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グローバル競争していないビジネスは生き残れない時代に

三菱電機が携帯電話市場から撤退することを決めた。3月8日付けの日本経済新聞に、同社の下村節宏社長とのインタビュー記事が載っていた。その中で、下村社長は「国際競争していない事業は生き残るのが難しい。海外で勝つ力がなければ事業は継続できないのではないか」と語っている。

海外との国際競争で勝つことこそ、生き残る道であるというのは正論だろう。このためには日本国内でも海外企業を締め出すのではなく、むしろ積極的に誘致し日本国内で競争に勝てれば海外でも勝てるはずだと考え、2002年9月に、「海外企業の積極的な誘致がグローバル競争に生き残る道」(http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/OPINION/20021004/1/)と題するブログ(当時は記者の目と呼んでいた)を書いた。

このブログの意見に対して、当時は異端の目で見られた。本当に取材してそう思うのか、という疑いのご意見もいただいた。当時の私は、Nikkei Electronics Asiaというアジア向けの編集者としてアジアのエンジニアの視点で日本を見るという仕事を7〜8年やっていた。アジア特に、韓国、台湾、シンガポール、香港の4タイガーと呼ばれた地域は、外国に対して市場を開いて行こう、海外のチームと組もう、海外の企業に来てもらおう、とオープンな姿勢で急成長を遂げた。こういった地域の企業や研究所をたくさん取材していた。アジア企業の考え方で日本にない考えはずいぶんあり、成長の原点は何かという意識を持って取材してきた。その結果、閉鎖的な国であったマレーシアやインドネシア、ベトナムなどと大きく差がついてしまった。アジアでは、ビジネスに対してオープンな国ほど発展し、閉鎖的な国ほど停滞した。さて、日本はどうかと考えた結果、上のような意見を提案したのである。

三菱電機の下村社長がいみじくも語っていたことはまさにこのことである。日本企業が外へ出て、海外企業と競争するだけではなく、国内、すなわち日本の土俵で海外企業と競争するようになれば日本企業はもっと強くなるはずだ。むしろ、国内で競争するほうが地の利で有利のはずだからこそ、海外企業を積極的に日本へ誘致すべきだと述べた。海外企業に来てもらえれば雇用の機会が生まれる。一石二鳥、三鳥にもなる。

携帯電話市場は今、IT,エレクトロニクス産業でグローバル化が遅れた分野の一つだ。携帯電話メーカーはNTTドコモなどキャリヤの仕様通りにモノを作り納めればよかった。しかし、それだけでは企業は伸ばせない。グローバルには「ものすごくでかい」BRICsやVISTAと呼ばれる市場がある。ここを攻略しない手はない。今まではただ見てるだけだった。

海外へ積極的に出ていくためには、海外製品の仕様をよく研究することが必要だが、自社でやるのではなく、アウトソースするという手もある。自社でやるなら、海外の人を雇うという考え方(サムスンはそのようにしている)に立つ必要があろう。欧州のGSM/GPRS/EDGE規格を踏襲するなら、欧州の携帯電話ビジネス関係者だろうし、W-CDMA以降の仕様なら米国から関係者をリクルーティングすることになる。日本民族だけでやることはもはやできない。

結局、6年前の提言に戻るが、日本市場内部にもグローバル企業を積極的に誘致し、彼らと日本国内で競争していく力をつければ海外への攻略もやりやすくなるはずだ。

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