RD20、国際協力でクリーンエネルギー変換実務へ動き出す、半導体の新市場に
脱炭素や再生可能エネルギーなど地球温暖化を食い止めるためのクリーンエネルギー変換のテクノロジーに関する国際会議RD20が先週、都内で開催された。これまでの学術的な各国の会議報告に加え、国際アドバイザリ委員会を設置し、実務フェーズに入った。いくつか決定したことを報告する。
図1 RD20のリーダーズセッションに出席した主要国メンバーたち オンラインでの参加者も多い
RD20は日本が提案したクリーンエネルギー変換を進めるテクノロジーを開発、促進するための国際会議であり、2019年のG20で当時の安倍首相が提案・発表した。しかし、これまでのRD20(参考資料1〜7)は、どちらかといえば学術的な会議の様相を示す、年1回のサロン的な集まりだった。今回、RD20はクリーンエネルギー変換を実現させるための実務的な活動を行うことで合意した。
クリーンエネルギーへの転換は、そう簡単に実現できるものではない。コストがかかりすぎる上にそれに見合ったエネルギーを確保できる見通しもない。だが、地球温暖化は世界各地での干ばつや、洪水、森林火災などの災害をもたらしてきた。つまり、世界で起きている問題を解決するため、世界中が協力し合うことで解を見つけることができるようになる。
今回、国際アドバイザリ委員会を設置したことで、もっと具体的な活動委員会とワーキンググループの設置を決めた。しかもそれらの会合を、これまでの1回ではなく年に数回、例えば2ヵ月に1回など、頻度を上げ各国の認識を共通化する。
テーマをあまり限定せず広く集めるが、活動委員会は優先度をつけ定期的に話し合う。さらに若い研究者同士が集まり議論できるようにするため、サマースクールを毎年開催することも決まった。例えば、G20の各研究所から、学生・院生を60名程度募り参加させる。そのための参加登録のプラットフォームを2023年1月までに作成する。このサマースクールには各研究所の幹部も参加し、若い研究者と一緒に議論する。また、サマースクールで育った「卒業生」が将来、クリーンエネルギー転換技術を世界中で共有し広げていくという期待もある。来年はフランスのグルノーブルで開催し、24年にはインドネシアが開催候補国として手を挙げている。
クリーンエネルギーには、これまで参考資料1〜7で報じてきたように、ソーラーや風力から、水素などのクリーンエネルギーだけではなく、発生したCO2を利用する人工光合成で水素や酸素を出したり、CO2を吸収して閉じ込める材料を開発したりするカーボンマネジメントの開発も行う。
技術的には例えば、風力発電所のタービンの劣化状態をLiDAR(Light Detection and Ranging)で見出すことが話題になった。風向きや風速をLiDARで測定管理し、ブレードの交換時期を見積もったり、ブレードの向きを変えたりする。LiDAR利用でブレードを向ける方向を最適にし、電力効率を3〜8%上げたという報告がテクニカルセッションであった。今後スキャニングLiDARで、風速・風向の精度を上げようという提案もあった。
また、風力発電では洋上発電が有望視されており、例えば南アフリカ共和国ではケープタウンを中心に海岸線がぐるりとあるため、大規模な風力発電所が設置できるとし、それらをつないでGWクラスの風力発電を進めている。その時の送電には直流送電が20km以上を送るなら、ロスが少ないため初期費用を回収できるという見方があった。直流送電にせよ、LiDARにせよ、配送電ネットワークにはパワー半導体をはじめとするさまざまな半導体なしでは実現できないため、将来のクリーンエネルギー転換は新たな半導体市場を生み出すことになる。
参考資料
1. 「今年のRD20、『国際連携の具体的テーマを決めたい』」、セミコンポータル (2022/06/24)
2. 「RD20:会議から一歩進んでイニシアティブへ〜経済産業省」、セミコンポータル (2022/08/24)
3. 「RD20:水素の影響を共通評価、国際協力へのカギとなる〜仏CEA-Liten」、セミコンポータル (2022/08/30)
4. 「RD20:バイオ燃料、バイオ水素で環境対応していくインド〜TERI」、セミコンポータル (2022/09/09)
5. 「RD20:水素推進のための規制作りとLCA分析が重要〜Fraunhofer ISE」、セミコンポータル (2022/9/15)
6. 「RD20:運営と脱炭素研究を手掛ける〜ゼロエミッション国際共同研究センター」、セミコンポータル (2022/10/03)
7. 「RD:20日本とのコラボで資源大国の価値を高めるオーストラリア」、セミコンポータル (2022/10/04)