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今さらBlu-Rayでもなかろう、真のライバルはネットではないか

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第2世代DVDの規格について、ソニー・パナソニックを中心とするBlu-Ray陣営と、東芝・NECを中心とするHD-DVDグループがここ数年争ってきたが、ようやく決着した。東芝がHD-DVDから手を引くことを表明したというニュースが先週の日曜日に入ってから、いろいろなメディアのコメントを眺めていたが、今一つピンと来なかった。あるメディアで、こんなことなら最初から争うべきではないという主張があったが、だったら最初からそう進言すべきであり、結果がはっきりしてから言うのはどうかと思う。

今回の東芝が手を引くのは、企業としては賢明であろう。というのは、ソニー・パナソニック陣営が勝者だとも思えないからだ。

エレクトロニクス業界を30年以上みてきた筆者は、かつてのベータ対VHSとの争いと今回のBlu-Ray対HD-DVDとは全く事情が異なるように見える。どちらも勝者にはなり得ない状況に来ているからだ。かつては電子機器の開発に5~6年かかり、2番手戦術でも十分勝てた。しかし現在、開発は0.5〜1年で終わらせることが至上命令になり、ライバルが次々と現れる時代に突入している。Blu-Ray対HD-DVDで争っている間に光ファイバをはじめとするブロードバンドがこれほどまでに普及するとは思わないほど発展した。何が言いたいのかといえば、Blue-Ray対HD-DVDの本当の敵はブロードバンドインターネットだということである。

DVDなどの光ディスクはブロードバンドに置き換わりつつある。CDディスクはここ10年連続マイナス成長である。DVDも同じ運命をたどることは間違いない。光ディスクの中身はネットからダウンロードできるからだ。

だから東芝の判断は極めて正しい。HD-DVDにこだわっているよりもさっさと見切りをつけて、ブロードバンドからのダウンロードビジネスに切り替える方が成長ビジネスに乗れる。東芝がもしこれを狙っているとしたら、勝者はBlu-Ray陣営ではなく東芝かもしれないのである。だから、かつての規格戦争とは全く違う。

同じことが地上波デジタル放送でも言える。つまり、1999年ごろに2011年にアナログテレビを中止してデジタルテレビ放送に全面的に切り替えることを検討し、2001年に正式にアナウンスした。しかし、2011〜2012年ごろにブロードバンドでテレビを視聴できることになれば地デジの存在意義が失われてしまう。

インターネットは1999年~2000年のバブルでは、インターネット企業に考えられないような企業価値すなわち株価が上昇した。エレクトロニクス業界にいるものなら誰しも異常なバブルだと感じたはずだ。それほどの事業もしていない企業がインターネット事業をするというだけで株が爆発した。

インターネットバブルがはじけ、本当のインターネットビジネスが始まった。ブロードバンド化の進展はここで述べるまでもない。光ディスクはもはや落ち目の産業である。JEITAの電子工業生産金額調査のDVDビデオ装置統計によると、2004年をピークに2006年、2007年とピーク時の7割程度しか生産していないからである。今さらBlu-Rayでもなかろう、と思うのは自然ではないか。

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