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UMC、日本のIDMにはカスタマイズで対応

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P. W. Yen氏、台湾UMC社 CEO

台湾第2位のファウンドリ企業であるUMC。2012年の世界のファウンドリ企業においてはそれまでの第2位から4位に退いた。今年は巻き返しを図る。来日したCEO(最高経営責任者)のP. W. Yen氏にその狙いを聞いた。

台湾UMC社 CEOのP. W. Yen氏

台湾UMC社 CEOのP. W. Yen氏


Q1(セミコンポータル編集長): このほどUMCは日本でシンポジウムを開催しました。なぜ日本で開催したのでしょうか。
A1(UMC社CEO P. W. Yen氏): UMCの強みは、フレキシブルなビジネスモデルであることと、オープンエコシステムを構築していることです。特に、フレキシブルという意味は、顧客によってフレキシブルにカスタマイズできることが強みだということです。
一方で、日本のIDMはファブライトに向かっており、ファウンドリとの協業を望んでいます。日本のIDMはプロセスのチューニングを行います。このためファウンドリが汎用のPDK(プロセス開発キット)を用意していてもカスタマイズを望みます。
UMCはファブレス企業にはPDKで対応し、日本のIDMにはカスタマイズで対応できます。これが、他のファウンドリとは違う点です。だから日本のIDMに対してはJDP(共同開発プログラム)を提供します。

Q2: 昨年、千葉県館山市にあった日本ファウンドリー社の工場を閉鎖しました。なぜ日本でファウンドリ工場を閉鎖したのでしょうか?
A2: 館山にあった8インチラインは、日本のIDMをサポートするのに適していなかったからです。館山の工場は生産能力が不足しており、日本のIDMの要求には向かなかった。台湾の台南市と新竹市には8インチファブが7棟あります。中国蘇州には1棟あります。館山も1棟だけでした。
日本にはIDMという潜在顧客がいます。だから日本のIDMをサポートするために能力の不十分な館山に投資するのではなく、セールス力に投資し秋葉原にセールスオフィスを開設しました。
さらなる生産能力向上には、台湾とシンガポールにある12インチの工場を使います。2カ所に作ったのは、リスクを分散し事業を継続できるようにするためです。台湾も日本と同様、地震のリスクにさらされていますから。

Q3: 12インチ工場の進捗はどのような状況ですか
A3: 台南の工場を今、拡張しています。R&D工場と、P1〜P4の工場は完成していて15.8ヘクタールの面積があります。計画中のP5〜P8工場は、21.5ヘクタールの敷地面積です。クリーンルームの大きさは、P5とP6は5万3000平方メートル(5.3ヘクタール)ありますが、この大きさはアメリカンフットボール競技場10個分です。
12インチのファブP5とP6では、28nm以下のプロセス製品の生産能力が5万枚/月、省エネ、リサイクルなど環境を配慮したグリーン工場にする予定です。

Q4: UMCはこれまでアグレッシブに投資してきたというイメージがありません。TSMCは積極的に投資を継続しており、ずいぶん差がつきました。これから巻き返すための投資についてお聞かせください。
A4: グローバルファウンドリーズはアラブマネーを使って3年間で100億ドルを超える巨大な投資を行ってきました。しかし、いまだに利益が出てきたとは聞いていません。
UMCは投資に対してややコンサバティブでした。しかし、セールス部門には投資をしてきました。現在、UMCは顧客とのミーティングが増えています。第2四半期の売り上げは第1四半期に比べて2桁成長すると見込んでいます。ツールサプライヤも含めエコシステムを構築していますので、生き残りには自信があります。
今は、20nmの研究開発、14nmに向けた投資を行っています。

Q5: 一般市場では28nmから20nmを経ずに一足飛びに14nmに向かうと先日のシンポジウムで述べられましたが(参考資料1)、その理由をお聞かせください。
A5: 20nmプロセスは、特定顧客との要望による共同開発プロジェクトとしてやっていきますが、一般顧客向けには14nmへ飛びます。28nmから14nmへ移行すると、コストは半減し、性能や消費電力は30%改善されます。
20nmでは本質的なメリットが少ないのです。ですから14nmへ飛ぶことを決めました。また、各技術ノードは2年に1回の割合で進んでいます。20nmプロセスを仕上げても1年しか長く続きません。大概の顧客は20nmに対して尻込みしています。数量は見込めませんし、多くの顧客と話し合った結果が14nmへのシフトです。
どうしても20nmが欲しいと言われる顧客には個別で対応します。

Q6: どのようにして14nmプロセスを開発するのですか。
A6: 14nm FINFETプロセスはIBMから技術のライセンスを受けます。IBMのCommon Platformプロジェクトに参加していた訳ではありませんが、IBMには強い基本技術があります。UMCはコスト効率良く開発してきました。現在すでに、14nmプロセスを4~5年以上やってきています。14nmFINFETプロセスは2014年の後半(2H)にテープアウト、品質認定を終えてから、提供します。
顧客の名前は言えませんが、14nmFINFETプロセスは、おそらくアプリケーションプロセッサから最初に適用されるでしょう。

Q7: 日本でファブを買ったり、持ったりする計画はありますか。
A7: 日本のIDMの工場を購入する可能性についても真剣に検討しました。しかし、ファウンドリコストを考えると日本に工場を作るメリットは少ないのです。例えば、クリーンルームの運営コストの大きな部分を占める電力コストは台湾が圧倒的に安いです。シンガポールに工場を設立した時、シンガポールでの電力コストは台湾よりも高かったのです。しかし、現地政府がインセンティブを与えてくれると同時に、デザインハウスもシンガポールにありましたので、電力コストが高くてもコスト的に見合うことができました。残念ながら日本にはシンガポールのようなインセンティブはありません。おまけに電力コストがとても高いのでメリットがないと判断しました。
現在の工場は、グリーンエネルギー、省エネに注力しています。化学薬品の削減にも努力しています。UMCは、TSMCと同様、ダウジョーンズのサステイナビリティ指数の株式にリストアップされています。

参考資料
1. 台湾UMC、20nmをスキップ、14nmFINFETプロセスで巻き返し狙う (2013/05/30)

(2013/06/11)

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