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理系人口を増やす活発な仕掛けはメーカーから

先週、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン主催のマイコン利用の電子工作コンテストが開かれた。昨年10月にはNECエレクトロニクスも電子工作教室を催した。日本テキサス・インスツルメンツ社は、DSP(デジタル信号処理プロセッサ)の大学教育への組み込みを狙ったDSPS教育者会議を毎年、後援している。主催は「ディジタル信号処理の教育を考える会」でIEEEが共催している。最近、AMDとSpansionが共同で、米国の教育省(DOE)主催の数学と科学のサマーイベントに共催することを表明した。

このような企業と教育との協力関係が最近活発になってきている背景には、エンジニア不足がある。フリースケールやNECエレの電子工作は、マイコンというプログラミングを利用し、何か機械を動かすという理系の楽しみへの誘導や理系人間を育成するという狙いがある。日本TIのDSPの大学教育への取り組みも、数学の工学への応用を促す人材教育的な意味がある。

AMDとSpansionの試みは、小中学校の教師を対象にしたDOE(日本でいう文科省)主催のサマーワークショップを支援する。ここでは数学と科学の教育方法の改善について議論する。AMDやSpansionは議論を聞いて、技術的なソリューションを提供しようと目論む。教師は、さまざまな教育方法で成功した実例を紹介し、他の教師を刺激する。

理系人口の減少は、メーカーのエンジニアの給料が安いからだという単純な理由もあるが、基本的に理科の面白さを子供たちに伝えていないことが根底にあろう。給料だけでは職業を選ばないからだ。

マイコンはプログラミングには最適なチップだし、DSPは級数展開を高速に計算するのに最適なチップである。教育分野とはなじみの深い半導体チップといえる。半導体チップの直接的な売上に貢献することが教育との係わりではない。むしろ長い目で見た、理系教育人口の増加を促すことが狙いだといえる。AMDのGlobal Community Affairs部門ディレクタのAllyson Peermanさんは、「われわれの活動は継続させることで次世代のエンジニアを採用しやすくなる」、といみじくも語る。

国の教育省が主催する22回のサマーセミナーシリーズのうちの一つがテキサス州オースチンでこの夏開催されるわけだが、全国の教師が情報を共有することで問題点や要求事項を理解し、AMDとSpansionは問題解決できそうなテクノロジを提供する。米国の例は日本で実現するのは無理なのだろうか。できれば日本のお役所(文科省)が主催するセミナーに民間の支援を得て開催していただけると、安くかつ有意義なイベントになると思うのだが。

日本TIが毎年後援する、DSPS教育者会議のプログラムをみると、ディジタル信号処理教育の取り組みや教育事例に加え、大学での新技術研究の発表やデモ発表などが発表される。大学が音声や映像か何かを表現したり圧縮するための新しいアルゴリズムを考え出し、DSPで解いてみせればメーカーはその学生をのどから手が出るほど欲しがるだろう。たとえ採用が買い手市場になっても、こういった学生ならいつの時代でも求められる。


津田建二

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