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ソフトウエア無線を支える小型・省電力の広帯域RF IC

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Analog Devicesが周波数70MHzから6GHzまでカバーできる広帯域の高周波(RF)チューナ用ICを開発した。ベースバンドモデムでのソフトウエア無線(SDR: software defined radio)をサポートするため、この周波数内のさまざまな異なる周波数帯域の無線通信機器に1個のRFチューナで対応できるようにした。同社の狙い、システムを紹介する。(セミコンポータル編集室)

著者:Duncan Bosworth, Segment Marketing Engineer, Aerospace and Defense Segment, Analog Devices, Inc.

図1 Analog Devicesの2×2チャンネル構成の広帯域受信チューナAD9361 出典:Analog Devices

図1 Analog Devicesの2×2チャンネル構成の広帯域受信チューナAD9361 出典:Analog Devices


この10 × 10 mm チップスケールデバイス(図1)は、70 MHz〜6 GHz に対応したシグナルチェーンの構築に必要な機能や性能が得られる。無線機に必要な周波数帯域は、200 kHz〜56 MHz の範囲で調整できる。MIMOを意識した、この2 × 2チャンネル構成の直接変換ICを使えば、AFE全体が比較的簡単な単一回路となる。LVDS/CMOS 経由でホストプロセッサに接続し、高速で簡単に実現できる。このICには、12ビットのA-DコンバータとD-Aコンバータ、1/N周波数シンセサイザ、デジタル/アナログ・フィルタ、AGC(自動利得制御)、送信電力監視、直交補正などの重要な機能が搭載されている。

このような高集積化とともに、RF、アナログ、ミックスドシグナル性能も優れている。例えば、受信部のノイズ指数は2.5 dB未満、送信部のEVM(エラーベクトル振幅)は-40 dB以下、ノイズフロアは-157 dBm/Hzを下回る。送信パスと受信パスにおける局部発振器は2.5 Hzごとに細かく周波数を設定でき、正確にチューニングできる。ICに多くの機能を集積しているにもかかわらず、消費電力は低く1 W程度しかない。

システム設計も提供
柔軟性の高い広帯域SDRなどの複雑な設計には、アルゴリズムの開発やトレードオフと共に大変な回路設計作業が必要になる。このため、AD9361にはXilinx のFPGAを使って最適化されたリファレンス設計ボードを付けている。Analog DevicesのAD-FMCOMMS2-EBZ FMCボード(FPGAメザニンカード:図2)は、1個のFMCコネクタでXilinxホストボードに接続でき、2 × 2チャンネル構成のAD9361に対応した帯域幅と電力が得られる。このボードは、ハードウエアを全く変えずにソフトウエアで完全にカスタマイズできる。さまざまなMIMO構成をとりたい場合には追加オプションがある。


図2 SDRに回路設計を支援するAD9361 FMCボード XilinxのFPGAを使ってSDRを開発、デバッグ、評価、調整できる 出典:Analog Devices

図2 SDRに回路設計を支援するAD9361 FMCボード XilinxのFPGAを使ってSDRを開発、デバッグ、評価、調整できる 出典:Analog Devices


リファレンス設計には、回路図、レイアウト、BOM、HDL、Linuxドライバ、アプリケーションソフトウェア、性能評価や迅速なプロトタイプの作製に必要なすべての重要な要素が含まれている。簡単なレベルのソフトウエアやファームウエアのほかに、ユーザーはSimulink/MATlab サポートを利用して、コードの開発、無線アルゴリズムや性能の調整を行うことができる。

ツールやボードを利用しよう
この小型かつ高性能でフレキシブルなICは多数のディスクリート回路の代わりに使用できるため、ディスクリート設計というものはもう終わりかと思われるかもしれない。しかし、必ずしもそうではない。SDRの全範囲のうちの特定の周波数セグメント、フォーマット、帯域幅に合わせて、ディスクリートAFEをよく考えて設計し、入念にデバッグし、かつ適正にレイアウトすれば、プリント基板の面積が大きくなるという難点はあるにしても、その特定セグメントに関する限り、AD9361 ICより優れたAFEを作製できる可能性はある。

しかし、本当の課題はSDRのAFEにみられる極端に広い周波数帯域であり、そのようなスペクトルに対応したフロントエンドが数多く必要になることである。その一つ一つを大変な手間をかけて設計し、評価すると、最終製品はSWaPの面でかなり劣ったものとなってしまう。したがって、トレードオフを考慮すれば、さまざまな状況で十分なRF性能を発揮し、欠点が格段に少ないAD9361 ICの方が優れているといえるだろう。

このICは入手可能であり、FMCボードやツールもあり、すでに2つのSDR製品に採用されて販売されている。Ettus Research社製の汎用ソフトウエア無線機(USRP)とEpiq Solutions社製のMaveriq™マルチチャンネル再構成可能RFトランシーバである。

アナログ・デバイセズのFMC(メザニンカード)を使ってSDRを設計、開発する場合であれ、市販のSDRをプラットフォームに使用する場合であれ、AD9361をベースとする製品パッケージ/性能であれば、システムエンジニアはスタートから1歩進んでいるといえる。

(2014/10/31)

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