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人間臭さ、人間の凄さで感動を与えられるか

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ブルース・ウィルス主演の「ダイハード4」を見た。映画は、サイバーテロに対する戦いという設定だ。この中で懐かしの音楽が流れていた。クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの曲である。映画の中で、共演の若い俳優が「カビくさい音楽」という表現で話していたが、私はどうしてもコンピュータ音楽は好きになれない。エレクトーンから始まり、いまやストリングスや管楽器まで表現できるコンピュータ音楽だが、高調波成分というか音質の豊かさ、人間らしさがどうしても伝わってこない。

ブルース・ウィルスに近い歳のせいかもしれないが、このカビ臭い音楽やジャズのようなアコースティックな音が好きである。

実は米国の友人と、音楽談義をしたことがある。もともとイラン系アメリカ人である彼は40才そこそこなのに、アコースティック音楽の大ファンである。クラシックもジャズも根っこは同じ。ダイナミックレンジでいえば弱音から強音まで音階は10オクターブも表現する。この表現手法にはどうしても人間の技が聞き手に伝わるからこそ、そこに人間がいると思ってしまう。MP-3プレイヤーに聞き慣れてしまうと音質オンチになってしまうと彼は言う。再生音域が狭いからだ。

最近のテレビコマーシャルでも、番組中に流れる音楽でも懐かしの音楽が流れるのはなぜだろうか。日産自動車のエルグランドの広告には1960年代に大ヒットしたシャーリー・バッシーの「ゴールドフィンガー」が流れ、「田舎に泊まろう」にはイーグルズの「テイクイットイージー」が流れている。シャーリー・バッシーの美しい声や、カントリーロックのイーグルズのアコースティックサウンドには誰しも魅せられるのではないだろうか。人間臭さがここにはある。人間の凄さがある。自分には演奏できない音楽プロの姿がある。

いい歌がいつの世にも残るのは人々の脳裏に焼きこまれるからだろう。そのことと、アコースティックサウンドが残ることとは同じではないか。人間が演奏しながら自分には手が届かないレベルの質に感動する。

エンジニアの世界もこれに近いのではないだろうか。半導体LSIチップの写真を見ると極めて複雑でまるで東京か大阪のような大都市の地図を数mm角のチップに詰め込んでいるようにも見える。これを作れる人間はやはりすごいと思う。半導体チップの設計図はただでさえ複雑なのに、物理層の配置配線・レイアウトマスクに修正を加えなくては露光通りにパターニングできない。特に90nm以降、OPCという修正を加えるDFMが言われ始めたが、これを成し遂げる人間の姿にはやはり感動する。

プロセスでもこれまでは最悪値で性能や歩留まりを評価していたが、今はそのような余裕はなくなり、余裕を持たせることはかえって無駄、コスト高の要因になる。このため賢い考え方で最適な条件を作り出し低コストと複雑さを最適化する。ここもプロの技といえよう。半導体チップを感動レベル(完動ではなく)に持っていくことがエンジニアのモチベーションを上げることにもつながるのではないだろうか。

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