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SEMATECHのメンバーを増やし半導体メーカーとサプライヤとの対話を強めたい

Daniel Armbrust氏、CEO & President、SEMATECH

米国の半導体コンソシアムのSEMATECHのトップが交替した。2009年11月12日に就任したDaniel Armbrust氏は20年以上、IBM在籍していた。製造部門、クライアント関係部門、イーストフィッシュキル工場では4年間300mmウェーハラインの開発にも従事してきた。新CEOとしてSEMATECHをどういう方向へ持っていくか、インタビューした。

SEMATECH CEOのDaniel Armbrust氏

SEMATECH CEOのDaniel Armbrust氏


Q(セミコンポータル編集長 津田建二):まずはCEO就任おめでとうございます。セマテックの目標は何ですか。
A(SEMATECHのCEO Daniel Armbrust氏):セマテックは20年以上に渡って半導体業界に貢献してきました。最初の目標は、米国の産業界の競争力を付けることでした。次にインターナショナルセマテックとして、外国企業も参加するようにしました。そして今、EUV(extreme ultraviolet)など将来の重要なリソグラフィ計画や、ISMI(International SEMATECH Manufacturing Initiative)、TSV(through silicon via)プロジェクトなどを手掛けています。
 そして私の目標は、セマテックでのバリューを半導体業界へもたらすことであり、メンバーも増やしていきたいと思っています。半導体メーカーだけではなく、装置メーカーなどへと拡大していきたいと思います。

Q:この前ニュースリリースで発表された東京エレクトロンの参加もその一環ですか。
A:その通りです。チップメーカーと装置メーカーとの密接な関係は重要です。セマテックは中立の立場ですので、両者が対話しやすい環境を作っています。今回、東京エレクトロンが、セマテックとの関係を拡大してくれたことはうれしく思います。
 東京エレクトロンは、300mmウェーハ技術を積極的に進めているアルバニーに大きな投資をしてくれました。

Q: 450mmプロセスの開発についてアルバニーでは独自に何か行っていますか。
A:アルバニーではISMIの中で仕事を進めています。450mmにつなげるためにまず300mmの標準化を進め、300mmプロセスをさらに発展させようとしています。今の目標は完全な装置セットを開発する作業計画を立て、これを450mmに使えるかどうかのフィージビリティをデモしようと考えています。さらに、今は450mmプロジェクトには政府からの資金はありませんが、政府にも援助してもらいメンバーカンパニーのやる気を加速させたいと思います。

Q:セマテック自身は政府の援助はありますか。
A:連邦政府(国家)からの援助はありませんが、ニューヨーク州政府から出資してもらっています。今アルバニーの開発状況はフェーズIが終わり、フェーズIIに入っています。フェーズIIは2012年に終わる5カ年計画です。

Q:2012年と言えばEUVリソグラフィの導入時期ではありませんか。
A:そうです。450mmウェーハのパイロットラインの完成とEUVリソグラフィの導入とは同じ時期になります。オランダのASMLとお話していると、プリプロダクションツールが入手可能になるのが2012年だと発表しています。その頃になると、生産ラインはがらりと変わるでしょう。
 そのためにセマテックはリソグラフィプロセスのインフラを準備します。露光装置だけではなく、マスクとマスク検査装置も改良しなければなりません。このためにはチップメーカーとマスクメーカー、ツールメーカーが一緒になったコンソシアム的なアプローチが必要です。マスクはこれまでとは全く異なり、検査装置の光源にもEUVが必要となります。2010年の第1四半期に検査装置を作ることで各社の合意を得たいと思います。
 450mmの市場はさほど大きくありませんが、まだ3社しかチップメーカーはいません。リソインフラを作るだけでも数百億ドルかかるかもしれません。リスクの大きなプロジェクトですので、マスク/インスペクション/リソグラフィというコンソシアム的なアプローチは欠かせません。私たちはグローバルな参加に期待しており、日本からも参加企業が増えることを期待しています。むしろこのために日本に来ました。
 フォトレジストに関しては楽観視しています。レジストの問題は二つあります。一つはもっと感度を上げ生産性を上げること、もう一つはパターンの切れLER(line edge roughness)を改善することです。

Q:EUVの導入は22nmから使われると思いますが。
A:最初の導入はロジック用に22nmから入ると思います。大手デバイスメーカーはすでにテスト構造を作っています。驚いたことにメモリーとロジックがほぼ同時に出てくるということです。スキャナーやマスクなどのインフラが2012年に出来上がる予定のためでしょうが、結局コストとのトレードオフの問題に帰結すると思います。コストは常に意識します。

Q:450mmは300mmとはどう違いますか。
A:450mmと300mmは似ているところと違うところがあります。似ているところは、標準化と自動化でしょう。450mmの戦略は300mmとの違いをできるだけ少なくすることでしょう。このために300mmの問題を今のうちに解決しておくことが重要です。450mmのデザインの目標は300mmをベースに考えていきます。450mmの問題は結局、技術的というよりは経済的な問題でしょう。経済的な問題はセマテックでの研究開発が投資に見合うかどうかでしょう。セマテックの役割は正しいタイミングで産業界へ情報を提供することです。
 450mmでは半導体産業全体がシフトしないことです。コストを考えるとリスクが大きく、ビジネスモデルが難しいと思います。

A (SEMATECH vice president のScott Kramer氏):一言付け加えさせていただくと、ISMIが300mmライン構築で学んだことですが、4年前にI300Iコンソシアムでは300mmウェーハに関する古い情報を一生懸命研究しました。この結果、あらゆる重要な決定が今回の方法とは全く違うやり方でなされていました。だから300mmで学んだことですが、今回の450mmでは最初から標準化することに取り組みました。そのためにITB(相互運用性のあるテストベンチ)を作り、標準化のためのデータを収集することを重視しました。これによって自動化システムを評価できます。例えば、FOUPに入れるウェーハ間のピッチを8〜10mmで検討していましたが、結局デバイス製造の立場から12mmピッチが最も良いことがわかりました。


Scott Kramer氏は右側

Scott Kramer氏は右側


ISMIはこれからもデバイスメーカーと一緒に議論しながらデータを調べ、300mmから450mmへスムーズに移行できるようにリソースをセーブしていきたいと思います。
ISMIは製造装置開発に多数のサプライヤと将来の装置についても検討しています。テストウェーハを作るための装置であり量産用の装置ではありません。ISMIは装置だけではなくウェーハキャリヤや搬送ロボットなど多くのサプライヤにも協力してもらい、半導体以外の産業からもソリューションを出していただけるところにリソースを割くつもりです。
ISMIメンバー3社の半導体メーカーはテストの指標や性能指標を開発し、装置メーカーなどのサプライヤと対話しながら装置開発を詰めていきたいと思います。半導体メーカーとサプライヤとの対話が何よりも重要です。これまでもサプライヤとの対話の中からISMIはいろいろなことを学びました。これからも対話を続けていきたいと思います。そのためにも国境を越えてグローバルな協力が欠かせません。

(2009/12/10)
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