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グローバル企業とだけではなく、日本のEIDECともコラボレーションしたい

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Luc van den Hove氏、ベルギーIMEC CEO

ベルギーのルーベンを本拠とするIMECが今年もメディアを集めたITF(IMEC Technology Forum)を開催した。その開催期間中、セミコンポータルはCEOのLuc van den Hove氏にインタビューし、IMECの目指すもの、これからの成長のカギを握るもの、それに向けた仕組み作り、などについて聞いた。

図1 IMEC CEOのLuc van den Hove氏

ベルギーIMECのCEO Luc van den Hove氏


Q(セミコンポータル編集長):IMECは昨年、一昨年あたりから半導体プロセスよりも設計や応用に力を入れているように見えます。今年、来年の重点テーマは何ですか。
A(CEO Luc van den Hove氏):IMECは大きな研究開発会社であり、広い分野を扱いますが、特にCMOS集積回路の先端技術開発が最も大きな部分を占めます。次世代リソグラフィや、FINFETのような新トランジスタの概念、新材料、さらに次の超高移動度デバイス(III-V化合物半導体利用)、3次元ICなどを進めています。300mmウェーハ工場やその先の450mmについても研究しています。
応用としては、ワイヤレス移動体通信や、バイオメディアカル分野、画像・映像処理、エネルギーなどの分野があります。こういった応用分野に対して、技術のコアとなる半導体技術を構築して、新しい成長分野を切り開くのです。半導体を核にすることが基本戦略であり、この戦略はこれからも変わりません。

Q:2009年のリーマンショックは半導体産業に大きな影響を及ぼしました。IMECの業績は2008年、2009年とほとんどフラットになっておりますが、この経済危機をどう乗り切りましたか。
A:2009年はとても苦しかったのですが、2008年とほぼ同じレベルの売上(予算)を計上しました。多くのメーカーは20%〜30%も下がりましたので、売上をキープすることは良い方でした。特に、IMECの売り上げの大きな部分を占めていたドイツのキモンダ社が倒産したことはつらかったです。この欧州唯一のDRAMメーカーによる落ち込みを補うために私たちは、ソーラー技術のパートナーを求め、さらにファブレス半導体企業の参加によってこの落ち込みをカバーしました。

Q:IMECのような半導体コンソーシアムはフランスのLETIやドイツのフラウンホッファ研究所でも見られますが、IMECはそれらとどう違いますか?
A:IMECは真にインターナショナルなR&Dコンソーシアム機関です。LETIやフラウンホッファとは違い、日本や韓国、台湾、米国のトップメーカーと一緒にコラボレーションしています。半導体産業はグローバルなパートナーシップから成り立っており、世界中の企業が手を取り合って難しい大きな問題に取り組んでいます。LETIやフラウンホッファはそれぞれ各国の企業に注力しています。
グローバルなコラボレーションは特に重要ですが、その理由はこれによって新しいアイデアを生み出すことができるからです。

Q:グローバルなコラボレーションは米国のSEMATECHでも同じです。SEMATECHと比べてその違いは何ですか。
A:他のコンソーシアムのことを完全に理解している訳ではありませんが、SEMATECHは半導体技術のインフラ系にフォーカスしています。IMECは半導体メーカーの現場に沿ってコンセンサスを得たテーマにフォーカスし、材料、プロセス、デバイスにも幅広く言及しています。
さらにルーベン大学やルーベンカトリック教大学など地元の大学だけではなく実に多くのグローバルな大学ともコラボレーションをしており、学生を受け入れています。
また、これからは複数の研究開発コンソーシアムとのコラボレーションも重要です。研究開発にはセカンドオピニオンが大切だからです。

Q:グローバルなコラボレーションで大切なことは何ですか。
A:IMECが大切にしていることは広いパートナーシップのネットワークと信用(trust)です。IMECは日本にもフォーカスしてきました。日本企業とは長年に渡り良好なネットワークを構築してきました。パナソニックやエルピーダメモリ、ルネサスエレクトロニクス、ソニー、東芝、富士通などの半導体デバイスメーカーに加え、装置メーカーの東京エレクトロンや、材料メーカーのJSR、東京応化工業、信越化学工業などとパートナーシップを築いてきました。欧州と日本の文化は近いものがあり、信用を第一にします。

Q:以前、日本の産業技術総合研究所やコンソーシアムとコラボレーションをする意志は大いにあると言われましたが、その後はいかがでしょうか。
A:IMECはいつもパートナーシップを求めてコラボレーションのディスカッションをしています。EUVの新しい日本のコンソーシアムであるEIDEC(EUVL Infrastructure Development Center)ともミーティングを数回持ち始めました。EUVを開発する上で、いろいろなコラボレーションが必要なのです。IMECはASMLと協力してスキャナーリソグラフィ技術にフォーカスしてきました。その光源に関して日本のウシオ電機と良好な関係を結んでいます。日本のEIDECはマスクインスペクションやマスクリペア技術が得意です。スキャナー技術とマスク技術は相補的な関係にありますので、両社が同期をとって開発することが実用化を早めます。私は、EIDECとの正式なコラボレーションを望んでいます。

Q:今回、IMECはASMLと長期契約を交わしましたが、これまでの提携とは何が違うのでしょうか。
A:今回はこれから5年間一緒にEUVを開発していくための更新契約と考えてよろしいものです。次世代のスキャナーツールを開発したり、そのメトロロジーを一緒に開発したりしていきます。

Q:最後に、最近の欧州危機について景気動向を危ぶむ声があります。経済危機をどのように見ていますか。
A:マクロ経済の難しい問題ですね。欧州は確かに財政危機脱出に向けてもがき苦しんでいますが、米国や日本でも同じような問題を抱えています。みんなが危機に直面しているわけです。しかし、将来の成長分野には投資を続けるというIMECの方針は変わりません。

(2010/10/17)

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