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したたかなアップルのiPhone戦略をマネしようではないか

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米国のサンフランシスコでアップルの開発者会議がモスコーンセンターで昨日(米国時間6月9日)から始まった。朝、テレビを見ていると、これから3GのiPhoneの発表がありそうだというアナウンサーが、CNNだけでなくABCも興奮しながら伝えている。どのテレビ局も朝にワイドショーとしてこの話題を採り上げており、今いるロサンゼルスからはとても行けないので、今朝のUSA Todayで掲載された記事を簡単に紹介しよう。

これまでのiPhoneと違う特徴は3Gということだけではない。3Gは当たり前だ。先週のニュース解説でもお伝えしたとおり、iPhoneはアップルが通信業者(キャリヤ)を選定し、通信料もいただくというビジネスモデルであるから、アップルが価格を決める。今回の製品はGPSや企業の電子メールをサポートしていて399ドル(8GBモデル)で売り出すが、2年間AT&Tと契約すると199ドルで買えると記事は伝えている。この3G携帯電話はAT&Tが4年間の独占販売権を持つとしている。

日本の電話は消費者がキャリヤと1年以上契約すると割引させる制度があるが、この仕組みとよく似ている。どうやらアップルは独自のクールなユーザーインターフェースを開発しながら、日本の良いところをマネしているようだ。ただし、アップルのしたたかさはこれだけではない。単なるハードを売るのではなく、サービスのビジネスモデルまでも今回も新らたに導入した。.Mac(ドットマックと発音する)というオンラインサービスも提供する。これは会社に来たメールを自動的に受け取れるだけではなく、メール、住所、顔写真、ソフトの更新などをしてくれるサービスらしい(USA Todayによる)。

米国ではアップルは消費者向け製品というイメージが強く、企業はセキュリティを心配して、BlackBerryのほうを好む傾向がある。そこで、企業もiPhoneを使っても心配ないよというメッセージとして、コーポレート・フレンドリ戦略を打ち出している。Apple.comのホームページを読めばこの程度のことは書いてあるので、そちらに任せるとして、アップルの戦略がしたたかだと感じるのは単なるハードを売るだけではないからだ。日本企業はアップルのビジネスモデルを研究し、良いところをまねるようにすべきだろう。

2月に英国の企業、大学、政府を取材したときもそうだが、常に世界を見ていて、良いものは真似するという姿勢が英国にもある。企業との共同研究による大学側の資金調達は米国のMITやスタンフォード大、UCバークレイ大などをモデルにした、と大学の活性化を進めるケンブリッジ大学の教授が語っていた。

米国だってそうだ。2年以上前にCypress Semiconductor社のCEOであるT.J. Rodgers氏を取材したときも、創業当時世界チャンピオンだった日本企業の良いところをずいぶん見習ったことを認めていた。トヨタのかんばん方式を後工程で生かし、高速SRAMというニッチだが確実な市場がある製品を開発したのも、日本のDRAM指向を逆手にとった戦略によると語っていた。

アップル社が日本の良いところを真似したなら、日本はアップルの良いところを真似するのは悪くない。世界の良いところを真似することは世界の国々がやっていることである。昔の明治政府がそうだった。ヨーロッパの良いところを真似た。悪いところは捨てればよいのであり、良いところだけ役に立つところだけ真似ることをどんどんやるべきではないだろうか。

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