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サムスンの事故から見えるもの

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天災、人災にせよ、事故が起きると生産停止を余儀なくされる、価格高騰を招いてしまうなどの事態を引き起こす。最近の事故の一つは新潟地震による自動車部品の生産停止であり、もう一つはサムスン電子のトランス火災による停電事故である。いずれも納入するユーザーに及ぼす影響はかなり大きいようだ。

新潟地震では、納入先のトヨタから応援部隊が駆け付け、何とか出荷を支援することができた。サムスンはNANDフラッシュの世界市場で45%程度の市場シェアを持つといわれている。停電事故を起こした工場は6ラインのうち、NANDフラッシュが5ライン、残りの1ラインがシステムLSIを生産している。サムスンが生産するNANDフラッシュの80〜90%をこの工場で生産している。

先週土曜日の発表では、この6ラインは復旧し事故による損失は400億ウォン(52億円)にとどまったという。とはいえ、8月7日の日経新聞では、8Gビット製品が19.8〜19.9ドルと事故前よりも5.2ドル高騰した。NANDフラッシュの品薄感から、東芝が得意とする2ビット/セルの8Gビット製品は9.3〜9.4ドルだが、これも7月末より1.3ドル上がっている。

事故は一度起きると、その生産している分だけは確実に使えないだけではなく、仕掛品も作り直さざるをえない。仕掛りの半導体ウェーハは全数廃棄することになりかねない。イエロールームにしまってあるはずのウェーハが感光してしまったり、30分以内の炉に入れないと使えなくなる条件のウェーハなど、仕掛りのウェーハは保存するにも注意が必要だ。加えて、生産を開始する場合でも最初から条件出しをしなければ流せない。電気系統やガス系統が安定するにも時間がかかる。結局、損失分は予想以上に増える。

サムスンは、DRAMラインをNANDフラッシュに切り替えて生産していたところであるから、DRAM生産にも影響を与えることになる。

新潟地震の教訓では、事故に弱いカンバン方式を補う方法として、危険分散により工場を集中させずにもう1か所別の土地に新たに工場を建てるということになった。この方法は実は古くからあり、日本の製造業はいろいろな土地に工場を建て危険分散を図ってきた。

製造業がサプライヤーにセカンドソースを求めることもこれと同じだ。危険分散を図るためだ。1社にもしものことがあれば他社からも部材を購入する。こんな当たり前の危険分散がいつの間にやら変貌し、危険分散よりも集中生産によるコストダウンを優先させてきた。

サムスンの微細化推進による大容量製品と、東芝のような2ビット/セルのNANDでは、外部仕様が違うため、東芝のチップはサムスンのセカンドソースにはなりえない。世界のOEMメーカーはセカンドソースのない、キーコンポーネントで生産せざるをえないほど、コスト的には圧力をかけられているといえる。しかし、このままですむのだろうか。次はわが身ではないか。だったら、OEMメーカーが協力してセカンドソースの確保を呼びかけるべきではないだろうか。これもコラボのひとつになりえると思う。


津田建二

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