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強みをさらに強くすることで他社よりも競争力を磨く

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Jan Signell氏、エリクソン・ジャパン 代表取締役社長

携帯電話の基地局や、通信の基幹系など通信インフラのネットワーク機器を通信オペレータに納めているエリクソン。その日本法人社長のヤン・シグネル(Jan Signell)氏は日本市場と日本人の革新性を高く評価する。日本人は自国を必要以上に悲観的に見たり自虐的になったりしていないだろうか。半導体を使うセットメーカーが見る日本について聞いた。

図1 エリクソン・ジャパン 代表取締役社長のJan Signell氏

図1 エリクソン・ジャパン 代表取締役社長のJan Signell氏


Q1(セミコンポータル編集長):ワイヤレスジャパン2012の基調講演「エリクソンの描く"The Networked Society"」の中でエリクソンにとって東京が重要なのは、携帯技術の「初めて」が東京で起きているからと述べられました。日本市場はそんなに魅力的なのでしょうか。
A1(エリクソン・ジャパン 代表取締役社長のヤン・シグネル氏):エリクソン・ジャパンにとって日本は、米国、中国に次ぐ3番目に大きな市場です。私は、日本はとても速く成長していると見ています。他国の市場の成長度合いにもよりますが、日本の方が速い速度で成長すると思います。しかも日本の成長はとても力強いのです。

Q2:日本の市場に対して力を入れる分野はどこですか。
A2: 日本ではモバイルブロードバンドネットワークの通信データトラフィックは急速な勢いで増加しています。3〜4年後には2010年の25倍にも伸びます。ここは絶対に力を入れるところです。

Q3:そのために採るべき対策は具体的に何ですか。
A3:今日の基調講演で述べたのですが、私たちは日本に設置しているコンシューマラボとスマートフォンラボにおいて、ネットワークラボと協力して、トラフィック量の増加をモニターしています。どのように増加しているのか、ネットワークに必要なものは何かをシミュレーション予測し、今後の増加を管理する準備を始めています。


図2 三つの研究所で問題に対処する 出典:Ericsson

図2 三つの研究所で問題に対処する 出典:Ericsson


Q4:モバイルインフラでは中国の存在感が大きくなってきていると思います。華為やZTEなどがその代表です。中国に対して強みは何ですか。
A4:まず、ここ10年で世界の競争は変わってきています。興味深いことはエリクソンの世界市場におけるシェアが増加していることです。われわれは競争力があることを誇りにしていますので、どの国においても競争力があると思います。競争が中国で起きようがどの国で起きようがもはや関係ありません。すべてのポートフォリオにおいて強みをますます強くすることにフォーカスしているからです。世界中180カ国の通信ネットワークに当社の製品が使われています。

もう一つは、技術的にもリーダー的な立場にいます。他社よりもずっと多い3万件近い特許やIPR(知的財産権)を持っています。また売り上げの15%以上を研究開発に費やし、16カ国に2万2000人ものエンジニアが研究開発に従事しています。さらにサービス分野でもリーダーで、最も複雑なサービスまで手掛けています。ネットワークは複雑化しているからです。

Q5:エリクソン・ジャパンは日本の通信機器市場に期待していますが、同様な製品を持つNECや富士通と比べて何が強みですか。
A5:日本の通信オペレータは世界のオペレータから見てずいぶん違った仕様を持っています。このために日本のオペレータに製品やサービスを納入する日本の通信機器メーカーは、特殊なシステムに向けて競争して開発しています。このためコストは高くつきます。日本のオペレータや通信機器メーカーは、価格を下げるためにもっとグローバル市場へ行かなければなりません。このことは一朝一夕にはできませんが、着実にグローバル市場への参入を進めていくことが重要なのです。もう一つ重要なことは、世界の大きな流れ(メガトレンド)についていくことです。

エリクソンとしては、(世界に売れる製品を持っていますが)、日本市場ではある程度、カスタマイズします。日本特有のカスタマイズと、世界中で売るための標準化・共通化とのバランスが大事なのです。

Q6:日本のメーカーは日本市場を悲観的に見る傾向があります。エリクソンは日本市場に期待しています。この温度差は一体何だと思いますか。
A6:同じような質問を前にも受けたことがあります。日本の経済が良くないためにみんな暗く見ているのではないでしょうか。しかし、日本の成長は極めて力強いと思います。基調講演でもお話ししましたが、日本ではスマートフォンが導入されてから通信市場が急速に変わりスマートフォンは進化し続けています。iPhoneは10年前には存在しませんでした。

日本の将来を考えてみますと、新しいアイデアは日本から出ています。iモードやLTEでは先進国です。もう一つ伸びる傾向は中小企業がみんなモバイルオフィスソリューションに注目していることです。オフィス業務をポケットに入れよう、ということですが、ここにも成長できる分野があります。

(2012/06/04)

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