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企業トップが口にする、今年のテーマは環境

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JEITAと電子回路工業会、SEAJの賀詞交歓会に出席した。いずれの工業会も、また挨拶した経済産業省の方々も、口々に今年のテーマの一つとして、環境・地球温暖化を採り上げている。昨年、ノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元米国副大統領が不都合な真実というタイトルのドキュメンタリ映画を製作、地球温暖化へ警告を発した。米国で太陽電池開発が活発になり、バイオ燃料がすでに実用化されている。世界規模で環境、地球温暖化への関心がいつになく高まっている。

しかし、この正月のテレビ番組でCO2の放出量がまだ少ないことを理由に騒ぎすぎだと述べる評論家や、環境ブームを苦々しく思っている人たちもいたことがわかった。ただ、このような評論家は人と違う意見を述べることで自分を目立たせようとしているため、まともに受け取ることはできない。テレビ局も“ユニーク“に見える意見を取り上げ、特ダネとする傾向が強い(極端に走るとやらせに通じる)。

環境というキーワードは日本だけではなく、世界中で使い始めた言葉である。これまで、米国ブッシュ大統領は父子で石油を消費することを促進してきた。大統領が京都議定書にサインしなかった後に、米国自動車工業会は「サインしなければ燃費改善、排ガス対策などで欧州や日本のメーカーに競争で負けてしまう」と政府に対して警告したが、米国の自動車産業がここまで落ちるとは自動車メーカーさえも思っていなかったかもしれない。米国の自動車メーカーは排ガスや環境規制を設けることで開発目標をクリヤーし、国際競争に勝てると考えていた。それがかなわず、米国で人気の高いトヨタやホンダのハイブリッドカーの独走を許してしまった。環境対策に重きを置かなかったために国際競争力まで落としてしまった。

今年の環境は、空気や水などの汚染は言うまでもないが、CO2の放出を減らすという意味の取り組みが主力になっている。CO2によって地球の温暖化が進んでいるためである。CO2を減らすという言葉は、火力発電による電気量に換算して省電力化するという意味で使っている。原子力はCO2を発生させない。太陽電池、風力など自然エネルギー源ももちろんCO2を発生しない。バイオエタノールやバイオディーゼルといったバイオ燃料も諸外国ではブームだが日本ではそれほどでもない。

電気の無駄遣いは地球環境にやさしくないからエアコンつけない、テレビも見ない、電気もつけない、という人もいるが、人間が快適に過ごすことと、環境負荷をかけることとは対立する軸ではない。人間がほかの動物と決定的に違うことは、知恵を使って生き抜く力を持っていることである。環境負荷を減らしながら、快適に過ごす道を探していくことは両立できる。

かつて三洋電機のリサイクル工場見学に行ったことがあるが、そこの説明員によると冷蔵庫はこの10数年で消費電力が1/10に減ったそうだ。エアコンの消費電力も数分の1に減っている。となると電気製品を買い替えることが、環境負荷と快適生活を両立させることになる。消費者にとってお金はかかるが、環境にやさしい道を歩むことになる。

では、この後はお金をかけずに両立させることに知恵を絞ればよい。人間はこのようにして発展してきた。環境にやさしい生活をしたいからといってランプ生活の原始時代に戻ればよいわけでは決してない。

これからはアル・ゴア氏が言うように、CO2を減らすという意識を持つことが重要で、CO2による地球温暖化の程度がまだ軽いからといって油断していると手遅れになってしまう可能性がある。CO2を減らすための技術開発は、エンジニアに課せられた宿題であり、企業経営者としてもCO2を減らす努力を続けることは企業価値を高めていくことにつながっていく。だから、エレクトロニクス企業の経営者が環境を口にし始めたのである。

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