セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

世界との競争に負けない企業体質の強化法

|

20年ぶりにロサンゼルスのアナハイムに来た。昔のいちご畑はすっかり姿を消し、南国ムードいっぱいの木を植えており、ディズニーランドリゾートに相応しい街に変身している。残念ながら仕事の都合でディズニーランドには行けないが、DAC(Design Automation Conference)で賑やかなLSI設計の世界を楽しんでいる。

元Electronic Newsの編集長に会ったり、EE Timesの現編集長にも会ったりした。かつての編集者の消息を聞き合うのはお互い様だ。知り合いの中国、韓国のエディターとも再会する一方で、新たに台湾と中国のエディター、日本のエディターとも知り合いになった。人脈と仲間がドンドン増えていく感じだ。

LSI設計の世界では米国のビッグスリー(ケイデンス、メンター、シノプシス)が支配しているため、日本の設計メーカーは出番がないとよく言われるが、実はVHDLやVerilogでのデジタル設計・検証はその通りだが、それ以外の設計では十分広い余地が残されている。日本がこれから挑戦して勝てる可能性のある世界がまだたくさんある。アナログ設計、ミクストシグナル設計、IP回路、ノイズやシグナルインテグリティのシミュレーション、高周波や高速設計のシミュレーション、デバイスやアルゴリズムのモデリング、どれをとってもチャンピオンといえるメーカーはいない。

日本のメーカーがいくらでも参入できる素地があるのになぜこんなにも弱いのだろうか。強くなるためにはどうすればよいのだろうか。その一つの提案がビジネスモデルを創造できるエンジニアの育成だ。いくら技術が強くてもその技術をお金に結びつける方法を考え出さなければ、せっかく時間と汗を費やして開発した技術が無駄になる。自分の開発した技術が無駄になることに耐えられるエンジニアはいないだろう。だったら、自分でビジネスモデルも開発してはどうだろうか。

英国特集で見てきたさまざまなベンチャーのやり方、大学での仕事の成果を世の中に活かすやり方、などを読んでいただければさまざまな隠されたヒントを見つけ出すことができる。自分の会社でやるべきビジネスの方向は何かという問いに答えが載っていることは決してない。ノウハウのような細かいテクニックはその企業でしか使えないことも多い。基本は自分で自分の会社の成長方法を見つけることが王道であろう。ここに知恵を絞り出せばよい。

その知恵を絞る上で、ヒントとなる話はセミコンポータルの記事の中に必ずある。私は宝探しのようにさまざまなヒントを英国特集に埋め込んだ。そのヒントからソリューションを自分たちで見つけ出すのである。この作業をせずに答えが見つかるはずはない。

日本のエンジニアは世界でも胸を張って誇れるほど優秀だ。その知恵を少しばかりビジネスモデルの構築に使えばよい。これなしでこれからの成長路線に決して乗ることはできない。若いエンジニアが技術を開発し、ビジネスモデルも開発する。上司はそれを理解しなければ企業は発展しない。若いエンジニアのモチベーションを上げ、さらに会社が成長していくために必要なことに上司はストップをかけてはならない。むしろ建設的な修正意見や建設的な調査手法を提案するのが上司の役割であろう。若いエンジニアと上司とが一丸となって技術・ビジネスモデルを開発していけば会社の未来は必ず開けてくる。そのような体制を作るのが経営者の役割である。それぞれがそれぞれの役割を分担していくことができればその会社は強くなる。いずれかが欠けても力は発揮できない。これが相乗効果、すなわちシナジーというものだ。

月別アーカイブ