セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

AMATマイケル・スプリンター氏が語る太陽電池のリーダー日本市場

|

Michael Splinter氏、米Applied Materials社、CEO

「昨今の不況にもかかわらず、日本は技術という点で素晴らしい時期を迎え特に、太陽電池分野で再びトップに立てる可能性を秘めた国である」と、米アプライドマテリアルズ社CEOのマイケル・スプリンター(Michael Splinter)氏は6月2日に東京で開かれた記者懇談会の席において日本への期待を熱く語った。30年前に京セラ、カネカ、シャープなどのメーカーが太陽電池市場を形成したのは先見性が高いと褒めたたえた。

米Applied Materials社CEO Michael Splinter氏


アプライドマテリアルズは、1970年という半導体の黎明期に半導体製造装置の日本法人を設立、以来40年近くに渡り日本に地歩を築いてきた。当時の半導体メーカーは製造装置を自社開発するところが多かった。アプライドはそれを市販の装置として開発、半導体メーカーに販売するという新しいビジネスモデルを築き上げた。1990年代中ごろまでメモリー技術が半導体プロセス技術をけん引してきたが、微細化プロセス技術による半導体チップの差別化要因は少なくなってきた。このため、微細化一辺倒の半導体製造技術から製造サービスや、中古半導体製造装置販売、液晶パネル製造装置販売など新しいビジネスモデルや新しい分野を追求してきた。最近はもっぱら太陽電池製造装置へ力を入れている。

一方、太陽電池といえば日本がリーダー。1970年代の第一次石油危機に端を発して石油エネルギーの枯渇が叫ばれ、代替エネルギーを開発しようという声は日本で特に強かった。第二次世界大戦のきっかけともなった石油ルートの喪失に関しては外国よりも日本は敏感で、1970年代終わりには代替エネルギーとして風力、太陽、地熱、潮力とさまざまなエネルギー源を開発するとしながらも、太陽電池に力を入れた。1980年ごろから国家プロジェクトとしてアモーファスシリコン太陽電池プロジェクトが発足した。プロジェクトが終了し1990年代中ごろには通商産業省(現在の経済産業省)が音頭を取り、家庭用太陽電池パネル購入者に補助金を与え、かつ家庭で発電した電力を電力会社が買い取るという世界で初めての画期的なビジネスモデルを作り上げた。

この仕組みを数年前にドイツやスペインなどが導入し、太陽電池の普及を促進させてきた。日本は時期を同じくして補助金を中止した途端、太陽電池パネル市場が年率-20%で縮小してきた。太陽電池市場はまだ補助金を取り去る時期ではなかった。今年から補助金を復活させ、折からの環境ブームも併せ、太陽電池のブームが日本で再びやってきた。これをアプライドが見逃すはずはない。

スプリンターCEOは、現在の40万世帯から2030年には1400万世帯普及させるという日本の政府目標についても言及した。さらに日本を含めアジアでの電力消費は2030年に2倍、CO2の排出も2倍になるとして、太陽電池や風力発電をはじめとする代替エネルギーが必須になることを強調した。世界全体での代替エネルギーは電力全体のまだ2%にすぎず、化石燃料が主流だが、長期的には化石燃料は値上がりするとみている。温暖化という気候変化がはっきり見えたことによるCO2削減の必要性、さらに石油掘削コストの上昇などを挙げた。代替エネルギーとして、クリーン、割安コスト、セキュアという三つの点で太陽電池を後押しする。日本に対してはエネルギーの輸入国から輸出国への変換できるチャンスだ、という。

さらに同氏は最近オバマ大統領とも対話をし、太陽エネルギーの導入を説いたとして、世界と協調すべき京都議定書への復活、CO2削減目標などへのコミットについて説明したとしている。政府の役割は、メガWからギガWへの太陽光発電能力の増強、税制優遇、ある部分での規制強化、グリッド分散の必要、そしてクリーンエネルギーバンクの創設などを提案した。

日本は、省エネへの早くからの取り組み、地熱発電や風力発電、バイオマスなども含めた再生可能エネルギーに力を注いできた実績を評価し、世界的な難問をイノベーションで解決できる国だと持ち上げた。さらに、「半導体プロセス技術での豊富な経験を太陽電池ビジネスでは生かせる。シリコンとプロセスが共通でとても似ている。特に電子を効率的に動かすという技術は同じだ」としている。半導体チップと同様なラーニングカーブも太陽電池は持ち合わせているため作れば作るほど安くなる。「年率-20%/Wのコスト削減のペースで進めば太陽電池は半導体のラーニングカーブをキャッチアップできる」としている。
「遠い将来、今日が太陽電池史上、ターニングポイントになっているかもしれない」とまとめた。


(2009/06/03 セミコンポータル編集室)

月別アーカイブ