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ハードとソフト、アナログの三つを理解できなければSoC事業はもう無理

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シリコンバレーで開かれたESC(Embedded Systems Conference)2009をのぞいてみた。今年の展示会もセミナーも規模は小さく、参加者も少ない。組み込みシステムに力を入れているはずのインテルが出ていない。それ以外の大手メーカーのブースも小さい。狭いサンノゼの展示会場が広く感じる。参加者、展示社が少ない最大の理由はもちろん、不況によるものではあるが、広報会社MaestroのBarbara S. Kalkisさんによると、組み込みシステムというものに対する理解が変わってきたことにもよるだろうという。

サンフランシスコの街並み ESC会場はここから1時間

サンフランシスコの街並み ESC会場はここから1時間


これまでは組み込みシステムに必要なソフトウエアの開発ツールやデバッガなどが不足していたため、ソフトウエアに関する展示が多かった。しかし、組み込みシステムは、プロセッサとメモリー周辺回路、インターフェースを基本構成として、コンピュータ以外の応用機器を想定しているため、ソフトウエアだけを扱っていればよいという訳では決してない。ハードウエアも欠かせない。ソフトウエア開発者だけではなくハードウエア開発者も当然関係してくる。

ハードウエアといってもRTL→ネットリスト→GDS II出力というデジタル回路だけではなく、周辺回路やインターフェース、センサーなども組み込み機器には必要で、まさにアナログの世界も重要だ。となると、ハードウエアとソフトウエア、アナログの三つを理解していなければ、組み込みシステムすなわちSoCビジネスはもはや無理ということになる。今回のESCからこのことがはっきりと見えてきた。ハードとソフトの技術者が互いに協力しあって電子機器(組み込み機器)を設計し、さらにその中核をなすSoCチップを設計していかなければ、ユーザーの要求は理解できない、ということになる。

SoCの中のプロセッサコアに組み込むソフトウエアでプログラムのバグを見つける、検証する、というようなツールはもはやニュースにもならない。ごくありふれたものだけに、ソフトウエアの展示が減っているのは事実だ。むしろ、それぞれの用途によって異なる特殊なソフトの展示が多い。それも限られた用途だけに単にブースを見るだけではわからない。アポを入れ、時間をとってもらってブースで話を聞くことで初めてその内容がわかる。ソフトウエアは目に見えないものだけに、ブースで話を聞くしかない。

ではどうすれば、半導体企業を発展させることができるか。要は、ユーザーのところへ行って話を聞き、100%理解できるエンジニアたち(マーケティング)がその会社にいなければダメだということになる。ユーザーの望む電子機器をSoCチップでどこをどのように担当するか、そのために半導体チップのどこをソフトで、どこをハードで行うのかを見極めなければならない。これができるエンジニアは少なくとも10年以上経験し、しかもとびっきり優秀なエンジニアでなければ無理だろう。20年以上ハードもソフトも経験したエンジニアならようやくわかるレベルだろうと思う。

となると、経験豊富なエンジニアが何よりも必要になり、場合によっては60歳の停年を迎えるエンジニアに求める能力になる。一定の年が来たら停年として誰でも彼でも切ってしまうこの制度そのものを考え直す必要があるかもしれない。ハードからソフト、アナログまで理解でき、顧客の元にいっても話し合えるようなエンジニアリングバックグラウンドのある人材を30歳くらいから養成する必要がある。

顧客が嫌がるような性格の人物も困る。当然、要求を100%理解するために相手から情報を引き出す能力も求められる。顧客に愛される人物でなければ無理だろう。誰でも60歳の人なら、それができるという訳ではない。プロアクティブにものを考えられる人材が必要となる。40歳くらいでそれができれば企業としては最高だろう。高給を支払っても十分なお釣りがくる。優秀なマーケティング担当者、シニアエンジニアの養成が急がれる。日本にいなければ、優秀なマーケティング人材のいるどこかの企業から連れてくるか、事業統合してその人材を確保すればいい。

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