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古い伝統の中から革新的なテクノロジーを取り出す英国

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今回の、英国訪問では、これまで訪問したことのあるロンドン、ケンブリッジに加え、ブリストル、バース、サエンセスタ、スウィンドン郊外の工業団地などを回り、企業、大学、政府関係の話を聞いてきた。日本ではほとんど知られていない企業が多い英国だが、持っているテクノロジーはすごいものが多い。

訪問した街はロンドンと違って静かな地方都市あるいは田舎町である。どの街も古い中世の時代に建てられたような石壁でできた、伝統を感じさせる建物ばかりである。建物が古いからといって、中身まで古いわけではない。フランスなど大陸の国の建物もそうだが、外観は古いが内部は常に最新の家具や壁などのインテリアで飾られていることが多い。

中世どころか、西のバースと東寄りのロンドンを結ぶ間に位置するサエンセスタの街は、2000年前にローマ人が支配しており、その街は城壁に囲まれていたという。当時を物語る直線道路もまだあるという話も聞いた。そういえばお風呂のバスは西の街、バース(Bath)を起源とすると言われている。ここに温泉が湧き出ていて、ローマ人が利用したそうだ。ここのお土産屋ではいうまでもなくお風呂関係のグッズでにぎわっている。

バースの街並みはもちろん2000年前ではないが、中世風の建物が多く、築後100年以上は経っている。ブリストル大学を訪れると、由緒ある建物の内部は近代的なオフィスになっており、機能的である。ケンブリッジ大学となると創立が1209年だから文字通り歴史と共に歩んできた国立大学だといえる。卒業生にアイザック・ニュートンがいる、という資料を見るとニュートン以前の大学であることに改めて気がつく。学生時代、応用物理学を専攻していた筆者は当時あこがれていたキャベンディッシュ研究所を今回遠くから眺め、感激した。

英国は古い伝統を持つ一方で、最先端技術の研究開発では世界のトップをゆく。外観は古いが内部は新しいという英国の建物が英国の魂をよく表していると思う。これからレポートしていく英国の記事は、内部に最も革新的なテクノロジーを持つ企業や産学共同のあり方に関するものである。20年ほど前に始まったサッチャー改革をいまだに続け、新しい成長へと邁進していく英国の姿は実は日本企業にとって千載一遇のチャンスでもある。

全く新しい概念を生み出し、新しいシリコン半導体チップのミドルウエアを開発したり、これまでのコンピュータアーキテクチャを変えたり、通信ならLTE、4G技術、低消費電力のワイヤレス技術、コンピュータならマルチスレッドとマルチコアの併用、ExaByteテクノロジー、半導体ならファブレスで組み込みソフトの開発、ミクストシグナル半導体の設計などへと具体的なビジネスへと変えていく。ここに英国の凄さを見た。ケンブリッジ、ブリストルの大学のパワーを引き出し、上手に活用し、大学・企業とのWin-Win関係を築くのである。

この英国の力を日本企業が利用し、場合によっては買収してしまい、日本企業がもっと多国籍化、グローバル化を推進し、IntelにもTI、サムスンにも負けない企業へ持っていくことは不可能ではない。どうやって自社にそれを組み込むかは各社各様の手法があろう。海外の力を利用することに、企業のみならず、大学、霞が関ももっと積極的になってくれたら、と願う。

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