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東京エレクトロンの東会長、統合の意義を語る

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東京エレクトロンの代表取締役会長兼社長の東哲郎氏が第25回ファインテックジャパンの基調講演において、Applied Materialsとの経営統合の発表があって以来、初めて公式の場で、その意義について語った(図1)。

図1 第25回ファインテックジャパンで講演する東京エレクトロン代表取締役会長兼社長の東哲郎氏

図1 第25回ファインテックジャパンで講演する東京エレクトロン代表取締役会長兼社長の東哲郎氏


両社の経営統合が発表されたのは、2013年9月24日。以来、統合に向けて地道な作業を進めてきた。統合に踏み切った背景は、時代の大きな流れ、すなわちメガトレンドに沿ったものであった。

半導体産業の大きな特長の一つが半導体チップの広がりである。これまでのコンピュータハードウエア主体の時代から、ITを活用する時代に変わりつつある。メインフレームからEWS、パソコン、スマートフォン/タブレットへとダウンサイジングがやってきて、次の時代はIoTになることは間違いない。全てのハードウエアがインターネットにつながるIoT時代には、情報量は膨大になり、大量のデータをさばき、ストアすることがマストになる。IoT端末の量産だけではなく、クラウドベースの処理、データセンターの大容量化、仮想化なども要求されるようになる。このために求められる半導体は、高速化と大容量化、低消費電力化を満たしたうえで低コスト化が絶対条件となる。

ところが半導体技術は、微細化技術開発が現在10nm、今後7nm、さらに5nmへと向かうにつれ、原子レベルに近づくため、物理限界が迫ってくる。トランジスタ構造はFinFETのような3次元になり、SiGeやIII-V化合物半導体をチャンネルに使うなどの検討がなされている。加工技術もマルチパターニングやEUV、さらにはDSAなどの研究も進められている。研究開発は、従来の延長の微細化1本だけではもはや立ちいかなくなったという意味である。

現実に、半導体製造装置メーカーにとっても研究開発費は急増している。装置メーカー上位4社(Applied Materials、ASML、TEL、Lam)の研究開発費は2014年には40億ドルに達し、売上額の16%にも増加した(図2)。半導体開発が、3次元・新材料・新技術という技術的なバリアが高くなる一方で、低コスト化も図らなければならない。もはや1社では開発が困難になってきた。例えば、これまで1社で大口径化はできなかった。6インチ化、8インチ化もそうだった、と東氏は言う。


半導体製造装置上位4社の研究開発費と売上比率 出典:東氏の講演を元にセミコンポータルが加工

図2 半導体製造装置上位4社の研究開発費と売上比率 出典:東氏の講演を元にセミコンポータルが加工


ビジネス環境も変わってきた。アジアの台頭である。「顧客の課題を素早く解決するサービス&技術力、さらに新興国・発展途上国市場で通用するコストパフォーマンスを提供すること」も加わる。東氏は「技術課題とビジネス課題を解決・実現するためには、ゼロから出発する必要がある」と述べた。

経営統合ではなく、コラボレーションという手もある。しかし、緩いコラボには限界がある、と東氏は考えた。国内では政府中心のコラボレーション、研究組合を何度となくやってきた。しかし、研究開発現場では、それぞれの会社からやってきたため、秘密保持の観点から、見ざる・言わざる・聞かざる、という態度で研究開発に臨んできた。しかし、その結果、日本の半導体産業はますます弱体化していったという歴史がある。東氏は「もっと深く、もっと固いきずなで結ばれたコラボでなければならない」と考えた。

この結果、経営統合がこのソリューションとなった。Appliedを選んだのは、技術的、財務的にも強固なところと組むためだった。Appliedは言うまでもなく、トップ企業である。しかも、両社は製品のダブリがさほどないという。TELは塗布現像、拡散・成膜、洗浄、絶縁膜エッチ、プローブテストに強く、Appliedは枚葉成膜、イオン注入、平坦化、コンダクタエッチ、欠陥装置に強い。お互いに補完関係が成立している。

東氏は、「2社の強みを新たに融合し、技術ブレークスルーを提供する」とし、さらに「決意表明みたいなものですが、と前置きしたうえで、我々は、顧客の直面する高次元の技術課題を、より迅速に、効果的に、低コストで解決するグローバル・イノベーターを目指します」と結んだ。

(2015/04/08)

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