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地震や災害対策もセミコン台湾の話題に

セミコン台湾ではユニークなトピックスがあった。450mmか300mmプライムかという問題はすでにセミコンウェストで議論されたが、セミコン台湾では台湾らしさがでていた。まずは記事に書いたように最先端のICパッケージ技術は台湾らしく、3次元ICパッケージング技術としての次世代SiPの話題がメインだった。

加えて地震に関する話題も多かった。

セミコン台湾が始まる前にマグニチュード6クラスの地震があり、台北でも到着の前日に大きな揺れを感じたという話を聞いた。幸い大きな被害はなかったが、「備えあれば憂いなし」という諺どおり、台湾企業はセカンドソース、危険分散としての考えを持ちながら工場を建設している。TSMCが新竹に最初の大きな工場を持っているものの、昔の都であった台南にも大きな工場を3つ持っている。

工場を分散して持つことは、一つの工場で災害に見舞われた時の代替として機能できるため、OEM顧客のラインが止まる心配は減る。もちろん、冗長構成というほどの余裕はないが、災害時に他の工場を代替できれば顧客のラインを何週間も止めることはない。加えて、電力系統や工場の能力を考えて、一つの敷地に一つの大きなラインでは災害時でも、ライン停止に陥らないように配慮する必要がある。

先日、エルピーダの坂本社長とのインタビューの中で、手持ち資金が豊富な自動車メーカーが災害時の危険を冒してまで、ジャストインタイム方式にこだわるのはなぜだろうか、と議論した。在庫を全く持たないこの方式で、代替えの利かない部品工場が災害に見舞われた時に部品工場へ400名もの人間を部品工場へ送り込み、何とかライン停止期間を最小限にとどめることができたという事件が数ヶ月前の新潟地震であった。しかし、キャッシュにゆとりがあってもこのような危険を冒すのはなぜだろうか、と考えた。キャッシュにゆとりがあれば少しの在庫を持ち、万が一の災害に備えることは経営判断として間違ってはいないと思うのだが。

自動車やデジタル家電のように消費者市場では開発期間の短縮とコストダウンは常に要求されることだが、相反することでもある。ただし、企業のキャッシュと在庫(ロスとして計上されるものではあるが)をにらみ、市場への投入遅れやライン停止というロスを考えると、危険分散と少しの在庫を持つことは経営戦略に取り入れることではないか。

地震の多い台湾では、やはり地震対策、それも耐震構造ではなく、地震の揺れを減衰させる免震構造を工場に売り込む企業もセミコンで出ていた。新潟地震では幸いにも半導体工場の被害はなかったが、地震による被害の削減を狙った対策もこれからの半導体経営に必要になろう。


津田建二

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