福島で開催されたクリーンエネルギーの集まりRD20 2023、次はインドのデリー
G20各国の主要研究所がクリーンエネルギーの実現に向けて一堂に会するRD20が10月4‐5日、福島県郡山市で開催された(図1)。リーダーズセッションでは、ノーベル化学賞受賞者の吉野彰氏によるET Revolutionと題した基調講演から始まり、これまでの各国の研究所での活動報告ではなくファンディングの組織が基調講演を行い、2030年や2050年のカーボンニュートラルに向けて社会実装を意識し始めた。
図1 10月5日郡山市で開催されたRD20のリーダーズセッション
吉野氏はRD20を主宰する産業技術総合研究所のGZR(ゼロエミッション国際共同研究センター)のセンター長である。リチウムイオン電池の発明によってサステナブル社会の実現に貢献できるということがノーベル賞授賞理由の一つであり、クリーンエネルギー社会の実現は同氏の想いでもある。吉野氏は、ETをEnvironment & Energy Technologiesと捉え、今起きているのはET Revolutionだと語った。再生可能エネルギーの拡大には蓄電池が必須であり、普及に向けて投資が必須だと強調する。
投資の役割を担うファンディング組織として、Mission Innovation、H2Global、そして日本のNEDOが残り3件の基調講演を行った。Mission InnovationのEleanor Webster氏は英国からのビデオ出演、H2GlobalはドイツからMarkus Exenberger氏とTimo Bollerhey氏が福島で講演し、水素のようなクリーン技術の市場をタイムリーに効率よく立ち上げる狙いであることを訴求した。日本のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)からは飯村亜紀子氏が2023年度の予算では11億ドルを確保し、100プロジェクトに支給すると述べている。ファンディング組織も国際協力の仕組みができつつあると見る向きがあった。
基調講演の後は、フランスの研究所CEA-LitenのFlorence Lefebvre-Joul氏が7月2日から7日に渡る6日間、フランスのグルノーブル近郊で開催された、初めてのRD20 サマースクールについて報告した。これは若手の研究者を中心にエネルギーシステムの脱炭素化をテーマにして、世界中の若手研究者の交流の場でもある。第1回の今回は5大陸、16ヵ国から65人の研究者が集まり議論した。議論では、三つのテーマに重点が置かれた。一つは廃棄物(Waste)を分子や何かの製品に変換するような技術の開発である。もう一つは教育をもっと強化することで、エネルギーやサステナビリティのリテラシーをもっと上げよう、というテーマ。そしてポリシーの観点からはもっと透明にして、調和のとれた指標を作ろう、ということだった。
午後の後半は、4日に行われたテクニカルセッションのレビュー報告やLCA(ライフサイクル評価)水素のタスクフォースと、PV(太陽電池)キャラクタリゼーション(特性評価)のタスクフォース、ギガトン水素ワークショップの報告があった。例えば、PV評価のタスクフォースでは、PVの特性が各国の研究所で異なるような場合に研究所同士のコラボレーションを強化すべきだろうという意見が出て、研究所間のデータの比較を行い、参加する研究所を増やそうという意見もあった。
最後のラウンドテーブルディスカッションでは米NREL(国立再生可能エネルギー研究所)のDirectorであるMartin Keller氏がチェアとなって、2024年のサマースクールをインドネシアで開催することが告げられた。昨年、1年おきに日本とその他の国でのRD20の開催を交互に行おうという提案があったが、24年のRD20はインドのデリーで開催することが決まった。Keller氏は「25年は日本開催だから、26年は米国で開催したい。世界の研究者たちがみんな一緒に動いていることがとても素晴らしい。これからも続けよう」と結んだ。