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最近よく言われる「ピンチをチャンスに」の具体例を早く見たい

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中国政府が通信キャリヤに対して、3G携帯電話システムにライセンスを与えたことが明らかになった。中国には携帯電話の通信方式が3つ共存する。一つは中国独自のTD-SCDMA方式と、残り二つは世界標準となっているW-CDMAとCDMA2000 1xEV-DOである。TD-SCDMA方式を採用する通信キャリヤのチャイナモバイル社は参入する企業がまだ7社しかなく少なすぎるので、外国企業の参加を呼び掛けている、という報道をGSMA Mobile Businessニューズレターでみた。

事実であれば、携帯電話機メーカーにとっては大きなビジネスチャンスになる。これまでのところノキア、モトローラ、サムスンを含む7社しかない。W-CDMA方式はNTTやソフトバンクが採用、CDMA2000 1xEV-DO方式はKDDIがauに採用しているが、世界標準方式だとすでに市場が大方決まっているため、外国市場で参入しにくい。W-CDMAやCDMA2000方式は中国以外の携帯電話機メーカーがめっぽう強いが、中国独自方式となると先陣の外国メーカーと少しは差があるものの、W-CDMAやCDMA2000ほどではない。この点、中国独自方式だと、外国メーカーにとってはほぼ同じ土俵に上がることになる。すでに参入しているとはいってもノキアが最初のTD-SCDMA携帯電話を出すのは2009年末を予定している。

携帯電話機において、中国は加入者数で今や世界最大の規模を誇る市場になった。日本の携帯電話機メーカーにとってここに国内以外の大きな市場がこれから出てくる。携帯電話機メーカーだけではない。半導体メーカーにとってもチャイナモバイルと組むことでモデムチップやアプリケーションプロセッサの基本仕様やノウハウをつかむことができる。フラッシュメモリーにとってもチャンスだ。チャイナモバイルはTD-SCDMA技術に今年86億ドルを投入する計画。

最近よく「ピンチをチャンスに」と言われているが、その具体例はまだあまり見たことがない。中国の3G携帯電話市場が始まることはチャンスの一例であろう。ここにどういう形で参加するべきか、考えながら進めていくことで売り上げを伸ばす機会は増えていくはずだ。中国は、13億人の市場にはまだ達していないが、購買能力2億人市場ではある。EUや米国にほぼ匹敵する市場ではある。

一方、米国では原油価格が下落してきたため、太陽電池に関してはややブレーキをかける発言が出ているそうだ。しかし、米Cypress Semiconductor社のCEOであるT.J. Rodgers氏は太陽電池への取り組み後退を一蹴する。太陽電池事業をやめたいというところがあるならすぐにでも買うつもりに見え、これこそ「ピンチをチャンスに」という具体的な姿勢であろう。Cypressは太陽電池の効率が現在21.5%という高さを誇るSunPower社を買収、傘下に収め、22.4%の世界最高効率のシリコン太陽電池を開発中だ。

日本では、ファブレスの雄、ザインエレクトロニクスが台湾のWinbond社の画像処理事業を買収した。社長の飯塚哲哉氏は、世界恐慌に備えるためこれまで内部留保を増やしてきた。もちろん、株主は配当で還元せよと強く迫っていただろうと想像がつく。しかし、今や銀行がお金を貸さない。しかもベンチャーのような小さな企業にはなおさら、お金を貸さない。そのうち、資金繰りがうまくいかなくなって黒字倒産する中小企業が出てくる心配さえある。内部留保は企業にとって必要不可欠だ。

こんな時期に、貯めた内部留保の資金を使って「ピンチをチャンスに」変えようと攻めに出た。ザインはテレビやディスプレイパネルに画像データを高速に伝送するLVDS方式のチップに特化し、業績を上げてきた。高速ディスプレイ伝送は、SDからHDさらにはフルHD、フルHDの2倍高精細HDといった高精細な画面が要求されていることから、必要不可欠になっている。それだけではない。Winbondの持つカメラモジュールからの画像処理と組み合わせることで、携帯やPDA、カーナビといった小型ディスプレイ市場にものり込める。ビジネスチャンスを拡大し将来への成長に備えている。

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