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使われ方が違ってきた「エコ」という言葉

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最近気になっている言葉に「エコ」がある。Ecologyとは英和辞書では生態系あるいは生態学という訳が付いている。しかし、われわれ日本人がエコという言葉を使うときは、環境にやさしいという意味に使うことが多い。いつの間にか、エコは環境に関する言葉になっている。

SoCやシステムチップの世界では、エコシステムという言葉を話すイギリス人、アメリカ人が多い。ここでの意味は文字通り、バリューチェーンを形成する生態系全体という意味から、全体のシステムそのもののバリューチェーンとか、上流から下流あるいは中央から周辺までシステム全体そのものを指す言葉として使われる。環境にやさしいという意味は、もはやない。

2年前に英国ケンブリッジに本社を置くARM社を取材したときにエコシステムという言葉を初めて聞いた。生態系というより、私には環境にやさしいという意味で理解していたから、初めて聞いたとき意味がよくわからなかったが、聞きなおして意味を教えてもらって初めて生態系というもともとの意味だということがわかった。ARMのビジネスの仕組みをシステマティックにサプライヤからサードパーティ、ユーザーまでも含むチップビジネスの全体を指す言葉だなと理解した。このとき初めて、イギリスではエコシステムを環境とは全く関係のない意味で使っていることを知った。

実は同様の話を昨日のザイリンクスの記者会見でも聞いた。ザイリンクスは独自の32ビットプロセッサコアを開発し、そのソフトウエア開発ツール、デバッガ、さらにはシミュレータなどを一式揃え、このプロセッサIPを使うFPGAのVertexシリーズなどを開発しやすい環境を発表した。この一式揃いはザイリンクスだけではなく、サードパーティもデザインをサポートする。プロセッサIPを含むFPGAチップを開発するための外部の協力とツールを揃えたシステム全体をエコシステムと表現している。

アームは先日のアームデベロッパーズコンファレンスでも、エコシステムを強調しており、この言葉がもはや市民権を持って、一つのコンポーネントを包むすべてのインフラを含むシステムをエコシステムと呼んでいた。環境とは全く関係のない言葉になったエコシステム。使用には気をつけよう。環境にやさしいエコ、エコという表現は外国人にはおそらく通用しないと思う。


津田建二

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