しているPMICに使われています。設定などに使います。

セミコンポータル:日本ではどのような市場を狙っていますか?
Shen氏:民生は特注品の世界がいまだに強いと思います。また、MEMSなどのセンサやそのコントローラも台湾や中国市場よりもずっと日本が得意な応用分野です。もちろん、日本は自動車や工業用にも強いですので、こちらの方も狙うのは言うまでもありません。

セミコンポータル:センサ応用で何が特長ですか?
Shen氏:やはりトリミングです。

セミコンポータル:半導体ユーザーであるOEM企業も訪問しますか?
Shen氏:カーエレクトロニクスでは、部品メーカーには会います。当社はIC設計会社です。プロセス開発企業とも密接な関係を持っています。ユーザーソリューションを持っているからです。
ただし、システムメーカーとも情報交換します。システムトレンドは何か、そのためのデザインに必要なものは何か、を知るためです。テクノロジートレンドは重要ですが、それだけでは不十分です。例えばハイエンドカメラハイエンドの通信チップTSMCなどに製造してもらえるため技術はあります。しかしアプリケーションがキードライバとなっています。例えばVR(仮想現実)。昔はコンセプトだけでしたが、今やVRはゲームやドローンにも入り込んでいます。ドローンのレーシングをVRで表現したりするようなゲームが出てきています。

だから、私は半導体ビジネスの将来には全く心配していません。常に新しいアプリケーションが続々出てくるからです。例えば、グーグルやアマゾンはサーバーやメモリチップを使うユーザーでした。しかし、ユーザー経験を積み、ビッグデータベースを持ち、チップデザインまで持つようになりました。これはディープラーニングを実行するためのチップですが、人工知能(AI)は今やみんなが身近に感じるようになりました。昔は、AIは夢物語でした。

セミコンポータル:IoTシステムは、広い分野に渡って応用されるため、一つ一つの応用は小さなセグメントに分かれています。つまり超少量多品種の世界です。
Shen氏:少量多品種の世界は当社にとっての強みとなります。例えば15年前、台湾でIPベンダーができるとは誰も思っていませんでした。しかし、われわれは、新しいコンセプトを持ってくることによって、IPでカスタマイズすることを考えました。異なる顧客に異なるIPを提供するのです。これによって、顧客はそのカスタマイズした部分を強みとできます。
当社のIPはユーザーごとにカスタマイゼーションサービスとしました。異なるカスタマに異なる仕様を提供できるので、市場がIoTにシフトすると我々も異なる消費電力、性能に応じて、カスタマイズします。これが当社の強みです。本社は(台湾北部の)新竹にありますので、TSMCとも近い場所にあります。

参考資料
1. 暗号キーを生成するIPをeMemoryが提供、IoT時代に不可欠 (2016/06/15)

(2016/07/07)
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