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日本で得られる米国情報と現地で得られる情報との大きな温度差

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3月末〜4月はじめにかけて米国サンフランシスコに滞在していた。日本から「『GMが破綻するかも!?』。世紀の瞬間に立ち会えそうですね!貴重な体験。報道すごそうですね。」というメールをいただいた。しかし、米国ではテレビをみても新聞を見てもGMが破たんするかも、というニュースは見られない。あれ?見逃したかな?と思い、テレビは欠かさず見るようにしていた。PCで仕事している時でもテレビは消さなかった。USA TodayもNY Timesも集めた。しかし、ない。

米国サンフランシスコ


一体これは?日本での報道と米国での報道との温度差があるのではないか、と考えた。米国におけるテレビのニュースは連日、レッドリバーバレーでの洪水に関するニュースだ。ミネソタ州はまだ雪深い。この寒い場所で川が氾濫し、たくさんの家が床上浸水している。周りには雪。寒々とした中での救出活動。雪が舞う中での水浸しになっているアメリカの人たち。見ているだけでも凍えそうな風景を連日報道している。ミネソタは平原が多く、レッドリバーバレーとはいっても谷ではなくほとんど平らだ。だからいったん川が氾濫すると水が引けにくい。凍える人たちの気の毒さが伝わってくる。

米国ではGMが破たんする、というトーンではない。日本の新聞報道は日本の人たち、企業にとってどれほど重要かという基準で記事を決める。ミネソタ州の洪水など日本の人たちには関心ないのかもしれないが、同じ地球人として見ていてとても胸が痛んだ。日本人にとってはGMが破たんするとGMに納めていた部品メーカーも痛手を被り、現地生産しているトヨタ、日産、ホンダが部品調達で困るという発想からくる。

だから、GMのニュースを過剰なまでに採りあげる。しかし、あまりにも過剰反応し過ぎて事実とは違う。それほどまでの反応は見られない。GM倒産の影響は米国の方が日本よりもはるかに大きいはずなのに、さほど報道されていないのである。北朝鮮のミサイル打ち上げに関しても同様だ。それほど騒いでいない。むしろ日本は神経質になりすぎているという報道があるほどだ。日本に限らずメディアの在り方として、実感と違いすぎるのはどうかと思う。

米国に出張で来ているときも日米の情報の違いを最も実感したのは、イラク戦争を始めるときだ。当時ブッシュ大統領がフセイン元イラク大統領に対して「24時間以内にイラクから出ていかなければ攻撃を始める」と開戦宣言をしたときのこと。ブッシュ大統領の開戦宣言という歴史的な場面に遭遇した。サンフランシスコヒルトンのコーヒーショップで人を待っていた時にこのテレビ放送を見た。

イラク戦争の開戦の時は鮮明に記憶している。当時は欧州ではイラク戦争に賛成するのは英国のみ。フランス、ドイツは米国を激しく非難し、戦争に反対した。大量破壊兵器が見つからなかったからだ。

しかし米国にいると雰囲気は全く違う。最も違和感を覚えたのはテレビ放送だ。CNNを見てもABC、CBS、Foxテレビ、どのチャンネルを見ても、キャスターがコメンテータに同じ質問をしていた。「もしニューヨーク上空からウィルスのような生物化学兵器をイラクが撒き散らしたらあなたはどうする?」。当時、米国で防毒マスクが売り切れというニュースを日本にいた時に見たことがある。何で?、と疑問に思っていたが、テレビをみてその理由がわかった。ブッシュ政権がメディアを巻き込み、イラクは生物化学兵器を持っているから、今のうちに攻撃しようというイメージを米国民にたたきこんでいたのである。ブッシュ政権によるメディア操作だった。だから、イラクを攻撃することに反対する意見は米国の世論に少なかった。実際にイラク戦争が終わり、ほとぼりが冷めたころ、大量殺りく兵器は出てこなかった。

どうも、米国と日本での報道に差があることはメディアの操作が逆に今回、日本の方で行われているような気がしてならない。米国では深刻なはずのGM破綻に関するニュースはテレビや新聞ではさほど採り上げない。やはり日本は必要以上に不況や不安感をあおっているとしか考えられない。ということは、われわれはこの不況を自分の眼でいろいろな人の考えを聞き、確かめなければならないということになる。新聞やテレビでの報道と自分の眼との温度差を実感することはぜひとも必要になる。

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