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半導体と共通点の多い太陽電池のビジネス

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太陽電池ビジネスが活発だ。半導体製造装置・材料関係の協会である、SEMIは最近太陽電池やMEMS、ナノテクなどに力を入れている。半導体製造装置側から見ると、半導体製造装置もフラットパネルディスプレイ(FPD)装置も似たようなもので、加えて、薄膜型の太陽電池製造装置は、FPD製造装置とよく似ている。このため、製造装置業界が進出しやすい分野である。

これまでは多結晶シリコン太陽電池が住宅向けに主流でやってきた。効率が高いためである。しかし、ここ最近は多結晶シリコン材料不足が目立ってきた。多結晶シリコンはリボン結晶だと太陽電池向けに生産できるが、結晶シリコンは単結晶インゴットのお尻とアタマ部分を太陽電池グレードとして使ってきた。真ん中のきれいな結晶はLSIグレードして使う。太陽電池のためにわざわざグレードの低い多結晶を作るという生産方法はなじまない。

そこで、太陽電池産業は、単結晶シリコンやリボン型多結晶シリコンといったバルクを利用する太陽電池からの脱皮を目指し始めた。このほど、シャープが大阪府堺市に建設を発表した「21世紀型コンビナート」プロジェクトでは、太陽電池と液晶パネルの二つの工場を建設する。この工場では薄膜の太陽電池を生産する。

薄膜の太陽電池と液晶パネルとは作り方がよく似ている。もともと半導体の薄膜形成やエッチング、リソグラフィなどの工程はTFT液晶生産でも使うため、製造装置メーカーはFPD製造装置へも容易に進出した。同じことが太陽電池にもいえる。FPD生産用の大型製造装置設備と薄膜太陽電池設備とは共通点が多い。CVDにせよ、透明電極の形成にせよ、微細なパターニング工程こそないが、薄膜製造技術には共通点が多い。

デバイスの原理からは半導体技術との共通点が多い。太陽光が半導体に入ると電子-正孔対が出来、電子はプラス側に引かれ、正孔はマイナス側に引かれ、電流が流れることになる。結晶に欠陥などがあると、電子と正孔がそれぞれ分かれて電流として取り出される前にお互いに再結合して電流に寄与しなくなる。このため電子と正孔が生きている時間、すなわちライフタイムを長く保つことが重要で、良質のトランジスタを作る技術と全く同じである。太陽電池の電子、正孔のライフタイムを長くすることと、DRAMのリフレッシュ時間を長くすることは全く同じく技術である。

ちょうど1年ほど前に、米国の中堅半導体メーカーのCypress Semiconductor社の天才といわれたCEOのT.J. Rodgers氏にインタビューしたとき、自分はシリコン野郎だから太陽電池の生産も高性能MOSLSIの生産も同じことさ、と答えていたことを思い出した。高速SRAMで起業し最近ではpSoCというプログラマブルマイコンに力を入れているCypress社は太陽電池のSun Power社を子会社に収め、太陽電池事業を強化し始めていた。折しも、石油の価格が高騰し、太陽電池ビジネスに追い風が吹いている。

日本では太陽電池メーカーは、シャープ、京セラ、三洋電機、カネカ、三菱電機が有名であり、大手半導体メーカーは全く参入しない。それどころか、自動車メーカーのホンダやトヨタ自動車、昭和シェル石油などが力を入れ始めた。ファウンドリメーカー、台湾のUMCも参入する。

製造装置メーカーはFPD製造装置と共通点が多いという認識で、Applied Materials社のみならず、日本のアルバックやSESも太陽電池に参入している。これまで日本のメーカーが強かった太陽電池産業にドイツのQ-Cell社が猛追し第2位に食い込んできた。2007年半期(1-6月)の決算が最近発表され、Q-Cell社は売り上げが前年同期比44%増の3億5000万ユーロ(553億円)、利益7700万ユーロと好調さを示した。利益率が22%と素晴らしい業績である。10年後、20年後にはどの企業が上位を行くか、目が離せない。


津田建二

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