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変わりつつあるSoCの定義

SoCの定義が変わりつつある。これまで言われてきたシステム・オン・チップというあいまいな表現ではなく、ソフトウエア・オン・チップだという考え方が台頭してきている。米国のEDNに載っていた記事の中でテキサス・インスツルメンツ社のエンジニアがそのような表現をとった。

確かに最近は、SoCは単なる部品ではない上、システムという抽象的なものでもない。ソフトウエアをインプリメントされた半導体チップだという気がする。国内外を問わず、いろいろなエンジニアに、SoCはソフトウエア・オン・チップだという意見があるがどう思うか、と尋ねてみるとイエスと答える人がほとんどである。エグザクトリ(まさにそのとおりだ)と答えるエンジニアも多い。

そのような折、EDN誌の7月5日号を読んでいたら、TIの主席フェローであるジーン・フランツ氏へのインタビュー記事が載っていた。半導体メーカーは部品メーカーになるべきか、システムLSIメーカーになるべきか、という問いに対して、TIはシステムを理解しようとしている部品メーカーであり、顧客の望む部品を作るためにシステムを十分に理解する必要がある、と答えている。例えば携帯電話向けDSP製品シリーズであるOMAPやマルチメディア向けDSPのDaVinciを作るためには、LSIだけではなく使いやすく高性能な開発環境や、充実したソフトウエアライブラリ、サポートするパートナー企業のネットワークも提供する必要がある。もはや、半導体部品の定義の中にソフトウエアも含まなければならないという。

ムーアの法則は、ただ単にトランジスタ数の増加が18カ月で2倍になるというだけのルールであり、そのLSIに何が含まれるかは問題にしない。コストを上げずに消費電力を下げながら性能を上げるという最近のSoCを実現するためには、回路のノウハウやシリコンにインプリメントするソフトウエアが価値を与えることになる。となると、ハードウエアでコーディングしたソフトウエアを売る半導体メーカーが強い。

SoCでより微細化が必要になるのは、ソフトウエアに価値がなくなるとき、すなわち十分な数量を量産している時期からだろう。ハードウエアに価値のある量産効果が出ている時期になる。だからTIは先頭に立って32nm移行のプロセス開発をやめたのではないだろうか。

となると、450mmウェーハが必要となるのもハードウエアに価値のあるということになる。もちろん、最初から生産数量が重要なファクターになるメモリーや汎用部品には、微細化技術も450mmウェーハも戦略的に必要となる。

インテル社が450mmに積極的ではないのは、これまでコンピュータ用マイクロプロセッサだけを作ってきた同社が今後もこの製品が成長のエンジンとなり続け、これまでのような40ドルという高額な平均単価を維持できるかどうか、今の段階でははっきりしないからである。SoCや組み込み系チップに参入している同社にとって数量や平均単価40ドルがこれまでどおりに確保できないことが今後もし明確になれば、450mmには消極的でしかも微細化の先頭にも立たないというシナリオさえ、ありうる。


津田建二

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