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セミコンジャパン出展社減少から転じて、未来につながるビジネスを描こう

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今回の景気後退の影響はセミコンジャパンでも表れている。出展社、出展小間数は昨年よりもやや減少している。セミナー会場でも、セミコン前夜祭のPresident partyでも肩が触れ合うような混雑ぶりではなかった。企業からの参加者が有料セミナーやパーティでは激減したと言ってよいだろう。聞けばメディアが主催する有料セミナーでも同じことが起きている。参加者がかなり減っている。

これでいいのだろうか。目の前の利益をひねり出すために製品開発コストを削減したり、顧客の声を聞くための出張費を削ったり、将来動向を探るためのセミナーコストを削減して企業の未来は開けるのだろうか。他に削るべきところはまだあると思うのだが。企業の将来の発展に欠かせない支出を削ればその企業の未来をつぶすことになりはしないか。目の前の収支に目がくらみ、2~3年後の企業の姿を描けないのなら誰が責任を取るのだろうか。そのころはリタイヤしているから退職金をもらって悠々自適の生活をしているから、というのであればあまりにも無責任ではないか。

大企業経営者の方からお叱りを受けることを覚悟で述べさせていただけば、黒塗りのハイヤーの必要性を議論したことがあるだろうか。かつて身分の差が激しくテロが暗躍し政情不安があるような時代なら、企業役員の保護という立場から黒塗りのハイヤーは必要だった。社長の暗殺や身代金誘拐という危機が目の前にあったからだ。今はどうか。新人の初任給と社長の給料の差は一流企業のトップでさえ100倍もない。社長が危険な職業ではなくなっている。とするとなぜ黒塗りのハイヤーが必要なのか。黒塗りのハイヤーに乗ればその企業に未来が開けるというのなら話は別だが。誰のために黒塗りのハイヤーを乗るのか。一度議論してみて欲しい。少なくともシリコンバレーの社長なら自分で運転して通勤する。

同じことが海外出張の飛行機チケットについても言える。40歳代にもなると肩書きが付き海外出張にビジネスクラスを利用する企業幹部、役人幹部は多い。例えば米国西海岸だとわずか10時間程度のフライトで安売りのエコノミーだと10~15万円程度だが、ビジネスクラスだと50~60万円もする。わずか10時間で40万円以上/人を使うことになる。ファーストクラスならこの差はもっと大きい。もちろん一人で海外出張して交渉してくるのならまだいいが、役員、部長、課長、主任、平社員と雁首そろえて5人出張となるとそれだけでも5人分200万以上のコストを費やすことになる。これは無駄とは言わないのだろうか。

もし、役所や会社の仕事ではビジネスクラス、バカンスや遊びならエコノミークラスを利用する人がいるとしたら、会社や役所を食い物にしていないだろうか。コストを切り詰めるのならこういった費用や出張手当を廃止することがまず優先すべきことではないだろうか。米国シスコシステムズ社の社長(CEO)が出張にエコノミークラスを使う話は有名だが、欧米出張にエコノミークラスを使う企業の役員はいくらでも知っている。

他社との交流や、情報収集、マーケティング、製品開発などのコストを削減するのは、こういったコスト削減を終えた後に議論すべきことであり、企業の未来につながるコストを削減するのは問題ではなかろうか。セミコンや各種のセミナーにきて情報収集や名刺交換、さらには企業同士の情報交換などで、未来の成長の種となる情報を収集し、会社で生かし育てていけば次の成長につながる。未来が見えない企業の株価は必ず落ちる。たとえ赤字でも未来の見える企業は株価がむしろ上がることさえある。

未来につながることには積極的に投資し、今しか費やせないことには徹底的にコストカットする。これがコアコンピタンスを強めることにつながる。先日、米リニアテクノロジーのCEOと話をした際、この不況をどう乗り切るかについて質問したところ、不況がいつまで続くか誰にも分からないことを議論しても始まらない、それより自社の強いところはますます強くするため製品開発に力を入れ、開発コストは基本的に削減しない、今は優秀な人材を獲得する絶好の機会でもある、と述べた。将来につながることには投資をし、本業をますます強くすることに集中する。ここに営業利益率30~40%をいつでもきっちり確保し、フォーブス誌やS&P、ビジネスウィーク誌などで高収益企業として常に上位にランクインされる企業経営の真髄を見た気がした。

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